47 / 60
47
しおりを挟む
私達が王都に行っている間に辺境伯様が進軍する可能性が充分にあるので、お父様には事情を全てお話しして辺境伯様とのことはお任せしました。
私が王都に乗り込むことについて、流石にお父様に心配されましたが、オブシディアン様が説明してお父様を安心させてくださいました。
ここ数日でオブシディアン様は何度かお父様とお酒を飲んでいたようです。オブシディアン様は辺境伯様にご馳走になった時、魔法ではなく実際に作ったお酒を気に入られたようで、お父様の秘蔵のお酒を楽しんでおられました。
そして私達は王都に向けて出発しました。
王都はマリアライトが持つ中央山脈を越えてすぐなので、翌日には私達は王都内の宿屋に到着しています。
先程までガーネット様が諜報員から様子を伺っていたところです。
山脈の麓から馬車で来たのですが、王都に近づいてから商人の格好をして上手くターバンで耳を隠した諜報員の案内で正門から王都に侵入できました。
どうやって連絡を取り合うのかわかりませんが、諜報員というのは便利過ぎではないでしょうか。
彼らの話だとローザリア様は王宮内の西の離れに幽閉されているとのことで、思っていたより随分と酷い扱いと言えます。
そこは高貴な罪人を逃げ出せないように留置するための場所だからです。きちんと整えられた場所なので不自由はありませんが。
実際に留置された私が言うのだから間違いありません。
実はひとつ不安があったので、その報告を聞いて安心しました。私はすっかりベルンハルトルートのことを失念していたのです。
ベルンハルトルートでは、ここでユリシーズからローザリアを奪ったベルンハルトが、ローザリア様の願いを聞いて逃避行するのです。
ローザリア様は隠しルート狙いでしょうから、ちゃんと王宮にいるようですね。
それを聞いて、案の定ユリシーズ様が激昂しています。
「ローザリアを罪人扱いなんて兄上は何を考えているのだ。あの清楚なローザリアが硬いベッドで寒い思いをしていると考えるだけで辛くなるではないか」
「まあ私もあなた方に閉じ込められた場所ですね。居心地は悪くない場所なので大丈夫ですよ」
「ぐ……」
少し煩いので落ち着いていただきました。別に本当の事なので安心していただいて良いと思います。
ユリシーズ様が言う侵入経路はローザリア様と脱出する時にも使った、王宮の外壁の崩れた人ひとり通れる程度の穴で、ちょうど中からは茂みに隠れて見えなくなっているそうです。
子供の頃から王子兄弟とベルンハルトで抜け出したりしていたそうですが、それだと相手も知っている気がします。
いろいろと問題がありますが、もし窮地に陥ったところでオブシディアン様の力押しで乗り切れるので、とりあえず王宮に行くことにしました。
私は街娘風の服を着て髪をうしろで括っています。一応、頬被りをして色々とごまかしてみました。
ユリシーズ様も旅装に帽子で誤魔化していますが、この人は兄のアルフレッド様と違って背が高くて目鼻立ちがはっきりしているので、割と目立ちます。
「別に褒めているわけではないので勘違いなさらないでほしいのですけど、ユリシーズ様の外見だとその程度の変装ではお忍びの貴族にしか見えなくて逆に怪しく見えていらっしゃいますよ」
足手まといなのでお留守番していて欲しいと言外に覗かせました。
「いや、君こそちょっと隠したってそんな艶々の髪の平民はいないし、顔も白すぎて目立っているよ。煤でも塗ったらどうかな」
人が下手に出ていたら言いたい放題です。お手伝いを辞退して差し上げようかと思ってしまいます。
「君達はどっちもどっちだ。隠密行動には向かないことこの上ない」
尋常ではない長身のフードを被った怪しげな男性、オブシディアン様にそう言われました。
私はもちろん、オブシディアン様に恐怖を植え付けられているユリシーズ様も、言い返すことができません。
しっかり隠密行動の身なりを整えたガーネット様と諜報員の方々がため息をついていました。
私が王都に乗り込むことについて、流石にお父様に心配されましたが、オブシディアン様が説明してお父様を安心させてくださいました。
ここ数日でオブシディアン様は何度かお父様とお酒を飲んでいたようです。オブシディアン様は辺境伯様にご馳走になった時、魔法ではなく実際に作ったお酒を気に入られたようで、お父様の秘蔵のお酒を楽しんでおられました。
そして私達は王都に向けて出発しました。
王都はマリアライトが持つ中央山脈を越えてすぐなので、翌日には私達は王都内の宿屋に到着しています。
先程までガーネット様が諜報員から様子を伺っていたところです。
山脈の麓から馬車で来たのですが、王都に近づいてから商人の格好をして上手くターバンで耳を隠した諜報員の案内で正門から王都に侵入できました。
どうやって連絡を取り合うのかわかりませんが、諜報員というのは便利過ぎではないでしょうか。
彼らの話だとローザリア様は王宮内の西の離れに幽閉されているとのことで、思っていたより随分と酷い扱いと言えます。
そこは高貴な罪人を逃げ出せないように留置するための場所だからです。きちんと整えられた場所なので不自由はありませんが。
実際に留置された私が言うのだから間違いありません。
実はひとつ不安があったので、その報告を聞いて安心しました。私はすっかりベルンハルトルートのことを失念していたのです。
ベルンハルトルートでは、ここでユリシーズからローザリアを奪ったベルンハルトが、ローザリア様の願いを聞いて逃避行するのです。
ローザリア様は隠しルート狙いでしょうから、ちゃんと王宮にいるようですね。
それを聞いて、案の定ユリシーズ様が激昂しています。
「ローザリアを罪人扱いなんて兄上は何を考えているのだ。あの清楚なローザリアが硬いベッドで寒い思いをしていると考えるだけで辛くなるではないか」
「まあ私もあなた方に閉じ込められた場所ですね。居心地は悪くない場所なので大丈夫ですよ」
「ぐ……」
少し煩いので落ち着いていただきました。別に本当の事なので安心していただいて良いと思います。
ユリシーズ様が言う侵入経路はローザリア様と脱出する時にも使った、王宮の外壁の崩れた人ひとり通れる程度の穴で、ちょうど中からは茂みに隠れて見えなくなっているそうです。
子供の頃から王子兄弟とベルンハルトで抜け出したりしていたそうですが、それだと相手も知っている気がします。
いろいろと問題がありますが、もし窮地に陥ったところでオブシディアン様の力押しで乗り切れるので、とりあえず王宮に行くことにしました。
私は街娘風の服を着て髪をうしろで括っています。一応、頬被りをして色々とごまかしてみました。
ユリシーズ様も旅装に帽子で誤魔化していますが、この人は兄のアルフレッド様と違って背が高くて目鼻立ちがはっきりしているので、割と目立ちます。
「別に褒めているわけではないので勘違いなさらないでほしいのですけど、ユリシーズ様の外見だとその程度の変装ではお忍びの貴族にしか見えなくて逆に怪しく見えていらっしゃいますよ」
足手まといなのでお留守番していて欲しいと言外に覗かせました。
「いや、君こそちょっと隠したってそんな艶々の髪の平民はいないし、顔も白すぎて目立っているよ。煤でも塗ったらどうかな」
人が下手に出ていたら言いたい放題です。お手伝いを辞退して差し上げようかと思ってしまいます。
「君達はどっちもどっちだ。隠密行動には向かないことこの上ない」
尋常ではない長身のフードを被った怪しげな男性、オブシディアン様にそう言われました。
私はもちろん、オブシディアン様に恐怖を植え付けられているユリシーズ様も、言い返すことができません。
しっかり隠密行動の身なりを整えたガーネット様と諜報員の方々がため息をついていました。
1
お気に入りに追加
2,673
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。
yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~)
パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。
この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。
しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。
もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。
「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。
「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」
そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。
竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。
後半、シリアス風味のハピエン。
3章からルート分岐します。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。
https://waifulabs.com/
悪役令嬢を演じて婚約破棄して貰い、私は幸せになりました。
シグマ
恋愛
伯爵家の長女であるソフィ・フェルンストレームは成人年齢である十五歳になり、父親の尽力で第二王子であるジャイアヌス・グスタフと婚約を結ぶことになった。
それはこの世界の誰もが羨む話でありソフィも誇らしく思っていたのだが、ある日を境にそうは思えなくなってしまう。
これはそんなソフィが婚約破棄から幸せになるまでの物語。
※感想欄はネタバレを解放していますので注意して下さい。
※R-15は保険として付けています。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ぽっちゃりな私は妹に婚約者を取られましたが、嫁ぎ先での溺愛がとまりません~冷酷な伯爵様とは誰のこと?~
柊木 ひなき
恋愛
「メリーナ、お前との婚約を破棄する!」夜会の最中に婚約者の第一王子から婚約破棄を告げられ、妹からは馬鹿にされ、貴族達の笑い者になった。
その時、思い出したのだ。(私の前世、美容部員だった!)この体型、ドレス、確かにやばい!
この世界の美の基準は、スリム体型が前提。まずはダイエットを……え、もう次の結婚? お相手は、超絶美形の伯爵様!? からの溺愛!? なんで!?
※シリアス展開もわりとあります。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!
ペトラ
恋愛
ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。
戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。
前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。
悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。
他サイトに連載中の話の改訂版になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる