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お疲れ騎士団長の癒やし係

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バルナバスは疲れていた。騎士団長に就任して10年が経つ。10年間、魔物との戦いに明け暮れ、漸く最近落ち着いてきたところだ。この10年、本当に大変だった。ちょうど100年に1度の魔物の繁殖期で、前任の騎士団長が殉職した為、当時30歳だったバルナバスが急遽騎士団長に就任した。バルナバスは自分で言うのも何だが、仕事はできる。炎の魔法が得意で、槍の腕前も騎士団で随一と言われている。指揮能力も高く、現場では活躍できる。現場では。
今、バルナバスの頭を悩ませているのは、魔物の繁殖期が落ち着いたが故に激増した書類仕事である。バルナバスはどちらかと言えば脳筋なので、書類仕事は苦手な方だ。それでも己の職務だからと頑張っているが、半年も経てば、いい加減疲れてくる。
バルナバスはなんとか1日の仕事を終えると、癒やしを求めて、今日も馴染みのバーへとふらっと出かけた。

バー『アルマイマ』は、繁華街の大通りの脇道を抜けた先にある小さなバーだ。バルナバスの隠れ家的な場所である。ここは国立学園の同級生が経営しており、忙しいバルナバスの癒やしの空間である。
バルナバスはバーに入るなり、カウンターの奥にいた人物に向かって叫んだ。


「アウレール!!疲れた!!」

「お疲れー」


ゆるい返事を返した人物は口髭がよく似合うぽちゃっとした中年の男だ。ここの店主で、バルナバスの同級生のアウレールである。10代の頃は、そこそこ美少年だったが、今では中年太りのおっさんになっている。白髪混じりの栗色の髪と柔らかいヘーゼルナッツみたいな色の瞳は昔と然程変わらない。
バルナバスは手入れをサボり気味の黒い長髪を揺らしながら、カウンター席に倒れ込むようにして座った。他に客がいないからできることである。バルナバスは顔立ちは割と普通で、少しでも騎士団長として威厳があるように、口髭と顎髭を生やしている。
口から魂を飛ばしているようなバルナバスに、アウレールが苦笑して、バルナバスが一番好きな蒸留酒をさっと出してくれた。
バルナバスはぐいっと一息でグラスの酒を飲み干すと、ぐずぐずと愚痴を溢し始めた。


「アウレール。聞いてくれ。また財務の奴に嫌味を言われた。『貴殿の脳みそには筋肉が詰まってらっしゃるのか?』だと!そうですよ!どうせ俺は脳筋ですよ!」

「財務の奴はよくお前に突っかかるなぁ。お前が好きなんじゃね?」

「ハゲ散らかしたおっさんに好かれても嬉しくない」

「まぁねぇ。そんで」

「それからそれから……」


バルナバスは延々アウレールに愚痴を溢した。
ある程度スッキリすると、バルナバスはゆっくりと酒を飲みながら、アウレールに謝った。


「悪い。今日も愚痴を聞かせてしまった」

「いいよ。別に。吐き出す場所が必要だろ?客のプライバシーは他の奴には漏らさねぇしな」

「いつも助かるよ。アウレール」

「いいってことよ。今年できたワインも飲むか?今の時期しか飲めないやつ」

「飲む」

「ついでに軽く食えるものを作るわ。お前、顔色が悪いぞ。飯食ってんのか?」

「……最近、胃が痛いことが多くて、あんまり食べてない」

「おいおい。それなのに酒をガバガバ飲んだのかよ。ワインはおあずけだ。胃に優しいもん作ってやるから、それ食って帰って寝ろ」

「アウレールの優しさが心に沁みる……もういっそのこと結婚してくれ」

「なんでそうなるんだよ」

「見合いの話がじゃんじゃかきてるんだよ!断るのに必死なんだよ!」

「見合いして結婚すりゃいいじゃねぇか」

「騎士団長を拝命しているとはいえ、俺は下級貴族だぞ?完全にまともな縁談は無いに等しい。どうせ俺は叩き上げの成り上がりですよーだ!結婚するならアウレールがいい。嫁になってくれ。そんで俺を癒やしてくれ」

「酔ってんなぁ。先に飯を食わせときゃよかったか」

「俺は酔ってない。少ししか」

「十分酔ってるぞ。……ほら、ミルク粥。蜂蜜多めに入れといたから」

「ありがとう」


バルナバスはアウレールが差し出してくれた皿を受け取り、温かくて甘いミルク粥をのろのろと食べ始めた。弱っている胃に優しく染み渡る美味しさに、なんかもう泣きそうである。本気の本気でアウレールに嫁にきてもらいたい。家はバルナバスの兄が継いでいるし、甥っ子が3人もいるので、子供をつくる必要はない。この国は割と同性愛にも寛容なので、男同士で結婚することもできる。

魔物の繁殖期は終わったが、まだ油断できない状況で、バルナバスだっていつ死ぬか分からないような感じである。せめて、一時でも、穏やかな癒やしの時間が欲しい。
バルナバスは美味しいミルク粥を食べながら、ボソボソとそう話した。
バルナバスもアウレールもずっと独身である。二人とも40になり、あと20年も働けば、老後の生活が待っている。アウレールとなら、穏やかで幸せな余生が過ごせそうな気がする。
バルナバスは真剣な顔で、アウレールを真っ直ぐに見つめた。


「アウレール。結婚してくれ」

「口にミルク粥ついてるぞ」

「騎士団長を退任したら、俺も此処で働きたい。用心棒くらいにはなるだろう。退職金もたんまり出る筈だ」

「まさか本気で言ってるのか?」

「本気と書いてマジだ」

「マジか」


アウレールが少し驚いたように、目をパチパチとさせた。アウレールが腕を組み、うーん、と考え始めた。


「天下の騎士団長様の伴侶がこんな中年太りのおっさんじゃマズいだろ」

「愛の前では瑣末な事だ」

「愛があるのかよ」

「これから育む」

「マジか。えー。どうしよー」

「頼む。アウレール。アウレールは俺の癒やしなんだ。癒やしが無いとこれ以上頑張れない!」

「うーん。しょうがねぇなぁ。じゃあ、あれだ。試しに一発ヤるか。魔力の相性悪かったら最悪じゃん」

「ありがとう!ハニー!!」

「まだハニーじゃねぇよ。どうせ今日は客も来ねぇだろ。店を閉めて俺ん家に行くぞ。まぁ、2階に上がるだけなんだけど」

「あぁ!俺頑張る」

「あ、そんなに頑張らなくていいです」

「何でだ」

「体力差を考えろ。あと、どっちがどっちだ?」

「俺はできたら抱きたい派だ。若い頃に何度か先輩や上官に犯されたが、尻は全く気持ちよくなかった」

「そんな事あったのかよ!?」

「遠征中は女を抱けないし、手頃な相手で発散するんだよ。あ、俺は自分からしたことはないぞ。男相手という意味なら童貞だ。娼婦しか抱いたことがない」

「素人童貞かよ」

「悪いか」

「いや別に。あー……じゃあ、俺が抱かれるか。10年ほどご無沙汰だったけど、一応経験はそれなりにあるしな」

「よろしく頼む」

「はいよ」


アウレールが皿を手早く片付け、店仕舞いをすると、バルナバスはアウレールと共に2階のアウレールの自宅へと移動した。
男の独り暮らしにしては、アウレールの家は片付いていた。見た感じ、居間と寝室、あとは風呂とトイレと台所しかない。
バルナバスはキョロキョロと家の中を見回し、ぽっと頬を赤く染めた。


「此処が俺達の愛の巣か」

「いや、まだ確定じゃねぇから」


アウレールが呆れた顔で、風呂場へと消えていった。
人は皆多かれ少なかれ魔力を持っている。魔力には相性があり、相性が悪いと、魔力が反発し合って、特に粘膜接触時に苦痛を伴う。おまけに、魔力の相性が悪いと子供がほぼ確実にできない。故に、婚前交渉が推奨されている。
居間のソファーに座ってアウレールを待ち、アウレールが風呂から出てくると、バルナバスも風呂を借りた。入念に身体を洗う。男とのセックスは抱かれたことしかないし、どれも苦痛しか感じなかった。魔力の相性云々ではなく、バルナバスがアナルの才能がまるでないのだろう。抱いてくれと言われたこともあったが、それは断っていた。筋肉ムキムキのゴツい男に興味はない。バルナバスはそもそも癒し系のほんわかした人が好きだ。それこそアウレールのような。

セックス自体は初めてでもないのに、バルナバスはドキドキしながら風呂から出た。居間を覗けばアウレールの姿が無かったので、バルナバスは緊張しながらアウレールの寝室のドアを開けた。

アウレールは全裸の状態で、ベッドの上に胡座をかいて座っていた。ぽよんぽよんの身体が全部丸見えである。
バルナバスは、ごくっと唾を飲み込んでから、ベッドに近づき、腰に巻いていたタオルを取って、全裸の状態でベッドに上がった。アウレールの身体は全体的にぽよんぽよんで、おっぱいが微妙に垂れていた。ぽよんと出ている腹は柔らかそうで、二の腕や太腿もぽよんぽよんである。
じっとアウレールの身体を観察していると、アウレールが片手を差し出した。


「まずは魔力の相性をみてみるぞ。俺の手に魔力を流せよ」

「あぁ……反発はないな」

「うん。まぁこれくらいなら問題ない」


バルナバスはアウレールの手に自分の手を重ね、魔力をアウレールへと流した。反発は起きない。むしろ、するりと互いの魔力が馴染むような感覚がする。
バルナバスはアウレールの手を引いて、胡座をかいて座る自分の膝にアウレールを跨らせた。
何も言わずとも、アウレールが見上げるバルナバスの唇にキスをしてくれた。口髭が当たって少し擽ったいが、お互い様だろう。触れるだけのキスをしながら、アウレールの身体を抱き締めれば、ぽよんっとした柔らかい感触がした。腰のあたりの肉をむにむにと揉む。癖になる弾力ある柔らかさである。
アウレールが唇を触れ合わせたまま、バルナバスの頬を摘んで引っ張った。


「揉むな」

「柔らかい」

「悪かったな。太ってて」

「いや。触り心地が最高だ」

「そりゃどうも」


バルナバスはむにんむにんのアウレールの尻を揉みしだきながら、アウレールの口内に舌を潜り込ませた。アウレールの唾液を味わうように口内を舐め回しても、魔力の反発はない。どうやら、バルナバスとアウレールの魔力の相性はいいらしい。ほっとしながら、バルナバスはアウレールの上顎をねっとりと舐め、舌先で歯列をなぞり、舌をぬるぬると絡め合わせた。
お互いの息が上がるまでねっとりとしたキスを楽しんでから、バルナバスはアウレールの身体をやんわりとベッドに押し倒した。
アウレールの胸肉を揉みながら、アウレールの耳朶や首筋を舐め回す。首の肉も柔らかくて、舌に楽しい。行方不明な鎖骨の辺りも舐め回してから、薄い茶褐色のアウレールの乳首に舌を這わせた。チロチロと乳頭を擽り、舌先で転がすように乳首を舐め回すと、アウレールが熱い吐息を吐いた。
バルナバスは指も使って、熱心にちゅっちゅくくりくりアウレールの乳首を弄りまくった。

満足するまで乳首を弄ったら、柔らかい腹の肉を揉みながら、下の方へと舌を這わせていく。ぽよんと突き出た腹に頬ずりをすると、アウレールが優しくバルナバスの頭を撫でた。


「こんな身体に欲情できるのか?」

「できる。もう勃ってる」

「マジかよ」

「見るか?ほら」

「マジかよ。デカ過ぎんだろ」


バルナバスは伏せていた身体を起こして、自分の股間をアウレールに見せつけた。バルナバスのペニスはバッキバキに勃起している。若い頃のような急な角度ではないが、近年希に見る元気な角度で反り返っている。女泣かせと言われる程度には、バルナバスのペニスは大きい。というか、長い。ペニスが長いものだから、娼婦を抱く時は気を使って、ペニスの根元にタオルを巻いて、深く入りすぎないように気を使っているくらいだ。
アウレールが顔を引き攣らせた。アウレールの股間を見下ろせば、アウレールのペニスもちょこんと勃起していた。アウレールのペニスはいたって普通サイズで、半分くらい皮を被っている。ちょっと可愛らしいが、それを口に出したら流石に怒られそうなので、バルナバスは何も言わずに、アウレールの股間に顔を伏せた。

アウレールのペニスの皮を優しく口で剥いてやると、アウレールが掠れた喘ぎ声を上げた。根元まで口に含んでやりたいが、ぽよんと額に腹の肉が当たり、根元まで咥えられない。ぽよんぽよんと額で腹肉を押しながら、バルナバスは頭を上下に動かして、唇でアウレールのペニスを扱いた。亀頭と皮の隙間に舌を差し込んで亀頭を舐め回せば、先走りの味が一気に濃くなる。このまま射精させてもいいが、お互い割といい歳なので、若い頃のように何度もは出せない。バルナバスはちゅぽっとアウレールのペニスから口を離した。

アウレールを促し、四つん這いになってもらう。むにんむにんの大きな尻肉を両手で揉みしだいてから、バルナバスはアナル周りの尻肉をぐいっと広げた。アウレールのアナルは黒みがかった濃い赤色をしていて、よくよく見れば、ほんの少しだけ縦に割れている。若い頃はそれなりに遊んでいたらしい。アナルの皺が細かくなったり大きくなったりと、期待しているかのように収縮している。バルナバスはねっとりとアウレールのアナルに舌を這わせた。皺の隙間を丁寧に舐め、やんわりと綻んできたアウレールのアナルに舌先を突っ込む。アウレールのアナルを拡げるように舌を上下左右に動かせば、アウレールが掠れた喘ぎ声を上げ、腰をくねらせた。アウレールのアナルから口を離し、水魔法で粘度の高い水を精製して指に纏わりつかせ、ゆっくりとアウレールのアナルの中へ指を押し込んでいく。むっちりとした内腿にやんわりと噛みつきながら、バルナバスはぬこぬこと指を動かし始めた。アウレールのアナルは、括約筋がキツく締まり、その奥は熱く柔らかく、優しくバルナバスの指を包み込んでくれる。指の腹が痼のような所に触れると、アウレールが大きく声を上げ、きゅっとキツくアナルでバルナバスの無骨な指を締めつけた。ここが男のいい所というやつなのだろう。残念ながらというべきか、バルナバスはよくなかったが。アウレールはちゃんと気持ちよくなれるようだ。
バルナバスはアウレールのむっちりとした太腿やむにんむにんの尻を舐め回しながら、根気よくアウレールのアナルを指で解した。

アウレールのアナルにバルナバスの指が3本余裕で入る頃には、アウレールは上体を伏せ、尻だけを高く上げた状態でひゃんひゃん喘ぐだけになっていた。
バルナバスもそろそろ我慢の限界である。アウレールの身体は予想以上に触り心地がよくて、アウレールの反応も予想外に可愛かった。

バルナバスはころんとアウレールの身体をひっくり返すと、アウレールに大きく足を開かせて、アウレールの腰の下に枕を置いて、尻の高さを上げた。
アウレールの足首を左手で掴んで、太い足の指を口に含んで舐め回しながら、バルナバスは熱く蕩けたアウレールのアナルに自分のペニスの先っぽをくっつけ、ゆっくりと腰を動かし始めた。アウレールの赤く染まった顔が快感に歪み、アウレールのペニスからとろとろと漏らすように白い精液が溢れ出した。どうやら挿れただけでイッたらしい。バルナバスは興奮で背筋がゾクゾクした。
アウレールの足首から手を離し、むっちりとした太腿を両手で掴んで、バルナバスは一気にペニスをアウレールのアナルに押し込んだ。


「ひぎっ!?」


アウレールが痛みを堪えるような顔で、悲鳴のような声を上げた。ペニスの先っぽが肉の壁にぶつかっている。確か、結腸とか言ったか。どうやらそこまでバルナバスのペニスは届いたらしい。


「ちょっ、いてぇっ、あ、あぁ!?」

「痛いだけか?」

「あっ、ちょっ、うそっ、いいっ、あぁっ!」


肉の壁をペニスの先でトン、トン、と優しくノックすると、徐々にアウレールの顔が快感で蕩け出した。痛みもあるようだが、気持ちいいらしい。奥深くを突く度に、アナルがきゅっとキツくバルナバスのペニスを締めつけてくる。

バルナバスが腰を振る度に、振動でアウレールの胸肉や腹肉が揺れる。何故だか妙にそれがいやらしく感じられて、バルナバスは興奮するがままに、激しく腰を使い始めた。ギリギリまでペニスを引き抜き、一気に結腸目掛けてペニスを勢いよく押し込む。男の気持ちいい所、前立腺を擦るよう意識しながら腰を振れば、アウレールが身を捩って、大きく喘いだ。
高まり続ける興奮と射精感に、もう抗えそうにない。バルナバスは再び勃起しているアウレールのペニスを片手で掴み、手で扱きながら、自分の快感の頂点を目指して、より激しく腰を振り、アウレールが悲鳴のような声を上げて射精すると同時に、バルナバスもアウレールの中の奥深くに、精液をぶち撒けた。ゆるゆると腰を振り、精液を全て出し切ると、バルナバスはアウレールの汗に濡れた身体を抱きしめた。ぽよんとした感触が、なんだかとても癒やされる。


「アウレール」

「はぁ、はぁ、なんだよ」

「結婚してくれ」

「あー……しょうがねぇなぁ」


バルナバスがアウレールの顔を覗き込むと、アウレールが優しい笑みを浮かべて、バルナバスの頭をやんわりと撫でた。


「頑張る騎士団長様の癒し系になってやるかね」

「ありがとう!アウレール!そのうち愛してると言うぞ!」

「そのうちかよ」

「俺は嘘は嫌いだ」

「そうかい。俺も嫌いだよ」


バルナバスはアウレールと顔を見合わせて、同時に小さく吹き出し、笑いながらお互いに抱き締めあった。





-------
バルナバスは慣れない手つきでガラスのコップを磨いていた。バルナバスが『アルマイマ』で働き始めて3ヶ月。まだ中々仕事に慣れない。
バルナバスは去年の頭に左足に大きな怪我をした。幸い左足はくっついたままだが、杖がないと歩けない身体になった。当然、騎士団長は引退した。それでも合わせて18年は続けたのだから、バルナバスは頑張った方だと思う。全ては癒し系であるハニーの陰ながらの支えのお陰だ。

騎士団を引退したバルナバスは、バーの仕事を手伝い始めた。杖がないと歩けないとはいえ、バルナバスにもできる仕事はある。
アウレールが、バルナバスが座ったまま仕事ができるようにと、バルナバス用の椅子をカウンター内に置いてくれたので、バルナバスの仕事は、もっぱらグラス磨きと使用済みの食器類を洗うことだ。
バルナバスはチラッと接客をしているアウレールを横目に見た。客の愚痴を聞いてやっているアウレールは、年相応に老け、以前よりも少しだけ太り、益々魅力的になっている。

最後の客を見送ると、バルナバスはよっこらしょっと椅子から立ち上がった。杖をついて2階に上がり、居間のソファーに座ると、アウレールがすぐ隣に座った。


「バルナバス。愉快な昔話をしてやろうか」

「ん?愉快な昔話?」

「ははっ。学生の頃な、お前に惚れてた」

「……はぁぁ!?」

「はははっ。やー、まさか結婚して、こんだけ長く続くとはねぇ。人生って不思議なもんだな」

「そういうことはもっと早く言えよ!」

「嫌だよ。結婚した頃、お前、俺のこと愛してなかっただろ」

「今は心から愛してる」

「だから俺も今言ったんだよ」

「アウレール」

「ん?」

「これからもよろしく頼む。浮気はしないでくれ。ずっと俺の癒し系でいてくれ」

「あっはっは!安心しろ。こんな太っちょ爺とどうこうなりてぇ奴なんざいねぇよ」

「分からんぞ。俺のアウレールは魅力的だからな」

「そりゃどうも」


アウレールが可笑しそうに笑いながら、顰めっ面をするバルナバスの唇にキスをした。


「これからは俺がメインで働くんだから、今度はお前が俺の癒し系な」

「任せろ。なんなら今夜も癒やしてやろう」

「阿呆。昨日したばっかだろ。腰がまだいてぇんだよ」

「じゃあ、腰を揉む」

「よろしく」


アウレールがクックッと笑いながら、バルナバスの頭をやんわりと撫でた。バルナバスはだらしなく頬をゆるめて、アウレールのぽよんぽよんの身体に抱きついた。



(おしまい)
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