上 下
496 / 566
第二部

その494 毒茶の感想

しおりを挟む
「今しがた、【毒】と伺ったコレを飲めと?」
「お茶を誘ったのはミケラルド様でしょう?」

 なるほど、筋は通っている。いや、全然通ってないけどな。

「でも毒でしょう?」
「毒が入ってもお茶です」

 ふむ、中々に煽りよる。
 がしかし、これを断りでもすれば「今この場で暴れてやる」という意思がビシビシと伝わってくる。
 仕方ないと思い、【毒耐性】と【猛毒耐性】、更には【超毒耐性】や【麻痺耐性】等を発動し、カップを持つ。シギュンをちらりと見るも、彼女は笑ったまま微動だにしなかった。何この人、超怖い。
 カップの中身を見、シギュンを見、カップの中身を見、シギュンを見……そしてとうとう俺はそれに口を付けたのだった。

「てぃ!」

 ゴクンと一気に飲み干した俺を見て、シギュンがニタリと笑う。

「うわぁ。何ですかこれ、舌がピリピリする」

 俺がそう言うと、今度はニコリと明るく笑うシギュン。

「数多くの毒草や毒虫、猛毒を持つモンスターの毒を厳選し作りました。刺激的な味でしょう?」
「物理的に刺激がきてますね」
「ふふふ、逞しい方です事」

 にゃろう、俺に毒が効かない事を知ってたような口ぶりだ。
 ……いや、違う。少なからず歯痒そうに見える。
 という事は……なるほど、俺を試したのか。

「一本とられましたよ。私を殺す手段を、ここで一つ消しておきたかったと、そういう訳ですね」
「ホント、殺し甲斐がいのある男……!」

 不服そうに言うシギュン。
 つまり今後闇ギルドは、「ミケラルドに毒が通じない」という情報を共有する訳だ。これにより、手段こそ減るものの失敗を減らす事が出来る。
 なるほど、ただでは転ばないとはこういう事を言うんだろうな。

「では、これでお茶の義務は果たしたという事で」
「えぇ、今後とも仲良くしてくださいね」

 笑顔を突き合わせた俺とシギュンの間には、いびつ禍々まがまがしい魔力がちらほらありましたとさ。

 ◇◆◇ ◆◇◆

 副団長室を出て、クインの殺気を背中で浴び、法王クルスの部屋に戻った俺は、自分で新たな茶をれていた。

「ミケラルド君、深夜なんだが?」
「深夜ですね、クルス殿」
「報告は明日でもよかったのだが?」
「いえ、早いところ口直しをしたくて」
「そういう話をしていないのだが?」
「お宅の聖騎士団副団長殿に毒を盛られまして」
「何!? それは本当か!?」
「外の警備に聞こえちゃいますよ」
「う、うむ……それは本当か? そうなると我が国の権威が失墜するのだが?」
「ちゃんと飲みましたよ、全部。偉いでしょう?」
「何故毒と知ってて飲んだっ?」
「シギュンが飲めって言うので」
「シギュンを闇人やみうどと知ってて飲む馬鹿がどこにいるっ?」
「ここに」

 俺が自分を指差して言うと、法王クルスは頭を抱えソファに腰を下ろした。いや、あれは落ちたというべきか。

「お茶なんて誘わなければよかったですよ、ホント」
「茶を飲みに行って毒を飲む国家元首か……」
「毒茶だったんです」
「毒は毒だろう」
「シギュンはお茶はお茶だと」
「シギュン寄りになっていないか?」
「まぁ、爺さんよりかは美女ですよね」
「…………くそ、否定が出来ない」

 流石、法王クルス。男の中の男である。

「それで、シギュンは何を?」
「こちらへの探りを入れつつ宣戦布告ってところでしょうか」
「ほぉ、遂に自分が闇人やみうどだと認めたか」
「いえ、言い切りはしませんでした。流石ですよ、手の内を明かし切らず一手かすめ取られてしまいました」
「クインはどうだった?」
「殺気剥き出しでした」
「殺気は証拠にならんからな」
「でも、シギュンが副団長の椅子にいなければならないという事は理解出来ました」
「言質が取れれば解任に追い込める。しかし、そうはしなかった。つまりシギュンは聖騎士団副団長の権限が必要だという事か」
「今はまだ……でしょうね。そろそろなりふり構っていられないという印象は否めませんでした」
「ふむ……リプトゥア国の様子はどうだ?」

 話題を変えた法王クルス。
 やはり、魔族側も気になるよな。

「リーガル国のブライアン王には既に連絡済みですが、あの国の兵では太刀打ち出来る相手ではありません。許可を頂き、リプトゥアの北東にテレポートポイントを設置しました。現地の仲間から連絡がきた段階で動ければと」
「電撃作戦になるな。わかった、我が騎士団もいつでも動けるようにしておこう」
「感謝します」
「ウェイド殿には?」
「ぬかりなく。現在周辺の地図を作っていますので、しばしお待ちを」
彼奴きゃつらの驚く顔が見物だな」
「とはいえ、闇ギルドも気になるところです」
「負担を掛けるな。支援金は弾む予定だ」
「天まで弾んでください」
「ふふふ、相変わらず欲深き元首だ」

 法王国には何かと迷惑掛けてるが、持ちつ持たれつ上手くやれているのかもしれない。不死王リッチの動き、闇ギルドの動き。どちらも気になるところだが、この一ヶ月が勝負の月になるだろう。
 その後俺は、お茶を四、五杯飲んだところで「そろそろ帰れ」と法王クルスに追い出されたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

修行マニアの高校生 異世界で最強になったのでスローライフを志す

佐原
ファンタジー
毎日修行を勤しむ高校生西郷努は柔道、ボクシング、レスリング、剣道、など日本の武術以外にも海外の武術を極め、世界王者を陰ながらぶっ倒した。その後、しばらくの間目標がなくなるが、努は「次は神でも倒すか」と志すが、どうやって神に会うか考えた末に死ねば良いと考え、自殺し見事転生するこができた。その世界ではステータスや魔法などが存在するゲームのような世界で、努は次に魔法を極めた末に最高神をぶっ倒し、やることがなくなったので「だらだらしながら定住先を見つけよう」ついでに伴侶も見つかるといいなとか思いながらスローライフを目指す。 誤字脱字や話のおかしな点について何か有れば教えて下さい。また感想待ってます。返信できるかわかりませんが、極力返します。 また今まで感想を却下してしまった皆さんすいません。 僕は豆腐メンタルなのでマイナスのことの感想は控えて頂きたいです。 不定期投稿になります、週に一回は投稿したいと思います。お待たせして申し訳ございません。 他作品はストックもかなり有りますので、そちらで回したいと思います

平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。  応援していただけたら執筆の励みになります。 《俺、貸します!》 これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ) ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非! 「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」 この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。 しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。 レベル35と見せかけているが、本当は350。 水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。 あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。 それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。 リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。 その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。 あえなく、追放されてしまう。 しかし、それにより制限の消えたヨシュア。 一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。 その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。 まさに、ヨシュアにとっての天職であった。 自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。 生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。 目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。 元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。 そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。 一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。 ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。 そのときには、もう遅いのであった。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

処理中です...