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おっさんの幸せ探し

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 セシリオは街の中に入ると、うきうきと周囲を見回した。長く住んでいた王都から旅をして早半年。漸く、目的地である通称『武器の街』と呼ばれているカレッソの街に到着した。
 カレッソの街は、近くに良質な金属が採れる鉱山があることから、武器職人が多く住んでおり、優れた武器を求めて、騎士や冒険者などが多く訪れる街だ。
 セシリオは、人通りの多い賑やかな大通りを歩き、宿屋が集中している界隈に向かった。

 セシリオは今年で38歳になる魔法使いである。見た目は、地味な茶髪茶目で、『三日会わなかったら顔を忘れそう』と言われたことがあるくらい、平凡な顔立ちをしている。特徴らしき特徴が無いのが逆に特徴になっているような感じである。
 セシリオは、国立魔法学園を卒業してから、ずっと魔法省で働いていた。何故か美形が多い魔法使いの中では、平凡過ぎて浮きまくっていた。約20年、ずっと真面目に勤務していたのだが、セシリオは思い切って、自分の幸せの為に、旅に出ることを決意した。

 セシリオにとっての幸せとは、理想のでかちんの持ち主と恋に落ちて、でかちんで思いっきり愛されることだ。セシリオは10代後半の頃に、好奇心でアナニ―に手を出し、すっかりアナニーの虜になってしまった。今では、中イキ、メスイキ、潮吹き、なんでもござれなアナニーマスターとなっている。男が恋愛対象なわけではないが、アナルの快感がやば過ぎて、女相手では満足できない。地味ーに生きていたセシリオにも、若い頃は一応縁談の話がきていたが、女相手ではセックスで満足ができないことが分かり切っていたので、全て断った。30を越えた頃には、縁談の話もこなくなった。

 セシリオは、一生独身でアナニー生活を楽しめばいいいかと思っていたが、35歳を過ぎた頃から、1人でいることが無性に寂しく感じるようになった。誰でもいいから、側にいてほしい。そう願うようになった。できたら、理想のでかちんの持ち主がいい。じゃないとセックスで満足できないだろう。幸せ(でかちん)は、歩いて向こうからは来てくれない。それならば、理想の幸せ(でかちん)を探し出せばいい。セシリオはそう考え、魔法省を辞め、旅に出た。

 カレッソの街には、多くの騎士や冒険者が集まる。身体を鍛えまくっている筋骨隆々な男が多いこの街ならば、理想の幸せ(でかちん)が見つかるんじゃないかと思い、半年かけて、王都からカレッソの街に旅をしてきた。
 貧相に痩せているセシリオの胸は、今は期待でドキドキと高鳴っていた。これで漸く、理想の幸せ(でかちん)を探すスタートラインに立てた。後は、よさげな男に声をかけまくって、理想の幸せ(でかちん)なのかを確認し、恋人になってもらうだけだ。

 セシリオは若くないし、見た目は平凡だし、貧相に痩せていて、魅力的ではない。だが、幸せ(でかちん)に対する情熱は人一倍あるし、セックスも実際にやったことはないが、大人の玩具でがっつり練習済みである。セシリオのアナルは、いつでも、どんなでかちんでも、どんとこーい! 状態である。
 旅をしている間は、荷物を最小限にしなくてはいけなかったので、王都を出る時に、アナニーの相棒達は全て処分してきた。半年もオナ禁をするなんて、生まれて初めてである。ぶっちゃけ、今すぐにでもアナニーをしたい。が、まずはこの街での拠点が必要になる。

 理想の幸せ(でかちん)は慎重に選びたい。でかちんであることは最低限の条件だが、できたら、食事や酒の好みや気が合う男がいい。
 この幸せ(でかちん)を探す旅は、セシリオにとっては、残りの人生を賭けた大博打でもあった。

 セシリオは、宿屋が集中している界隈に入ると、街の衛兵に聞いた評判がいい宿屋に向かった。
 無事に部屋がとれたセシリオは、質素ながら清潔感がある宿屋の一室で、これから具体的にどう動こうかと考え始めた。退職金や貯金はそれなりにあるが、半年間の旅で、かなり減ってしまった。まずは、働くところを探した方が無難だろう。それに、宿の者から、この街には公衆浴場が多いと聞いた。なんでも、近くの山に温泉が湧いており、そこから温泉をひいているのだとか。セシリオが泊っている宿屋には風呂がない。公衆浴場が沢山あるから、殆どの宿は風呂がないらしい。

 働き口は明日にでも職業斡旋所に行って探すとして、セシリオは、とりあえず一番近い公衆浴場に行ってみることにした。

 公衆浴場に入ってみると、筋骨隆々な男達や労働者と思われるおっさん達、地元の子供達で、大変賑やかだった。公衆浴場自体が、男性用、女性用と分かれている。昔、女湯を覗く不埒者が続出したため、公衆浴場自体を分けるようにしたのだとか。

 セシリオが洗い場で頭と身体を洗っていると、隣から声をかけられた。酒焼けしたような濁声である。おそらく職人だろう。ちょうど頭を洗っていたセシリオは、目を開けることなく、男の問いに答えた。


「隣、いいか?」

「どーぞー」

「見ない顔だな。旅人か?」

「えぇ、まぁ。ここを終の棲家にしようかと思って」

「ふぅん。貧相な身体つきだが、魔法使いか?」

「そうですよ」

「得意な魔法は?」

「え、そこまで聞いちゃいます?」


 セシリオは頭からお湯をかぶって、頭と身体の泡を流した。濡れた顔を手で拭い、すぐ隣を見れば、短く刈り上げた黒髪の厳ついおっさんがいた。顔立ちそのものは悪くない気がするのだが、目が鋭い三白眼なので、なんだか睨まれているような気分になる。瞳が淡い水色だからか、妙に威圧感があるおっさんだ。


「防音魔法と結界魔法が得意な奴を探してんだよ」

「理由を聞いても?」

「俺の家は鍛冶屋だ。それなりに質のいい金属を使って剣とか作ってる。ただ、鍛冶場も兼ねてる家が繁華街の近くなんだわ。前々から、仕事の音がうるせぇって苦情がきててよ。それに、希少価値が高い金属も扱ってるから、防犯はきっちりしときてぇ。前に頼んでた魔法使いの爺さんは、どうも腕が微妙でなぁ。音漏れはするし、防犯面でもなんか不安がある。アンタの腕がいいのなら、防音魔法と結界魔法を頼みてぇ」

「なるほど。そういうことなら、いいですよ。僕はこの街に来るまで、王都の魔法省で結界魔法の研究をしていました。防音魔法も問題なく使えます。家の敷地全体に魔法をかけるとなると、複合魔法になりますし、それなりに大きな魔法の要になる魔石が必要になりますが、ご用意できますか?」

「どのくらいのデカさだ?」

「魔石の質にもよりますけど、向こう20年保たせようと思えば、僕の拳くらいのが四つですね」

「それくらいの魔石なら家にある。剣の対価に魔石を置いていく冒険者がそこそこいんだよ。換金してねぇのがごろごろあるから、使えるやつを見繕ってくれ」

「分かりました。あ、申し遅れました。僕はセシリオです。お仕事募集中の魔法使いです」

「俺ぁ、ガルバだ。これでも一応、界隈では名が通っている。なんか困ったことがありゃあ、俺の名前を出したらいい。まぁ、たいていのことはなんとかなる」

「おぉ……それはありがたいです。明日にでも、お宅にお邪魔してもいいですか?」

「あぁ。家はどこだ」

「この街に着いたばかりで、まだ宿屋に泊まってます」

「……なんなら、俺の家に住むか? 息子達が独立してから一人暮らしだ」

「え? いいんですか? こんな素性も知れない人間をそんなに簡単に……」

「アンタが嘘をつく人間とは思えねぇ。これでも、人を見る目はあるんだよ。それに、複合魔法だと、数日はかかるだろ。明日の朝一で宿に迎えに行く。宿を引き払う準備をしといてくれ」

「分かりました。ご厄介になります」

「おぅ。よろしく頼まぁ」


 全身を洗い終えた様子のガルバの股間を何気なく見て、セシリオは思わず変な声が出そうになった。ガルバのペニスは中々にデカい。竿が太くて長くて、亀頭が大きい。理想の幸せ(でかちん)程ではないが、十分な大きさである。
 セシリオは、自分のアナルと腹の奥深くが疼くのを感じたが、ぐっと堪えた。雇い主兼家主に手を出すのはよくない。それに、息子がいるのなら、ガルバは異性愛者だ。尚更、手を出すわけにはいかない。

 ガルバの家を拠点に仕事をしつつ、地道に理想の幸せ(でかちん)を探していけばいい。半年かけて旅をしてきたのだ。焦って微妙なのを捕まえたらつまらない。セシリオの幸せ(でかちん)は気長に探していく。
 とりあえず、最初の仕事と住処は手に入った。明日から、仕事に励みつつ、暇な時に公衆浴場巡りをして、理想の幸せ(でかちん)を探していこう。セシリオは、並んで温かいお湯に浸かっているガルバと世間話をしながら、改めて、幸せ(でかちん)探しを頑張ろうと決意した。


 翌朝。ガルバが宿屋に迎えに来てくれたので、そのままガルバの家に移動した。ガルバの家は、朝から賑やかな繁華街の近くにあった。家の中に入る前に、簡単に張られている防音魔法と結界魔法をみてみれば、なんともお粗末なものだった。


「これはいくらなんでも酷くないですか? 魔法をかけて、どれくらいなのかな」

「半年」

「うん。その魔法使いには二度と仕事を頼まない方がいいですね」

「そこまでか」

「これだけ穴だらけじゃ、そりゃあ音も漏れるし、防犯にもならないですよ。犬を飼った方がマシなレベル」

「あの爺さん、ろくな仕事してねぇな。その割にたけぇ報酬ぶんどりやがって」

「どのくらい払ったんですか?」

「60万」

「たっか!! ぼったくりにも程がある!! それ、職業斡旋所にでも言っておいた方がいいですよ?」

「そうする。アンタはいくらだ?」

「住ませてくれるのなら、お金はいらないです。魔石もあるみたいですし」

「それでいいのか」

「ここを拠点に仕事を探すから大丈夫じゃないかなーと。一応、貯金も多少はあるから、暫くは無理に働かなくても大丈夫ですし」

「ふぅん。そういや、アンタ、何歳なんだ?」

「僕? 今年で38。貴方は?」

「42」

「へぇ。じゃあ、まずは魔法の要になる魔石を見せてもらっていいですか?」

「その前にアンタの部屋に案内する。出ていった女房の部屋だが、掃除はしてある」

「奥さん、出ていったんですか?」

「一昨年、弟子にしてた若い男と2人で出ていった。元々、浮気性な女だったからな。未練なんざねぇな。逆に清々したぜ」

「ふぅん。なんだって、そんな女と結婚なんかしたんです?」

「死んだ師匠の娘でよー。身持ちがわりぃって評判立ってたから結婚相手が見つからなくて、師匠に頭下げて頼まれたんだわ」

「あー。それは断れないやつだぁ」

「まぁな。アンタは、結婚は?」

「してないですよ。……言ってもいいかな? 僕は、僕の理想の幸せを探しにこの街に来たんですよね」

「理想の幸せ?」

「僕はこう見えてアナニーマスターでして。理想のでかちんという名の幸せを求めて旅をしてきたのです!」

「お、おぅ」

「あ、貴方も中々のでかちんだけど、家主に手を出す気は更々ないから、安心してくださいね。じゃなかったら、この事言ってないし」

「……俺に実害がねぇならいいか。見つかるといいな。理想のでかちん」

「ありがとう! まぁ、気長に探していきますよ」


 ガルバの家はそこそこ大きな二階建てで、一階は居間と台所、トイレと工房、二階には四部屋とトイレがあった。公衆浴場が沢山あって、しかも住民だと格安で入れるから、家に風呂がない家が多いらしい。
 セシリオの部屋だと案内されたのは、ガルバの寝室の向かい側の部屋だった。部屋の中は、女が好きそうな可愛らしい壁紙のこ洒落た感じの部屋だった。ベッドが少し小さめな気がするが、多分寝る分には問題ないだろう。残り二部屋は、独立した息子達の部屋らしい。

 セシリオは、新たに自室となる部屋に荷物を置くと、早速、魔石を見に行った。木の箱に無造作に詰め込まれている大きな魔石の数々を見て、セシリオは呆れた。


「ガルバ……あのね、たとえば、この魔石一個で、ちょっとした家が建つくらいの価値があるんだけど……」

「あー。ギルドに換金しに行くのが面倒なんだよ。その箱持っていくのも物騒だろ」

「それは確かに。ギルドの職員に来てもらうのが一番いいかなぁ」

「先に、要に使う魔石を選んでくれ。それ以外は、いい機会だから売る」

「うん。そうした方がいいと思う。こんなお宝の山が家にあると落ち着かない。あ、ガルバ。もう、敬語はなしでいい?」

「いいぞ。その方が俺も気が楽だ」

「ありがとう。んー。これと……これ。あとは……これとこれかな。とりあえず魔石は選んだから、急ぎの仕事がなければ、ギルドに行って来たら? 僕は防音魔法と結界魔法を張る準備をしておくから」

「おう。頼まぁ。いってくる」

「いってらっしゃい」


 セシリオは、なんとなく玄関まで着いていって、玄関先でガルバを見送ると、自室に向かい、魔石に防音魔法と結界魔法の魔法陣を刻む作業を始めた。僅かでも魔法陣が歪んでいると、魔法が上手く発動しない。要用に研磨していない魔石に魔法陣を刻むのは随分と久しぶりだが、その分やる気も起きる。セシリオとて、魔法省で結界魔法の研究者として長年働いてきた自信とプライドがある。どうせやるのなら、完璧な仕事がしたい。

 セシリオは、戻ってきたガルバに声を掛けられるまで、黙々と作業を行った。

 ガルバが昼食を買ってきてくれたので一緒に食べ始めた。ガルバの家は、男の一人暮らしとは思えないくらい、ちゃんとキレイに掃除されている。失礼だが、正直がさつそうな印象だったので、ちょっと意外だ。ガルバが買ってきてくれた薄いパンで肉と野菜を包んであるものは、セシリオには味が濃くて重かった。セシリオは薄味のあっさりとしたものが好みだ。聞けば、この街では、濃いめの味付けのものが殆どらしい。汗を沢山かく職種の人間が多いからだろう。
 セシリオは少しだけ考えて、ガルバにお願いをしてみた。


「ガルバ。明日から、僕が食事を作っていいかな? 僕は薄味のあっさりしたものが好みでね。これも美味しいんだけど、間違いなく後で胃もたれしそう」

「別に構わねぇ。俺の分は適当に買ってくる」

「よければ、君の分も作ろうか? 追加で味付けできる料理を作ったらいいだけだし」

「んー。じゃあ、頼む。息子達がいた頃は、俺が飯も作ってたんだが、食わせる奴がいねぇと張り合いがなくてよぉ。1人になったら作らなくなった」

「ふぅん。出ていった奥さんは料理はしなかったのかい?」

「料理どころか家事全般しなかったな。めちゃくちゃ世話になった師匠の娘だから、あんまごちゃごちゃ言うのもなぁって放っておいてたら、本当に何もしねぇで遊び歩いてた」

「わぉ。出ていってもらって正解だね」

「まぁな。なぁ。それ、食いきれねぇなら俺が食う」

「いいの? 食べかけだけど」

「気にしねぇ。捨てる方がよっぽど気になる」

「確かに食べ物を捨てるのは抵抗があるねぇ。じゃあ、食べてよ」

「ん」


 セシリオは買ってきてくれた花の香りがするお茶を飲みながら、もりもり食べるガルバを眺めた。ガルバに手を出す気はないが、ちょっといいなぁと思う。食の好みは合わないようだが、ガルバとは適度な距離間で接することができそうな気がする。
 幸せ(でかちん)と恋人になりたいが、四六時中べったりしたいわけじゃない。セシリオは、元々一人の方が好きだから、ある程度の距離感や一人の時間は欲しい。
 セシリオは、ダメもとでガルバに聞いてみた。


「ガルバの知り合いでさ、男がイケて、でかちんで、優しくて、束縛し過ぎない感じの男っていない?」

「条件多いわ。あー……男がイケる奴は一人知ってるけど、そいつ、めちゃくちゃヤリちんだから、おすすめしねぇな」

「そっかぁ。地道に探すしかないね。やっぱり」

「頑張れ?」

「ちょー頑張る」


 幸せ(でかちん)探しの前に、まずは請け負った仕事である。セシリオは、3日かけて、納得がいく防音魔法と結界魔法をガルバの家にかけた。




―――――― 
 セシリオは、カァンカァンと金属を打つ音で目が覚めた。ベッドのヘッドボードに置いている時計を見れば、まだ日が昇る前の時間だ。また、ガルバが熱中して剣を打っているのだろう。二度寝したいが、完全に目が覚めてしまったので、セシリオは起き出して、階下の脱衣所の洗面台に向かった。

 ガルバは、職人気質なのか、熱中すると時間を忘れる方だし、自分が打ちたいと思ったら、朝だろうが深夜だろうが構わず剣を打つ。そりゃあ、あれだけ穴だらけの防音魔法しかかかっていない状態でそんなことをしていたら、苦情だってくるだろう。

 セシリオは、今日はこの街有数の金持ちの家に結界魔法をかけに行く。ちまちまと作った要石の魔法陣は我ながら完璧な出来栄えなので、あとは、金持ちの家に要石を設置して、魔法を起動させるだけだ。元魔法省勤務の結界魔法研究者という肩書のお陰で、それなりに稼げる日々を送っている。が、肝心の幸せ(でかちん)探しが進んでいない。一度仕事に取り掛かると、数日は仕事に熱中してしまうし、なんだかんだで、仕事が途切れない。なんなら、予約客までいる始末だ。完全に予想外である。

 ガルバに、何故こんなにセシリオの需要が多いのか聞いてみたら、『武器の街』だから騎士や冒険者、職人は多いが、魔法使いは少ないらしい。だが、希少な金属を扱ったり、報酬で高価な魔石や高額な金銭のやり取りをするので、防犯のための魔法が使える魔法使いは絶対に必要だ。早くも腕がいいと評判になっているセシリオは、街の者達がずっと欲しかった存在らしい。

 セシリオは薄い髭を剃ると、台所に向かった。いつから剣を打っているのかは知らないが、ガルバはお腹を空かせているだろうから、多めに朝食を作ってやらねば。
 セシリオは、手早く朝食を作り始めた。今日の朝食は、干し杏を入れたほんのり甘いパン、チーズをいっぱい入れたオムレツ、野菜たっぷりのスープに、ガルバには分厚いハム三枚も焼いた。

 セシリオが、この地方の特産品でもある花の香りがするお茶を淹れていると、剣を打つ音が止まって、お茶を淹れ終えた頃に、汗だくのガルバが台所にやって来た。


「おはよう。ガルバ。朝ご飯できてるよ」

「起こしたか。わりぃ。いっそ、工房にも防音魔法をかけるか」

「別にそんなに気にならないよ。君が剣を打つ音は、規則正しくて、意外と耳に心地いいんだよね。目が覚めるときは覚めるけど、気にせず寝てる時も多いよ」

「そうかい。ありがとな」

「着替えておいでよ。その間にパンとか温め直しておくから」

「おぅ」


 セシリオは、自室に向かっていくガルバの大きな背中を見送ると、少し冷めたパンを軽く焼き直し始めた。干した杏入りのパンはガルバの好物だ。ここに住み始めて半年も経てば、お互いの好きなものや嫌いなものが自然と分かってくる。ガルバは、あまり甘いものが好きではないが、干した杏入りのパンや干し葡萄入りのパンは好きらしい。セシリオは頭脳労働が主だから、甘いものは常備している。飴を食べることが一番多い。

 服を着替えたガルバが居間にやって来たので、朝食の始まりである。干した杏入りのパンを見たガルバが、厳つい顔で嬉しそうに笑った。


「おっしゃ。今日はついてる。絶対いいことがあんぜ」

「ははっ。あるといいね。今日は仕事を依頼された家に行って、次の依頼の家に行って、買い物してから帰るよ。何か食べたいものはあるかい?」

「あー。この間作ってくれた豚肉の煮込み。あれ、美味かった。酒にも合うし」

「いいよ。また好きに何かかけて食べてよ」

「おぅ。俺は、今日はほぼ休みだ。午後から、依頼してきた騎士が剣を取りに来る。洗濯と掃除はしておく」

「ありがとう。じゃあ、お願いするよ」

「おぅ。昼飯は帰って食うのか?」

「んー。そうしようかなぁ。市場の食べ物って、どれも味が濃くて量が多いから、一人じゃ食べきれないし」

「うっすい味付けのなんか作っとく」

「ありがとう。本当に助かるよ」


 ガルバの気遣いが嬉しくて、セシリオはゆるく笑った。
 ガルバの家で暮らし始めて半年。幸せ(でかちん)探しは進んでいないが、なんだか毎日が満ち足りているような気がする。ガルバは、距離感を掴むのが上手い気がする。お互いに窮屈に感じないような、程よい距離感で接してくれる。ガルバと一緒の生活は、存外心地いい。

 これでガルバが理想のでかちんなら、迷わずプロポーズでもしたいところだが、ガルバのペニスは理想より若干小さめだし、何より、子供もいる異性愛者だ。ガルバとは、共同生活しているくらいがちょうどいいのかもしれない。

 ガルバに見送られて、仕事先に向かいながら、セシリオはふと思った。あれだけ毎日のようにアナニーをしまくっていたのに、この街に来てから、一度もアナニーをしていない。何故だ。これは、アナニーマスターとしては、ダメダメなんじゃないだろうか。この街にも、魔石内蔵で動く張り型とか売っているのだろうか。
 セシリオは、アナニーマスターとして、アナニーをするべきだと思ったが、仕事先に着くころには、まぁいいかぁと思うようになっていた。めちゃくちゃ溜まって、アナニーをしたくなった時にしたらいい。今は、仕事とガルバとの生活が充実していて、ストレス発散でアナニーに耽る気が起きない。

 魔法省に勤めていた時は、ストレスが中々のものだった。アナニーに手を出したのも、大元の原因は試験勉強のストレスからだった。気持ちよくストレスを発散させたくて、ひたすらアナニーをしまくっていた。今は、アナニーに耽りたいと思うほどのストレスがない。ストレスがないと、性欲まで薄まるものなのだろうか。公衆浴場で結構なでかちんを見ても、眼福だなぁと、ちょっとはぁはぁするくらいで、口説きに行こうとまでは思わない。

 我ながら枯れかけている気がするが、案外、幸せ(でかちん)探しのためという理由をつけて、ただ、元居た場所から離れたかっただけなのかもしれない。王都には家族や友人もいたが、歳を重ねるにつれ、彼らとの関係も息苦しいものになっていっていた。
『結婚しないのか』『子供ができたら幸せだぞ』『孫の顔が見たい』などなど、彼らはよかれと思って言っていたのだろうが、セシリオにとっては苦痛でしかなかった。

 この街に来て、セシリオは自由になった。家主とは、割と気が合うし、仕事もそれなりにやり甲斐がある。誰もセシリオが独身でも気にしないし、ストレスになることがほぼない生活が送れている。今のところの唯一のちっちゃなストレスは、ガルバがいつも靴下を丸めたまま洗濯に出すことくらいである。洗濯は、一日交替でしているので、二日に一度のほんのちっちゃなストレスである。そのストレスも、ガルバが美味しそうにセシリオが作った料理を食べてくれるところを見ると消えてしまうから、本当にストレスがない毎日を送っている。

 セシリオは、買い物の時にガルバが好きな酒も買って帰ろうと決めると、気合を入れて、仕事先の家の玄関の呼び鈴を押した。


 食料品以外に、ガルバが好きな酒とセシリオが好きな酒も買うと、結構な重さになった。セシリオがひぃひぃ言いながら、のろのろと自宅と化しているガルバの家に向かって歩いていると、向こうから、ガルバが歩いてきた。駆け足でこちらに近寄ってきたガルバが、両手に持っている重い荷物をひょいとセシリオの手から取った。


「ちと遅いと思ったら、随分と買ってきたな。アンタの細腕じゃきついだろ」

「おぉぉぉぉ……腕がぷるぷるしてるぅ……あ、酒を買ってきたから、今夜飲まない?」

「おっ。いいな。飲む。酒の肴にあれ作ってくれよ。前に作ってくれたやつ」

「どれ?」

「なんか、チーズをカリカリに焼いたやつ。そのままでもうめぇけど、黒胡椒かけたら最高だった」

「あぁ。いいよ。あれ、簡単だし。干し肉も買ってきてあるよー。君のおすすめのやつ」

「よっしゃ! やっぱ今日はいい日だぜ」

「ははっ。荷物を置いたら、先にお風呂に入りに行こうか。もうね、汗だく」

「おぅ。腹減ってるから、晩飯は一緒に作るか」

「いいね。そうしよう」


 話しながら歩いていたら家に着いた。魔導冷蔵庫に買ってきたものを入れると、公衆浴場に行く準備をして、家を出る。一番近い公衆浴場で汗を流して、しっかり温泉で温まってから公衆浴場を出た。

 2人で作った夕食と酒の肴を食べつつ、それぞれ好きな酒を飲む。ガルバはきつい蒸留酒が好きで、セシリオは軽めの甘い酒が好きだ。食の好みも酒の好みも合わないが、ガルバとの暮らしは穏やかで、なんだかほっとする。

 買ってきた蒸留酒を二本飲み終えたガルバが、三本目を開けながら、声をかけてきた。


「そういやよぉ、理想のでかちんは見つかったのか?」

「まだだねぇ。ていうか、この街に来てから、アナニーもしてないんだよねぇ」

「自称・アナニーマスターなのに?」

「んー。なんか、しなくても平気というか、前はストレス発散でアナニーしまくってたからなぁ。この街に来て、ストレスってほぼないし、なんかしなくてもいっかなぁってなってる。そりゃねぇ、ずっと側にいてくれるでかちんは欲しいけど、なんか焦らなくてもいいかなぁって」

「ふぅん。……なんなら、試すか?」

「何を?」

「俺のちんこ」

「なんで?」

「アンタの好みかどうか」

「いやいや。待って待って。なんでそんな話になるんだよ」

「んー。アンタとの暮らしは悪くねぇどころか、女房がいた頃よりずっと毎日が楽しいし。割と気が合うっつーか、変に気を使わなくて楽だし。一緒に住んでもらえるなら、この先もずっと一緒がいいなぁと。アンタが理想のでかちんを見つけてこの家から出ていくのは、なんか嫌だぁと思って」

「えーと、あれかね。君は僕が好きなの?」

「わりかし? 爺になっても一緒にいてぇなぁってくらいには気に入ってる」

「わぉ。すごい熱烈」

「そうか? 普通だろ」

「ちょっと待ってね」


 セシリオは酒精以外で熱くなった自分の頬を両手で包んだ。ガルバの言葉は素直に嬉しい気がする。セシリオも、ガルバとの暮らしを気に入っている。特別なこれ! といったことがあったわけではないが、ガルバのことは、割と好きだと思う。ガルバのペニスは、理想のサイズより若干小さめではあるが、十分でかちんである。
 セシリオがぐるぐる色々考えていると、ガルバがクッと笑った。


「細けぇことは考えるな。俺とヤッてみたくねぇか?」

「……ぶっちゃけヤリたいです。はい」

「で、俺と爺になっても一緒に暮らしてぇ?」

「それは……まぁ、うん。君とは食べ物や酒の好みは合わないけど、一緒にいて気楽なんだよね。居心地がいいっていうか。一緒にいると安心する」

「おっし。じゃあ、試してみっか」

「軽いなー。君って異性愛者だろ? 僕なんかで勃起するのかい?」

「さぁ? セックス自体が20年ぶりくらいだし」

「えーーーー。奥さんとセックスしてなかったのかい?」

「2人目生んだ後から拒否られるようになった」

「あらまぁ。ん-。じゃあ、今回は僕がリードするよ。童貞処女だけど、アナニーマスターだからね。まぁ、任せておいて」

「ははっ。じゃあ、任せるわ」


 セシリオは、楽しそうに笑うガルバにつられて、笑った。なんだかワクワクしてきた。これから初めてのセックスをする。緊張はない。仮に、上手くいかなかったとしても、ガルバとの関係が変わるわけではない。
 セシリオは、ガルバと手を繋いで、ガルバの寝室に向かった。

 お互いに全裸になり、大きなベッドに寝転がって、抱きしめ合いながらキスをしている。セシリオは、キスをするのも初めてだ。キスの仕方は、ガルバが教えてくれた。ガルバの熱い舌と自分の舌を擦り合わせるようにねっとりと舌を絡めているだけで、じんわり気持ちよくて、じんわり興奮してくる。密着している筋骨隆々なガルバの身体の体温が、熱くて心地よい。

 はぁっと熱い息を吐きながら、唇を離すと、ガルバがクックッと低く笑った。


「めちゃくちゃ久しぶりにちんこ勃った」

「あー。当たってるね」

「当ててんだよ。アンタも勃ってる」

「まぁね。興奮してるから」

「で? こっからどうするんだ?」

「僕が事前に準備をするから、まぁ見ててよ。道具はないけど、ちょっとしたアナニーショーってとこかな」

「ははっ。いやらしいのを頼むぜ」

「ふはっ。まぁ、頑張るよ」


 セシリオは、ガルバと密着していた身体を離し、腰に手を当てて、直腸内に浄化魔法をかけながら起き上がった。同じく起き上がって胡坐をかいたガルバに背を向け、四つん這いになる。上体を伏せて、薄い弛んだ尻肉を片手で掴んで広げれば、縦割れになって久しいセシリオのアナルが、ガルバから丸見えになっている筈だ。外気が直接アナルに触れ、ガルバの視線をアナルに感じて、なんとも興奮してきた。

 セシリオは水魔法でぬるぬるの液体を生成すると、自分のアナルにぬるぬるの水を塗りたくり、ゆっくりと指を一本アナルの中に押し込んだ。久しぶりだが、この程度では痛みはない。アナルの中に指を突っ込んだまま、再び水魔法でぬるぬるの水を生成して、直腸内をぬるぬるの水で満たす。指を引き抜くと、ぶりゅっと少量の水がアナルの中から出てしまった。
 ちょっと恥ずかしい気もするが、それ以上に興奮する。

 セシリオは、一気に三本の指をアナルに突っ込んだ。若干アナルが引き攣れるような感覚がするが、切れてはいない。アナルを拡げるように指を回し、前立腺をすりすりと擦る。久しぶりの脳みそが痺れるような快感に、思わず喘ぎ声がもれてしまう。

 自分の指でアナルを弄るのも楽しいと言えば楽しいのだが、早くガルバのでかちんが欲しい。
 セシリオは、アナルを解すのも程々に、欲しがってひくつくアナルから指を引き抜いて、両手で薄い弛んだ尻肉を掴んで、大きく広げた。こぽぉっとアナルの中から、ぬるぬるの液体が溢れ出てきて、会陰を伝い、陰嚢にまで垂れ落ちていくのが分かる。


「ガルバ。挿れて。思いっきり奥を突いてよ」

「よしきた。任せとけ」


 ひくひくとはしたなくひくつくアナルに、熱くて硬いものが触れた。メリメリと解して尚狭いセシリオのアナルを押し拡げるようにして、硬くて太いものがアナルの中に入ってくる。敏感な粘膜同士が擦れ合う快感は、道具なんか目じゃないくらい堪らない。
 セシリオは、ガルバのペニスが入ってくる快感に、ぶるっと身体を震わせた。生のでかちんヤバい。ガルバのでかちんがみっちりとセシリオのアナルの中を満たしながら、どんどん奥まで入ってくる。セシリオは結腸も開発済みである。大きな亀頭がごりっと前立腺を刺激し、太くて長い竿がみっちみちに直腸内を満たしていく。トンッと、腹の一番奥にガルバのでかちんの先っぽが当たった。瞬間、脳みそが強烈な快感で真っ白になる。


「あぁ!? あっは! そこっ! 思いっきり突いてっ!」

「おぅよ。……は、ぁ……ははっ! やべぇな。めちゃくちゃ気持ちいい」

「おっ、あぁっ、あっ、あっ、あっ、あっは! いいっ! いいっ! さいっこう!!」

「……やべぇ。一回出すぞ」

「あはっ! 出してっ! 中にっ、ちょうだい!」

「ははっ! やーらしーい」


 ガルバがセシリオの腰を強く掴み、遠慮なくずんずんずこずこ激しく腹の奥深くを突き上げ始めた。セシリオは大きく喘ぎながら、自分の尻肉から手を離し、激しく揺さぶってくるガルバの力とあまりの快感に堪えるように、シーツを強く掴んだ。
 パンパンパンパンッと肌同士がぶつかり合う音が響く。結腸ばかりをひたすらガン突きされて、セシリオは悲鳴じみた声を上げながら、触れてもいないペニスから精液を吐き出した。

 一際強く腹の奥深くを突き上げられて、そのまま腹の奥深くを硬いでかちんの先でぐりぐりされる。微かに、腹の中でガルバのでかちんがぴくぴくと震えている。射精しているのだろう。なんだか、そのことにも興奮して、思わずきゅっと射精しているガルバのでかちんをアナルで締めてしまう。
 半端なく気持ちよかった。でも、まだ足りない。

 セシリオは、身体ごと前後にゆっくりと動いて、長い射精をしているガルバのでかちんをアナルで扱き始めた。腸壁にでかちんが擦れるのも堪らなく気持ちがいい。
 ガルバが低く笑って、優しい力加減で、セシリオの尻をぺちっと叩いた。


「お代わりか?」

「ふふっ。もっともっとちょうだい」

「ははっ! やべぇな。本気で楽しくなってきた」

「あはっ! 僕もだよ。生のでかちん最高! ガルバ。もっともっと気持ちよくなろう?」

「喜んでっと!」

「あんっ!! あはっ! いっぱい突いて、いっぱい僕の中に吐き出して」

「アンタってドスケベだなぁ」

「誉め言葉だね」

「ははっ! セシリオ」

「なんだい?」

「アンタになら、心から『愛してる』って言えるようになる気がするぜ」

「ふふっ。じゃあ、君が言いたい時に言ってよ。僕も言いたくなったら言うから」

「おぅ」


 セシリオは、ガルバと夢中で求め合い、初めての熱と快感の嵐を楽しみながら、これは多分二度とガルバから離れられなくなったなぁとぼんやり思った。



――――――
 ガルバの家で暮らし始めて、1年が経った。セシリオが目覚めると、隣にいた筈のガルバの姿がなかった。のろのろと起き上がり、鈍く痛む腰を擦りながらベッドから下りて、よたよたと腰をかばいながら階段を下りる。
 台所を覗けば、ガルバが朝食を作っていた。セシリオ用の薄味オムレツと、自分用の濃い味オムレツ。野菜スープは薄めに作って、食べる時にガルバは塩胡椒を足している。パンが焼けるいい匂いがする。

 ガルバがセシリオに気づき、焼いていたオムレツを皿に移してから、フライパンを置いて、セシリオに近づいてきた。自然な動きでキスをされる。悪い気はしない。むしろ、大変気分がいい。セシリオも上機嫌でガルバにキスをしていると、ガルバが唇を触れ合わせたまま囁いた。


「今日、息子達が来るが、本当に大丈夫か?」

「僕は問題ないね。君のことを愛してるもの。堂々としてればいいだけかな」

「アンタは肝が据わってんなぁ。俺は緊張して、ちょっと胃が痛い」

「おや。なでなでする?」

「それは息子達が帰った後にしてくれ」

「うん」


 今日は、初めてガルバの2人の息子に会う。2人とも結婚していて、小さな子供もいるそうだ。ガルバは、セシリオを最初で最後の恋人だと紹介するつもりみたいだ。ガルバの気持ちが本当にすごく嬉しい。ガルバは、結婚するまで、恋人ができたことがなかったらしい。

 セシリオは、緊張した様子のガルバの頬にキスをした。


「まぁ、反対されたら、後で思いっきり慰めてあげる。いやらしい方向で」

「そいつはどーも。……反対された方がいい気がしてきた」

「あはは! 祝福してもらえるのが一番だよ」

「まぁそうだ」


 ガルバが作った朝食を一緒に食べて、一緒に後片付けをし終えた頃に、玄関の呼び鈴が鳴った。ガルバが緊張した様子で玄関に向かっていくのを見送り、セシリオは花の匂いがするお茶を淹れ始めた。

 居間で、セシリオはガルバと並んでソファーに座っていた。対面のソファーには、ガルバによく似た兄弟が座っている。予め、手紙でセシリオのことは知らせておいたらしい。兄の方が、花の匂いがするお茶を一口飲んでから、口を開いた。


「で? 親父。そこのおっさんが最初で最後の恋人ってわけ?」

「おぅ。セシリオだ。セシリオ。長男のダルグと次男のバンブだ」

「はじめまして。セシリオです。魔法使いやってます」

「知ってる。街で噂になってるから。凄腕の魔法使いが親父の家に住んでるって。セシリオさん」

「はい」

「親父を泣かせたり捨てたりしたら、地の果てまで追いかけて、ぶち殺しますから」

「おいっ! ダルグ!」

「親父は黙ってて。あのあばずれと同じことされたらどうすんだよ」

「あばずれって、お前なぁ。一応、お前らの母親だぞ?」

「母親らしいことなんざされたことねぇよ」

「右に同じ。で? セシリオさんは、どの程度の覚悟なわけ?」

「一緒のお墓に入るつもりですよ。もう2人用の墓地は買ってあります」

「「「マジか」」」

「はい。街が一望できる丘の上にいい感じの場所があったので買っちゃいました」

「マジか」

「って、親父も知らなかったのかよ」

「おぅ」

「なんか予想外に重かった……」

「可愛いだろ」

「あ、うん。なんか反対する気も失せたわ。2人で仲良く老後を楽しめよ」

「そだなー。一緒の墓まで買うくらいだしなー。セシリオさん。親父を頼みます」

「はい。一緒にのんびり幸せに過ごします」


 息子2人は、どこか呆れた顔をしていたが、なんとなく祝福モードになった。墓を買っておいて正解だった。セシリオは本気で同じ墓に入るつもりである。

 息子2人から祝福されたガルバは、照れくさそうに顔を顰めていた。ちょっと可愛い。そう思うようになったのも、ガルバを愛するようになったからだろうか。
 2人が帰ると、ガルバがセシリオを抱きしめ、大きな息を吐いた。


「あー。緊張した。セシリオ。なでなでを所望する。寝室で」

「ははっ! いいよ。ふふっ。2人とも祝福してくれてよかったね」

「おぅ。まさかアンタが墓まで買ってたとは思ってなかった」

「んー? 一緒のお墓に入ろうと思ってね」

「俺ってば愛されてるー」

「そりゃあ、もう愛してるからね」

「おぅ。俺も愛してる。結婚式でもするか?」

「おっさん2人で? 面白過ぎてダメでしょ」

「いいじゃねぇか。着飾ったアンタが見たい」

「それなら、家族だけのパーティーにして。今日、会ったのは息子君達だけだしね」

「身内だけで結婚パーティーするか。他の家族も紹介して、アンタを自慢してぇ」

「なんの自慢?」

「俺の恋人、すげぇだろって」

「ははっ! ありがとう? ガルバ」

「んー?」

「とりあえず、詳しい話はなでなでの後で」

「おぅ!」


 セシリオがちょっとだけ背伸びをして、ガルバの唇にキスをすると、ガルバがセシリオの身体を軽々と抱き上げた。セシリオは笑いながら、ガルバの太くて逞しい首に腕を絡め、ガルバの頬にキスをした。

 セシリオの幸せは、ここにある。



(おしまい)

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みんなの感想(1件)

MARUBETSU
2024.09.16 MARUBETSU

おー!良いお話しですね~。幸せのお裾分けもらえそう❤️

丸井まー(旧:まー)
2024.09.16 丸井まー(旧:まー)

感想をありがとうございますっ!!
本当に嬉しいです!!

嬉し過ぎるお言葉をくださり、感謝感激でありますっ!(泣)
本当に!全力で!ありがとうございます!!
幸せのお裾分けができたのでしたら、何よりも嬉しいです!!

お読み下さり、本当にありがとうございました!!

解除

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