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「違いますよ!私、結構大変だったから、女の子がこんな目に合ってるのに見てるだけなんて薄情だなって思っただけです!」

スパイ疑惑よりはマシなので、もう本音をぶっちゃけてみた。焦ったので声が裏返ってしまった。

「なんだ、そのようなことか。島に迷い込んだ人間の救済など我々の領分ではないので、微弱な魔法を使う程度なら捨て置こうかと思っていただけだ」

やっぱり人間ではないよね。一応スパイ疑惑は保留してくれたみたいだけど、そんなこととか言われたら複雑だよ。

「私が君に接触したのは君が強力な魔法を使ったからだ。人間であれ程の魔法を使えるのは大聖女しかいないはずだ。君は大聖女なのか?」

なるほど、隠しイベントでローザリアが拾われたのも復活した大聖女の力のおかげだもんね。『キュア』程度の豆鉄砲に用は無いと。

しかし随分とこちらの事情に詳しいよね。こちらは魔族についての知識はほとんど失われているのに。

「私が大聖女だったらこんなところに捨て置かれるわけないじゃないですか」
「それは道理だな。そこで最初の質問に戻るのだが、一緒に来た彼らは迎えに来ないのか?」

あれ?最初の質問は「帰るアテがあるか」だったような。つまり最初から兵士達とグルじゃないか聞きたかったのか。

「絶対迎えに来ませんから安心してください」

しっかり断言したので安心して連れて行ってくれると思ったのだけど、オブシディアンの目は余計に険しくなった。

「つまり君は齢16にして彼らにこの島に捨て置かれるような事をしたのか?」

あれれ?どんどん深みにはまっていく。犯罪者として流刑に処された者でも魔界に連れて行ってくれるのか不安になってきた。

「私、冤罪で流刑にされたんですけど、話したらオブシディアン様は私を信じてくれるんですか?」

だいぶ疲れてきたのでちょっとマジな顔になってしまったかもしれない。
少しは自分で座ろうと力を入れてたんだけど、多分どんどん力が抜けてると思う。

オブシディアンは眉間を押さえると、観念したように私を抱き上げた。

「きゃわあ!」

所謂お姫様抱っこだ。そんなことをされたのは生まれて初めてだったので変な声がでてしまった。

オブシディアンの顔がすぐそばにある。私ろくにお風呂も入ってないし、服も1週間着替えてない。いろいろと恥ずかしすぎる!

「とりあえず保留だ。私の屋敷に運ぶからもう少し詳しく話を聞かせてくれ」

オブシディアンは空に舞い上がった。
さっきの崖より高く飛び上がり森に着地する。
魔族って空を飛ぶんだね!夜風が凄く気持ちいい。

遠くに淡い光の集まりが見えた。落ちる前に見たのはやっぱり魔界の門の光だったんだ。

「もう質問はいいんですか?」
「君からは邪悪な感じはしないから、一旦信用しよう。不調の君にここまで話をさせてすまなかった」

そんなオブシディアンの言葉を聞きながら、私は別のことを考えていた。

ローザリアの隠しルートの攻略対象はオブシディアンというキャラではなかった。攻略対象とはいっても攻略要素は無く、読むだけで勝手にエンディングまでいくのだけど。

この人は何者なのだろうか。

「オブシディアン様がこの森の管理をしているってどういうことですか?」
「ああ、起きていたのか」

返事をしないから寝ていると思われたようだ。考え事をしていました。

「この森は転移門をカモフラージュするために私が作った。森にあるものは全て魔力で作ったものだ。私も忙しいので四六時中見ているわけでもないが、異分子を感知したり、森が欠損した場合に補修したりしている」

魔族は転移門って言うんだね。門番さんか何かかな?ローザリアは魔族の王様に拾われるのに、私は門番に拾われるのかあ。大聖女優遇されすぎだよ。

すぐに、その転移門に到着した。門は淡い光がドアの形に集まってできていた。
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