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私がオブシディアン様と話しているのをベルンハルトがじっと見ていました。
「魔族がどれ程のものかしらないが、魔法を封じれば我々の相手ではない」
「随分と自信家ですのね、ベルンハルト」
ベルンハルトはなんだこの女はという目で私を睨んでから、不思議そうな顔をしました。
「女、どこかで会ったことがあるか?」
「たった二週間の付き合いであった、主の元伴侶の事など忘れましたか」
私が軽く笑いながらそう教えて差し上げると、普段は仏頂面のベルンハルトが見て分かる程驚いています。
「ベアトリス様、生きていたのですか」
「言いがかりで殺されかけた復讐に戻って参りましたわ」
またもベルンハルトは顔色が変わりました。狼狽した様子を見せています。
もはやアルフレッド様が主犯なのは目に見えておりますが、この人にも何か役割があったのでしょうか。
「なるほど、貴女が魔族を連れて来たのですね。せっかく生き延びたのにわざわざ殺されに来るとは」
「貴方には腕を捻られて押し倒されましたね。貴方も何か加担していたのでしょうか?」
一応確認はしておきますが、直接的な危害を加えられておりますので許すことはできません。
「陛下の間近で全て見てはいました。私から何か進言した覚えは無いが特に止めもしなかったですね。押し倒した件は申し訳ないです。陛下を守る責務があったもので」
生かして返すつもりが無いのか罪悪感からか側近にしては良く話してくれるものです。
おかげでアルフレッド様が主犯だと言質を取れました。彼が何故あそこまでしたのか不思議ですけれど、いかな理由があっても許されるものではありません。
「それは興味深い話だ」
オブシディアン様が側にやってきました。私の記憶を覗いているはずですが、顔までは覚えていなかったようですね。
「この者は生け捕っておいた方がよいか?」
「今はもうどちらでも良いです。とにかく離れの中の人物が主犯のようですから急ぎませんと」
もうベルンハルトにはあまり興味が無いのです。どの道彼はもう騎士にはなれませんし、今後の人生を考えると溜飲は下るというものです。
「では行くぞ。ガーネット」
「はっ!かかれ!」
ガーネット様の合図で魔族達が一斉に動き出しました。
人間とは思えない速度で次々と兵士が倒されていきます。
ガーネット様も二本のダガーを使ってベルンハルトと打ち合っています。
「今度は遅れは取りませんよ」
「大聖女を追ってきた魔族か。初めて見たときは驚いて油断したが、今はそうはいかないぞ」
「負け惜しみを。あの時は私も本気ではありませんでしたから」
素早く打ち込むガーネット様が有利に見えますが、ベルンハルトもよく持ち堪えながらたまに反撃しています。
「道が空いたぞ、早く行きなさい」
「ベアトリス、行くぞ!」
「ユリシーズ様、決して油断なさらないでください!」
オブシディアン様の声にユリシーズ様がすぐに反応して離れに駆け出しました。私も慌てて後を追います。
「オブシディアン様、ありがとうございます。お気をつけて」
「心配には及ばぬ」
オブシディアン様は特に武器を持っていらっしゃいませんが、彼が手を振ると何もしていないのに兵士が吹っ飛んで動かなくなっていました。
これは明らかに魔法を行使しています。ガーネット様達は魔法を封じられているようですが、オブシディアン様には効果がないのでしょうか。
ユリシーズ様が離れの扉を蹴破って中に突入しました。
「ローザリア!助けに来た!」
中に入るとベッドの上で服を乱されて倒れているローザリア様と、それに馬乗りになり手を押さえつけるアルフレッド様の姿が目に入ってきました。
アルフレッド様の顔は見えませんが、ローザリア様は泣き濡れていて頬が赤く腫れているように見えます。暴力を振るわれたようです。
ユリシーズ様の声に、それまで茫然としていた様子のローザリア様がはっと気付いたようにしました。
「ユリシーズ様?見ないで……見ないでください!」
ローザリア様は悲痛な叫び声に、私ですら胸を掴まれる思いがしました。
「魔族がどれ程のものかしらないが、魔法を封じれば我々の相手ではない」
「随分と自信家ですのね、ベルンハルト」
ベルンハルトはなんだこの女はという目で私を睨んでから、不思議そうな顔をしました。
「女、どこかで会ったことがあるか?」
「たった二週間の付き合いであった、主の元伴侶の事など忘れましたか」
私が軽く笑いながらそう教えて差し上げると、普段は仏頂面のベルンハルトが見て分かる程驚いています。
「ベアトリス様、生きていたのですか」
「言いがかりで殺されかけた復讐に戻って参りましたわ」
またもベルンハルトは顔色が変わりました。狼狽した様子を見せています。
もはやアルフレッド様が主犯なのは目に見えておりますが、この人にも何か役割があったのでしょうか。
「なるほど、貴女が魔族を連れて来たのですね。せっかく生き延びたのにわざわざ殺されに来るとは」
「貴方には腕を捻られて押し倒されましたね。貴方も何か加担していたのでしょうか?」
一応確認はしておきますが、直接的な危害を加えられておりますので許すことはできません。
「陛下の間近で全て見てはいました。私から何か進言した覚えは無いが特に止めもしなかったですね。押し倒した件は申し訳ないです。陛下を守る責務があったもので」
生かして返すつもりが無いのか罪悪感からか側近にしては良く話してくれるものです。
おかげでアルフレッド様が主犯だと言質を取れました。彼が何故あそこまでしたのか不思議ですけれど、いかな理由があっても許されるものではありません。
「それは興味深い話だ」
オブシディアン様が側にやってきました。私の記憶を覗いているはずですが、顔までは覚えていなかったようですね。
「この者は生け捕っておいた方がよいか?」
「今はもうどちらでも良いです。とにかく離れの中の人物が主犯のようですから急ぎませんと」
もうベルンハルトにはあまり興味が無いのです。どの道彼はもう騎士にはなれませんし、今後の人生を考えると溜飲は下るというものです。
「では行くぞ。ガーネット」
「はっ!かかれ!」
ガーネット様の合図で魔族達が一斉に動き出しました。
人間とは思えない速度で次々と兵士が倒されていきます。
ガーネット様も二本のダガーを使ってベルンハルトと打ち合っています。
「今度は遅れは取りませんよ」
「大聖女を追ってきた魔族か。初めて見たときは驚いて油断したが、今はそうはいかないぞ」
「負け惜しみを。あの時は私も本気ではありませんでしたから」
素早く打ち込むガーネット様が有利に見えますが、ベルンハルトもよく持ち堪えながらたまに反撃しています。
「道が空いたぞ、早く行きなさい」
「ベアトリス、行くぞ!」
「ユリシーズ様、決して油断なさらないでください!」
オブシディアン様の声にユリシーズ様がすぐに反応して離れに駆け出しました。私も慌てて後を追います。
「オブシディアン様、ありがとうございます。お気をつけて」
「心配には及ばぬ」
オブシディアン様は特に武器を持っていらっしゃいませんが、彼が手を振ると何もしていないのに兵士が吹っ飛んで動かなくなっていました。
これは明らかに魔法を行使しています。ガーネット様達は魔法を封じられているようですが、オブシディアン様には効果がないのでしょうか。
ユリシーズ様が離れの扉を蹴破って中に突入しました。
「ローザリア!助けに来た!」
中に入るとベッドの上で服を乱されて倒れているローザリア様と、それに馬乗りになり手を押さえつけるアルフレッド様の姿が目に入ってきました。
アルフレッド様の顔は見えませんが、ローザリア様は泣き濡れていて頬が赤く腫れているように見えます。暴力を振るわれたようです。
ユリシーズ様の声に、それまで茫然としていた様子のローザリア様がはっと気付いたようにしました。
「ユリシーズ様?見ないで……見ないでください!」
ローザリア様は悲痛な叫び声に、私ですら胸を掴まれる思いがしました。
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