55 / 60
55
しおりを挟む
しかし、私はそういった悲鳴を喜んで聞くような嗜好は持ち合わせていないので、ここまでにしておきました。私が直接手を下して死なれても後味が悪いですし。
そろそろユリシーズ様も治療しなくてはいけません。私を助けようとして怪我をしたわけですから。
「この男はどうしようか。君が望むなら私がここで殺してもいいし、私の城の地下に魔法を封じて閉じ込めておける牢獄もあるのだけど」
正直、私はいくじがないので殺して欲しいなんてことは言えません。アルフレッド様が永久に牢に繋がれている方が復讐になる気がしますし。
「敵は一応投降していますし、後者でお願いしていいですか?」
「君はなかなか残酷だね……一思いに殺してあげた方がまだマシだと思うけど」
提案しておいてそんなことを言われると思いませんでした。でもやっぱりそんなのは無理です。
しかし魔王様はいじわるな方です。私は思わず頬を膨らませました。
「ははは、冗談だからそんな顔をしないでくれ。ではこの男は私が預かっておくよ」
「ふ、ふざけるな!いきなり魔王なんて新しいキャラが出てきて僕を牢にいれるだと?ありえない!」
アルフレッド様は青ざめています。一生を牢獄で過ごすなんて想像しただけで恐ろしいことでしょう。
私は死ぬまで無人島に放置されかけたわけですから、これでおあいこです。
それとアルフレッド様は魔王様をご存知ないのでしょうか?魔王エレーメージェバイト様は結構有名な人気キャラクターなのですが。
私はせっかくなので最後に何故自分が殺されかけたか聞くことも兼ねて、その辺りを話してみたくなりました。事情を知る者だけで。
「魔王様、アルフレッド様とローザリア様と3人だけで話をしたいのですけど」
「いいだろう。私達はあちらに行っているから話が終わったら呼びに来てくれ」
私がユリシーズ様を治療するのを見てから、魔王様はオブシディアン様のいる方に行こうとしました。
「あの、魔王様」
すると、躊躇いながらローザリア様が魔王様に話しかけました。随分と会いたがっていた割に、今はそんな雰囲気は感じられません。
それでもユリシーズ様は心配そうにそれを見ています。
「君のことはベアトリスの記憶で見せてもらったから知っている。大聖女ローザリア、私に何か用か?」
「はい、もしわかるなら教えていただきたいのですが、私の大聖女としての力はもう戻らないのでしょうか」
魔の島で魔王様と出会う前にローザリア様の力は戻るはずでした。魔王様が現れたにも関わらず変化が無いということは、もう力は戻らないのかもしれません。
「私には分かりかねる。でも君の中には膨大な魔力が眠っているようには見える。君の心の赴くままに行動していたら、そのうち力を行使できるようになるかもしれないね」
「そうなのですか?それなら少し希望が持てます」
ローザリア様はとても嬉しそうにしています。
どうやら聞きたいことはそれだけだったようです。
「ローザリア様は魔界に興味があったようですけど、もうよろしいのですか?」
「はい、私の居場所はここだと思っています。力があった方がお役に立てると思ったのですけど」
どうやら思ったよりユリシーズ様を気にされているのでしょうか。ユリシーズ様を見るとローザリア様を見ながら呆けたような顔をしています。
「魔力が使えない者を魔界に連れて行くわけにはいかない。魔界の大気は魔素が強いので恐らく耐えられないだろう。また魔力が戻ったら遊びに来なさい」
「魔王様、ありがとうございます」
ローザリア様が頭を下げると、満足したように魔王様はあちらに行きました。
ユリシーズ様が続こうとすると、ローザリア様はユリシーズ様の手を取りました。顔を赤らめて瞳が潤んでいて、とても可愛らしいです。
「ユリシーズ様と後でお話ししたいことがあるのです。お時間をいただけないでしょうか」
ユリシーズ様は取られた手とローザリア様を交互に見ていましたが、ローザリアの手を握り返しました。
「ああ、是非聞かせてほしい。待っているよ」
そう言うとユリシーズ様も離れて行きました。
そろそろユリシーズ様も治療しなくてはいけません。私を助けようとして怪我をしたわけですから。
「この男はどうしようか。君が望むなら私がここで殺してもいいし、私の城の地下に魔法を封じて閉じ込めておける牢獄もあるのだけど」
正直、私はいくじがないので殺して欲しいなんてことは言えません。アルフレッド様が永久に牢に繋がれている方が復讐になる気がしますし。
「敵は一応投降していますし、後者でお願いしていいですか?」
「君はなかなか残酷だね……一思いに殺してあげた方がまだマシだと思うけど」
提案しておいてそんなことを言われると思いませんでした。でもやっぱりそんなのは無理です。
しかし魔王様はいじわるな方です。私は思わず頬を膨らませました。
「ははは、冗談だからそんな顔をしないでくれ。ではこの男は私が預かっておくよ」
「ふ、ふざけるな!いきなり魔王なんて新しいキャラが出てきて僕を牢にいれるだと?ありえない!」
アルフレッド様は青ざめています。一生を牢獄で過ごすなんて想像しただけで恐ろしいことでしょう。
私は死ぬまで無人島に放置されかけたわけですから、これでおあいこです。
それとアルフレッド様は魔王様をご存知ないのでしょうか?魔王エレーメージェバイト様は結構有名な人気キャラクターなのですが。
私はせっかくなので最後に何故自分が殺されかけたか聞くことも兼ねて、その辺りを話してみたくなりました。事情を知る者だけで。
「魔王様、アルフレッド様とローザリア様と3人だけで話をしたいのですけど」
「いいだろう。私達はあちらに行っているから話が終わったら呼びに来てくれ」
私がユリシーズ様を治療するのを見てから、魔王様はオブシディアン様のいる方に行こうとしました。
「あの、魔王様」
すると、躊躇いながらローザリア様が魔王様に話しかけました。随分と会いたがっていた割に、今はそんな雰囲気は感じられません。
それでもユリシーズ様は心配そうにそれを見ています。
「君のことはベアトリスの記憶で見せてもらったから知っている。大聖女ローザリア、私に何か用か?」
「はい、もしわかるなら教えていただきたいのですが、私の大聖女としての力はもう戻らないのでしょうか」
魔の島で魔王様と出会う前にローザリア様の力は戻るはずでした。魔王様が現れたにも関わらず変化が無いということは、もう力は戻らないのかもしれません。
「私には分かりかねる。でも君の中には膨大な魔力が眠っているようには見える。君の心の赴くままに行動していたら、そのうち力を行使できるようになるかもしれないね」
「そうなのですか?それなら少し希望が持てます」
ローザリア様はとても嬉しそうにしています。
どうやら聞きたいことはそれだけだったようです。
「ローザリア様は魔界に興味があったようですけど、もうよろしいのですか?」
「はい、私の居場所はここだと思っています。力があった方がお役に立てると思ったのですけど」
どうやら思ったよりユリシーズ様を気にされているのでしょうか。ユリシーズ様を見るとローザリア様を見ながら呆けたような顔をしています。
「魔力が使えない者を魔界に連れて行くわけにはいかない。魔界の大気は魔素が強いので恐らく耐えられないだろう。また魔力が戻ったら遊びに来なさい」
「魔王様、ありがとうございます」
ローザリア様が頭を下げると、満足したように魔王様はあちらに行きました。
ユリシーズ様が続こうとすると、ローザリア様はユリシーズ様の手を取りました。顔を赤らめて瞳が潤んでいて、とても可愛らしいです。
「ユリシーズ様と後でお話ししたいことがあるのです。お時間をいただけないでしょうか」
ユリシーズ様は取られた手とローザリア様を交互に見ていましたが、ローザリアの手を握り返しました。
「ああ、是非聞かせてほしい。待っているよ」
そう言うとユリシーズ様も離れて行きました。
1
お気に入りに追加
2,673
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
悪役令嬢を演じて婚約破棄して貰い、私は幸せになりました。
シグマ
恋愛
伯爵家の長女であるソフィ・フェルンストレームは成人年齢である十五歳になり、父親の尽力で第二王子であるジャイアヌス・グスタフと婚約を結ぶことになった。
それはこの世界の誰もが羨む話でありソフィも誇らしく思っていたのだが、ある日を境にそうは思えなくなってしまう。
これはそんなソフィが婚約破棄から幸せになるまでの物語。
※感想欄はネタバレを解放していますので注意して下さい。
※R-15は保険として付けています。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる