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その場には私の希望通りアルフレッド様、ローザリア様と私の3人だけが残されました。
アルフレッド様には魔王様の強力な拘束の魔法がかかっていて微動だにできないようですけれど。

「ローザリア、君が力を取り戻したいなら僕と結ばれるしか方法は無いはずだ。今なら間に合うから魔王とやらを説得して僕を解放してくれないかな」

アルフレッド様がローザリア様に訴えています。確かに真ルートではそういう話になっていますが、もう今のローザリア様ならそんなものに頼らずとも力が戻りそうな気がします。

「貴方とどうこうなるくらいなら力なんか要らないです。それに私気付いたんです。この世界はゲームの世界ってだけじゃないって。私もみんなもこの世界で生きているんだって」

「ローザリア様はユリシーズ様と共に歩まれるのですか?王国はかなり多難な道のりを進むことになりますよ」

「ええ、ですからユリシーズ様の側にいて助けてあげたいと思います。大聖女の力が戻ればそれも役に立つかなと思うんです」

王国を政治的にも経済的にも破綻させてユリシーズ様に引き渡そうと考えていましたが、ちょっと手心を加えた方が良さそうな気がしてきました。

お父様は大変でしょうけど、ライムストーンへの仲裁とマリアライトが引き続き支援できるように私が準備しておくことにしました。
我ながら甘いことです。

「ユリシーズだって?僕よりあんな噛ませ犬みたいなキャラが良いっていうのか」

「確かにさっきのユリシーズ様は格好良かったですよね。随分と痛そうでしたけど」

「私がライムストーンで捕まった時も身を挺して庇おうとしてくれました。私、あれからずっと考えていたんです。こんなに私のことを想ってくれる人は他にいないって」

この人は好きな相手のことを語る時、本当にキラキラした目をされます。今はそれがユリシーズ様に決まったようですね。

「先程ユリシーズ様が助けに現れてくれた時にそれを確信しました。ですから私はこの辺りで失礼しますね。ユリシーズ様とお話ししたいので。あとはお二人で話してください」

ローザリア様はすっかりアルフレッド様を無視しています。本当にアルフレッド様に関わりたくないのでしょう。挨拶もそこそこにユリシーズ様の方に歩いて行きました。

それにしても久しぶりに見るアルフレッド様は以前の優等生っぽい雰囲気が全く無くなっています。前世の記憶なんてものも良し悪しですね。

「この僕が一生牢獄暮らしなんてあり得ない。ローザリアと結ばれるなければ必ず死ぬ運命を変えたくて頑張ってきたのに」

アルフレッド様は随分と落ち込んでいるようです。
なるほど、死にたくない一心、それがアルフレッド様の行動の意味だったのですね。

「アルフレッド様はやはり隠しルートをご存知無いようですね」

アルフレッド様が驚いたように私を見ました。

「ベアトリス、何を言っているんだ。まさか君も転生者なのか……」

「貴方に殺されかけた時に全てを思い出したのです。知識を総動員してなんとか生き長らえました。隠しルートでは魔族がいろいろ助けてくれるのです」

隠しルートを知らなければアルフレッド様があのようなことをしたのもわからなくはありませんね。
私はそのことをアルフレッド様に詳しく説明してさしあげました。

「ローザリアの行動に最初から合点がいかなかったけど、ローザリアはそのルートを狙っていたのか」

「ローザリア様は露骨に皆様を避けていたと聞きました」

「ああ。特に僕を酷く拒んでいるように見えて焦ったよ。僕がもし何もしなければ、僕達は全員幸せなままでいたのだろうか」

そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。この世界はゲームの中のことではないのですから。

「前世の記憶なんて言っても、私は親の顔も友達の顔も思い出せないし愛着も感じないんです。逆に、この世界には大切な人がたくさんいます。それって、私はベアトリスでしかない証拠だと思うんです」

ローザリア様にはフラれてしまったので、私は目の前にいるアルフレッド様に思っていたことを言ってみました。

一人語りになると思っていましたが、アルフレッド様は意外と感銘を受けたような顔をされています。

「確かに僕も自分がどうやって死んだのかすら思い出せなかった。余計なことを考えずにアルフレッドとして生きていれば、こんなことにはならなかったのだろうか」

いろいろ知りたくて話す機会を作りましたが、事情を聞くと赦してしまいそうになります。これ以上は話しても仕方ないでしょう。

「ゲームのことばかり考えて、焦って間違いばかりしてしまったようだ。まだ何があるかわからないし、僕は牢の中で生き長らえようと思う」

アルフレッド様はそんなことを言いました。
でも、あの魔王様ならあれだけの魔法を使用して見せたアルフレッド様を牢から出して使うこともあるかもしれません。

「そうですか。ではごきげんよう、アルフレッド様」
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