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第一部
その351 久しぶりの冒険者ギルド
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コストがかかってしょうがない【罪と罰】ではあるが、別にそれが駄目かと言ったらそうではない。
栽培している聖薬草にも余剰分がある。そして聖水路だってある。少しの生産ではあるが、有効的に使えるだろう。
そんな事を考えながら、俺は冒険者ギルドへやってきた。
「ミケラルドさんっ!」
バッと立ち上がり俺を出迎えたのは、小さなギルド受付員ネム。
受付から離れ、トコトコと向かってくるネムに、俺は妙な懐かしさを覚えた。
思えば一週間以上もギルドに来なかった事なんてなかったかもしれない。
だからこそ、そんな感覚が俺にやってきたのだろう。
「どう? 何か物騒な話ある?」
嬉しそうなネムにそう聞くと、ネムは思い出したように言った。
「あ、あります!」
「へ?」
何だかんだミナジリ共和国は平和な国である。
冒険者の質こそ低いが、その分モンスターのランクが低い。
しかし、極端に強い冒険者がいるのも事実だ。
サッチや剣聖レミリアは、新人冒険者では対処が出来ない依頼を受け、適宜消化している。リィたんもまたそうだし、俺だってそうだ。
そんなミナジリ共和国の冒険者ギルドに物騒な話が?
「ミケラルドさんが来てからでいいって話だったんですけど……」
「ん?」
「ディックさんが呼んでます」
なるほど、それは物騒な話だ。
「すごい顔です……」
悲壮感漂うであろう俺に、ネムが憐憫の目を向ける。
「ご武運を」
◇◆◇ ◆◇◆
「って、ネムに言われてここに来た私の覚悟と思い、わかって頂けるでしょうか?」
「はっはっはっは! そいつはすまない事をしたな」
豪快に笑ったディックに、俺のジト目は効かないようだ。しかしそうだよな、ジト目は可愛い女の子がやって始めて効力を発揮するものだ。俺なんかがやるなんて烏滸がましかったのだ。
「それで、一体何のお話です?」
俺が聞くと、ディックが待っていましたと言わんばかりにテーブルの上へ一枚のマジックスクロールを置いた。
「これだ」
「これは……」
最早条件反射ではあるが、俺はいつの間にかそのマジックスクロールに解析を発動していた。
「何だ、私が作った【テレフォン】じゃないですか」
ギルドに渡してるマイク型ではなく、マジックスクロールを出してくるとはディックも人が悪い。わざわざプライベート用にあげたやつを持ってくるとはな。というか、それで俺を呼べばよかったのに?
……まぁ、それがディックなりの気遣いってやつか。
そんな事を考えていると、ディックがニヤリと笑った。
「採用だ」
「へ?」
「アーダインのおっさん、いや、ギルドの連中があの戦争を見て首を縦に振った」
「え?」
「驚くのも無理はない。ネマワシしようにも頑固な職員ばかりだからな、冒険者ギルドってのは。だが、それもあの戦争で変わった。ギルドの上層部は全面的にミケラルドを信じるってこった」
「いや、驚いてるのはそこじゃないです」
「あん?」
「アーダインのおっさんって……ディックさんもかなりのおっさんじゃないですか」
「なっ!? ア、アーダインのおっさんは俺が現役の頃からおっさんだったんだよ!」
それとディックがおっさんな事はまったく関係ないと思うミケラルドである。
「それじゃあようやく【テレフォン】が正式採用されるって事ですね。早速マイク型を各国のミケラルド商店から、主要な冒険者ギルドに運ばせますね」
「おう、助かる。そこからはそのギルドが分配するから問題ない。それとな……おい、嫌そうな顔するな」
おかしい、俺の顔は無表情だったはずなのに。
一つの用件で済むとは思っていなかったが、「こちらの方が本題だ」という顔を向けられると、自然とそうなってしまうものか。
「アーダインから早速これに連絡があった」
「何と?」
「『準備は整った。来い』と」
「あー、アレか」
「何だよ、あのおっさん俺には教えてくれなかったぞ?」
「いや、高ランク冒険者のパーティに付き添って、冒険者に紛れてる闇ギルドメンバーを炙り出すって依頼がありましてね」
「マジか」
「マジです」
「いよいよ重い腰を上げたって事か……!」
まぁ、リーガルまでは情報は回って来ないよな。
冒険者を聖騎士学校に入れるなんて話は。
嘘を言わず真実を伝える。俺がディックに言えるのはここまでだろう。
高ランクの冒険者は内々で呼ばれ、箝口令を敷かれるだろうし、何なら契約もするだろうしな。
その夜俺は、マイク型の【テレフォン】を法王国、シェルフ、そしてリプトゥア国とガンドフへ送った。
リプトゥア国だけはまだ時期ではないためミケラルド商店を開いていないが、ガンドフでは既にミケラルド商店が稼働し始めている。客の入りも、クロード新聞も中々評判らしい。
さて、明日は久しぶりの法王国だ。
ランクSダンジョンに潜る冒険者たちの付き添い選別が冒険者ギルドからの依頼。
今回はギルドの許しもあり、SSの俺が付き添う事で、ランクAの冒険者もそこに潜る事が出来る。
当然、その中にはあのパーティも含まれるだろう。
聖女アリス率いる――オリハルコンズが。
栽培している聖薬草にも余剰分がある。そして聖水路だってある。少しの生産ではあるが、有効的に使えるだろう。
そんな事を考えながら、俺は冒険者ギルドへやってきた。
「ミケラルドさんっ!」
バッと立ち上がり俺を出迎えたのは、小さなギルド受付員ネム。
受付から離れ、トコトコと向かってくるネムに、俺は妙な懐かしさを覚えた。
思えば一週間以上もギルドに来なかった事なんてなかったかもしれない。
だからこそ、そんな感覚が俺にやってきたのだろう。
「どう? 何か物騒な話ある?」
嬉しそうなネムにそう聞くと、ネムは思い出したように言った。
「あ、あります!」
「へ?」
何だかんだミナジリ共和国は平和な国である。
冒険者の質こそ低いが、その分モンスターのランクが低い。
しかし、極端に強い冒険者がいるのも事実だ。
サッチや剣聖レミリアは、新人冒険者では対処が出来ない依頼を受け、適宜消化している。リィたんもまたそうだし、俺だってそうだ。
そんなミナジリ共和国の冒険者ギルドに物騒な話が?
「ミケラルドさんが来てからでいいって話だったんですけど……」
「ん?」
「ディックさんが呼んでます」
なるほど、それは物騒な話だ。
「すごい顔です……」
悲壮感漂うであろう俺に、ネムが憐憫の目を向ける。
「ご武運を」
◇◆◇ ◆◇◆
「って、ネムに言われてここに来た私の覚悟と思い、わかって頂けるでしょうか?」
「はっはっはっは! そいつはすまない事をしたな」
豪快に笑ったディックに、俺のジト目は効かないようだ。しかしそうだよな、ジト目は可愛い女の子がやって始めて効力を発揮するものだ。俺なんかがやるなんて烏滸がましかったのだ。
「それで、一体何のお話です?」
俺が聞くと、ディックが待っていましたと言わんばかりにテーブルの上へ一枚のマジックスクロールを置いた。
「これだ」
「これは……」
最早条件反射ではあるが、俺はいつの間にかそのマジックスクロールに解析を発動していた。
「何だ、私が作った【テレフォン】じゃないですか」
ギルドに渡してるマイク型ではなく、マジックスクロールを出してくるとはディックも人が悪い。わざわざプライベート用にあげたやつを持ってくるとはな。というか、それで俺を呼べばよかったのに?
……まぁ、それがディックなりの気遣いってやつか。
そんな事を考えていると、ディックがニヤリと笑った。
「採用だ」
「へ?」
「アーダインのおっさん、いや、ギルドの連中があの戦争を見て首を縦に振った」
「え?」
「驚くのも無理はない。ネマワシしようにも頑固な職員ばかりだからな、冒険者ギルドってのは。だが、それもあの戦争で変わった。ギルドの上層部は全面的にミケラルドを信じるってこった」
「いや、驚いてるのはそこじゃないです」
「あん?」
「アーダインのおっさんって……ディックさんもかなりのおっさんじゃないですか」
「なっ!? ア、アーダインのおっさんは俺が現役の頃からおっさんだったんだよ!」
それとディックがおっさんな事はまったく関係ないと思うミケラルドである。
「それじゃあようやく【テレフォン】が正式採用されるって事ですね。早速マイク型を各国のミケラルド商店から、主要な冒険者ギルドに運ばせますね」
「おう、助かる。そこからはそのギルドが分配するから問題ない。それとな……おい、嫌そうな顔するな」
おかしい、俺の顔は無表情だったはずなのに。
一つの用件で済むとは思っていなかったが、「こちらの方が本題だ」という顔を向けられると、自然とそうなってしまうものか。
「アーダインから早速これに連絡があった」
「何と?」
「『準備は整った。来い』と」
「あー、アレか」
「何だよ、あのおっさん俺には教えてくれなかったぞ?」
「いや、高ランク冒険者のパーティに付き添って、冒険者に紛れてる闇ギルドメンバーを炙り出すって依頼がありましてね」
「マジか」
「マジです」
「いよいよ重い腰を上げたって事か……!」
まぁ、リーガルまでは情報は回って来ないよな。
冒険者を聖騎士学校に入れるなんて話は。
嘘を言わず真実を伝える。俺がディックに言えるのはここまでだろう。
高ランクの冒険者は内々で呼ばれ、箝口令を敷かれるだろうし、何なら契約もするだろうしな。
その夜俺は、マイク型の【テレフォン】を法王国、シェルフ、そしてリプトゥア国とガンドフへ送った。
リプトゥア国だけはまだ時期ではないためミケラルド商店を開いていないが、ガンドフでは既にミケラルド商店が稼働し始めている。客の入りも、クロード新聞も中々評判らしい。
さて、明日は久しぶりの法王国だ。
ランクSダンジョンに潜る冒険者たちの付き添い選別が冒険者ギルドからの依頼。
今回はギルドの許しもあり、SSの俺が付き添う事で、ランクAの冒険者もそこに潜る事が出来る。
当然、その中にはあのパーティも含まれるだろう。
聖女アリス率いる――オリハルコンズが。
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