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翌日、あまり乗り気ではありませんでしたが、辺境伯様の依頼を果たすべく再びお父様の元を訪れました。
昨日のお話で王族が私を陥れたことを確信していただきましたが、マリアライトもまた同じように酷い目にあわされたのです。
お父様が王国騎士団の力を不安がるのも分からなくはないですが、これ以上彼らをのさばらせておくわけには参りません。
「お父様は私の言うことを何でも聞くのですよね?」
開口一番そう申し上げると、お父様は目を見張っていました。償いはなんでもすると言われましたので、是非なんでもしていただきたいと思います。
「もちろんだ。何をすれば良い」
「マリアライトはライムストーン辺境伯様の連合軍を素通りさせてください。私達はそれに同行して王国とラピス教会から宝石の採掘権をマリアライトに取り戻します」
「ライムストーンとは調整済みということか」
「ええ、ライムストーン辺境伯様は独立を目指されますが、ラピス教会とは事を構えたくないとおっしゃっていて、マリアライトの採掘権については触らないことを約束しております」
まだ皮算用ですが、これでマリアライトは持ち直すはずです。
しかし、マリアライトの現状を見ると採掘権が戻っただけでは全てが元には戻らないでしょう。
顧客である他領の貴族達に対して、マリアライトが王家に着せられた汚名を消し去るようにお父様には頑張っていただかないといけません。
「南部以外の諸侯を全ては抑えきれないからだろうが、ライムストーンは王位に付く覚悟までは無いようだな。奴らに一時的に与するのは良いが、最終的にはその傘下に入らぬ方がマリアライトには良いかもしれぬ」
お父様は持論を聞かせてくださいました。
まず、宝石の販路の問題があるようです。南部の農耕で成り立っている領地は装飾品にあまりお金をかけません。
どこからお金が湧くのかわかりませんが、やはり王族落ちの公爵家や侯爵家の方が顧客としては欠かせません。
そして税制の問題があります。今後どうなるかわかりませんが、王国の税制はマリアライトに有利です。辺境伯様は利に聡い方ですので、間違いなくマリアライトからしっかりと税を取るでしょう。
全てお父様のお考えです。
そういえば昔からお父様には経済の事を色々と教えていただきました。親子の会話とは思えませんが、お父様なりに娘と会話する機会を持とうとしたのでしょうか。
「しかし、全ては王国を打倒できる前提の話だ。昨日聞きかじった程度だが、王国騎士団に対して魔族の協力はアテにできる算段なのだな?」
「オブシディアン様が大丈夫と言ってくださるので、協力は確約されていると考えていただいて結構です」
私は断言しましたが、お父様は納得いかないのか考え込んでいます。オブシディアン様なら必ず成し遂げてくださるので心配いらないのですけれど。
「そこまで魔族が協力するメリットはなんだ。お前は魔族に国でも売り渡すつもりか」
「そ、それは……」
想像と違う質問をされ、私は返答に詰まってしまいました。
ラピス教の教義を生まれた時から教え込まれるこの世界の人々は、魔族に対して邪悪なイメージを持っています。
そんな魔族が協力するなど、どのような贄が必要だったのかと考えても仕方ないでしょう。
しかし、オブシディアン様は人間界を手に入れるなど無駄なことだと考えていますし、メリットと言われてもオブシディアン様はほぼ無償で協力してくださっているようなものです。
一応、引き換え同然に私と恋人になりましたが、伝えても信じていただけないばかりか余計な問題が発生するような気がいたします。
もちろんオブシディアン様とのお付き合いは私も望んで受け入れましたし、優しくて素敵なオブシディアン様と一緒にいられて幸せしかありません。
私がふとオブシディアン様の方に視線を移すと、彼と目が合いました。
「少し良いだろうか」
それを私の合図と思われたのか、オブシディアン様が口を開きました。
「失礼かもしれないが、我々は人間界など手に入れる程の価値はないと考えている。其方ら人間は勘違いしているようだが」
「ならば何故我々に協力するのだ」
「これはベアトリス個人からの依頼だ。私は大切な女性の願いを聞き届けているに過ぎない。そこに利害など関係ありはしない」
オブシディアン様が身も蓋もないことをおっしゃいました。
内容は大変嬉しいのですが、少し待っていただきたかったです。
「お前は復讐のために自分を売り渡したのか」
「そんなのではありません!オブシディアン様は命の恩人で私の最愛の人です!」
私は売り言葉に買い言葉で思わず言ってしまいました。
ちょっと微妙な空気が流れている気がいたします。
「……娘が魔界に嫁に行ってしまうのか」
お父様、少し気が早いです。否定はいたしませんが。
お父様は想像以上に狼狽しています。
なるほど、このような復讐はよいかもしれませんね。
昨日のお話で王族が私を陥れたことを確信していただきましたが、マリアライトもまた同じように酷い目にあわされたのです。
お父様が王国騎士団の力を不安がるのも分からなくはないですが、これ以上彼らをのさばらせておくわけには参りません。
「お父様は私の言うことを何でも聞くのですよね?」
開口一番そう申し上げると、お父様は目を見張っていました。償いはなんでもすると言われましたので、是非なんでもしていただきたいと思います。
「もちろんだ。何をすれば良い」
「マリアライトはライムストーン辺境伯様の連合軍を素通りさせてください。私達はそれに同行して王国とラピス教会から宝石の採掘権をマリアライトに取り戻します」
「ライムストーンとは調整済みということか」
「ええ、ライムストーン辺境伯様は独立を目指されますが、ラピス教会とは事を構えたくないとおっしゃっていて、マリアライトの採掘権については触らないことを約束しております」
まだ皮算用ですが、これでマリアライトは持ち直すはずです。
しかし、マリアライトの現状を見ると採掘権が戻っただけでは全てが元には戻らないでしょう。
顧客である他領の貴族達に対して、マリアライトが王家に着せられた汚名を消し去るようにお父様には頑張っていただかないといけません。
「南部以外の諸侯を全ては抑えきれないからだろうが、ライムストーンは王位に付く覚悟までは無いようだな。奴らに一時的に与するのは良いが、最終的にはその傘下に入らぬ方がマリアライトには良いかもしれぬ」
お父様は持論を聞かせてくださいました。
まず、宝石の販路の問題があるようです。南部の農耕で成り立っている領地は装飾品にあまりお金をかけません。
どこからお金が湧くのかわかりませんが、やはり王族落ちの公爵家や侯爵家の方が顧客としては欠かせません。
そして税制の問題があります。今後どうなるかわかりませんが、王国の税制はマリアライトに有利です。辺境伯様は利に聡い方ですので、間違いなくマリアライトからしっかりと税を取るでしょう。
全てお父様のお考えです。
そういえば昔からお父様には経済の事を色々と教えていただきました。親子の会話とは思えませんが、お父様なりに娘と会話する機会を持とうとしたのでしょうか。
「しかし、全ては王国を打倒できる前提の話だ。昨日聞きかじった程度だが、王国騎士団に対して魔族の協力はアテにできる算段なのだな?」
「オブシディアン様が大丈夫と言ってくださるので、協力は確約されていると考えていただいて結構です」
私は断言しましたが、お父様は納得いかないのか考え込んでいます。オブシディアン様なら必ず成し遂げてくださるので心配いらないのですけれど。
「そこまで魔族が協力するメリットはなんだ。お前は魔族に国でも売り渡すつもりか」
「そ、それは……」
想像と違う質問をされ、私は返答に詰まってしまいました。
ラピス教の教義を生まれた時から教え込まれるこの世界の人々は、魔族に対して邪悪なイメージを持っています。
そんな魔族が協力するなど、どのような贄が必要だったのかと考えても仕方ないでしょう。
しかし、オブシディアン様は人間界を手に入れるなど無駄なことだと考えていますし、メリットと言われてもオブシディアン様はほぼ無償で協力してくださっているようなものです。
一応、引き換え同然に私と恋人になりましたが、伝えても信じていただけないばかりか余計な問題が発生するような気がいたします。
もちろんオブシディアン様とのお付き合いは私も望んで受け入れましたし、優しくて素敵なオブシディアン様と一緒にいられて幸せしかありません。
私がふとオブシディアン様の方に視線を移すと、彼と目が合いました。
「少し良いだろうか」
それを私の合図と思われたのか、オブシディアン様が口を開きました。
「失礼かもしれないが、我々は人間界など手に入れる程の価値はないと考えている。其方ら人間は勘違いしているようだが」
「ならば何故我々に協力するのだ」
「これはベアトリス個人からの依頼だ。私は大切な女性の願いを聞き届けているに過ぎない。そこに利害など関係ありはしない」
オブシディアン様が身も蓋もないことをおっしゃいました。
内容は大変嬉しいのですが、少し待っていただきたかったです。
「お前は復讐のために自分を売り渡したのか」
「そんなのではありません!オブシディアン様は命の恩人で私の最愛の人です!」
私は売り言葉に買い言葉で思わず言ってしまいました。
ちょっと微妙な空気が流れている気がいたします。
「……娘が魔界に嫁に行ってしまうのか」
お父様、少し気が早いです。否定はいたしませんが。
お父様は想像以上に狼狽しています。
なるほど、このような復讐はよいかもしれませんね。
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