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しかし、私はそういった悲鳴を喜んで聞くような嗜好は持ち合わせていないので、ここまでにしておきました。私が直接手を下して死なれても後味が悪いですし。

そろそろユリシーズ様も治療しなくてはいけません。私を助けようとして怪我をしたわけですから。

「この男はどうしようか。君が望むなら私がここで殺してもいいし、私の城の地下に魔法を封じて閉じ込めておける牢獄もあるのだけど」

正直、私はいくじがないので殺して欲しいなんてことは言えません。アルフレッド様が永久に牢に繋がれている方が復讐になる気がしますし。

「敵は一応投降していますし、後者でお願いしていいですか?」

「君はなかなか残酷だね……一思いに殺してあげた方がまだマシだと思うけど」

提案しておいてそんなことを言われると思いませんでした。でもやっぱりそんなのは無理です。
しかし魔王様はいじわるな方です。私は思わず頬を膨らませました。

「ははは、冗談だからそんな顔をしないでくれ。ではこの男は私が預かっておくよ」

「ふ、ふざけるな!いきなり魔王なんて新しいキャラが出てきて僕を牢にいれるだと?ありえない!」

アルフレッド様は青ざめています。一生を牢獄で過ごすなんて想像しただけで恐ろしいことでしょう。
私は死ぬまで無人島に放置されかけたわけですから、これでおあいこです。

それとアルフレッド様は魔王様をご存知ないのでしょうか?魔王エレーメージェバイト様は結構有名な人気キャラクターなのですが。

私はせっかくなので最後に何故自分が殺されかけたか聞くことも兼ねて、その辺りを話してみたくなりました。事情を知る者だけで。

「魔王様、アルフレッド様とローザリア様と3人だけで話をしたいのですけど」

「いいだろう。私達はあちらに行っているから話が終わったら呼びに来てくれ」

私がユリシーズ様を治療するのを見てから、魔王様はオブシディアン様のいる方に行こうとしました。

「あの、魔王様」

すると、躊躇いながらローザリア様が魔王様に話しかけました。随分と会いたがっていた割に、今はそんな雰囲気は感じられません。
それでもユリシーズ様は心配そうにそれを見ています。

「君のことはベアトリスの記憶で見せてもらったから知っている。大聖女ローザリア、私に何か用か?」

「はい、もしわかるなら教えていただきたいのですが、私の大聖女としての力はもう戻らないのでしょうか」

魔の島で魔王様と出会う前にローザリア様の力は戻るはずでした。魔王様が現れたにも関わらず変化が無いということは、もう力は戻らないのかもしれません。

「私には分かりかねる。でも君の中には膨大な魔力が眠っているようには見える。君の心の赴くままに行動していたら、そのうち力を行使できるようになるかもしれないね」

「そうなのですか?それなら少し希望が持てます」

ローザリア様はとても嬉しそうにしています。
どうやら聞きたいことはそれだけだったようです。

「ローザリア様は魔界に興味があったようですけど、もうよろしいのですか?」

「はい、私の居場所はここだと思っています。力があった方がお役に立てると思ったのですけど」

どうやら思ったよりユリシーズ様を気にされているのでしょうか。ユリシーズ様を見るとローザリア様を見ながら呆けたような顔をしています。

「魔力が使えない者を魔界に連れて行くわけにはいかない。魔界の大気は魔素が強いので恐らく耐えられないだろう。また魔力が戻ったら遊びに来なさい」

「魔王様、ありがとうございます」

ローザリア様が頭を下げると、満足したように魔王様はあちらに行きました。
ユリシーズ様が続こうとすると、ローザリア様はユリシーズ様の手を取りました。顔を赤らめて瞳が潤んでいて、とても可愛らしいです。

「ユリシーズ様と後でお話ししたいことがあるのです。お時間をいただけないでしょうか」

ユリシーズ様は取られた手とローザリア様を交互に見ていましたが、ローザリアの手を握り返しました。

「ああ、是非聞かせてほしい。待っているよ」

そう言うとユリシーズ様も離れて行きました。
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