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第一部
その262 雷龍シュガリオン
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「ガァアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!」
世界を揺るがすかのような巨大な咆哮。
「しゃらくさい! おぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
それに対しリィたんがハルバードを振り払って叫ぶ。
大気がバチバチと音を発し、俺とジェイルの緊張を高める。
「なるほど、五色の天災か……っ!」
ジェイルの言葉通り、雷龍シュガリオンがミナジリ共和国へやって来ていたらと思うとゾッとする。龍族の咆哮……下手すればこれだけで民が死ぬ。
それだけの威力を有している事は理解出来た。俺としてはとても理解したくないが。
直後、リィたんが跳んだ。
振りかぶられたハルバードと巨大な前脚。
かち合った一瞬、弾ける音の衝撃波はまるで突風だった。
だが、リィたんは言っていた。
――――なるほど、私がここにいるからこその相手という事か……!
水を司る龍では雷龍相手は分が悪い。
リィたんだけに任せる訳にはいかない。
そう、俺たちは助け合ってこの場を乗り切らなくちゃいけない。
「「竜剣、咆哮っ!!」」
俺とジェイルによる重き飛剣。
飛ぶ斬撃は雷龍シュガリオンを的確に狙うも、
「ふんっ!」
それは雷龍の尻尾によって簡単に弾かれてしまった。
幾度もぶつかり合うリィたんとシュガリオンの攻撃は、瞬く間に周囲の地形を変えていく。
「ミック、行くぞ!」
「勿論っ!」
ジェイルと共に駆ける俺。
「竜剣、剛翼っ!」
ジェイルがシュガリオンの上部から、
「竜剣、鉤爪っ!」
俺はシュガリオンの下部から攻撃する。
――――がしかし、俺の攻撃では傷一つ付かなかったのだ。
「っ! ハァアアアアアアアアアアアッ!!」
次の瞬間、ジェイルが吼えた。
ジェイルを取り巻く魔力の質が変わる。
なるほど、これがジェイルの【覚醒】か。
直後、ジェイルの一撃はそのまま上部から鱗の一枚を弾き飛ばしたのだ。
「さっすがウチのトカゲ師匠!」
「聞かなかった事にしておいてやる!」
「鱗一枚ではしゃぐな下郎っ!」
シュガリオンが苛立ちめいた声で威嚇し、尻尾を揺らす。
「くっ、ぐぉおおっ!?」
尻尾はジェイルを捉え、吹き飛んだ姿はまるで水面に石が跳ねるかのようだった。
「ジェイルさん!」
跳んでジェイルを追う俺の背後から、シュガリオンの尻尾が動く。
「行かせるとでも思ったか?」
「くっ! 全! 開! だっ!!」
この一瞬に対し、的確な能力なんてあるはずもなかった。
だから俺は全ての能力を発動し、打刀でシュガリオンの尻尾を捉えた。
ガキンとぶつかった衝撃はかつてないものだった。
それは、リィたんとの訓練がまだ最終段階にない事を物語っているかのようだった。
何とか耐えた。息も絶え絶えになりながらもギリギリで受け切った。
着地した俺は、脱臼した腕をハメながらジェイルに近づく。
「ジェイルさん!」
「ミック、無事か?」
倒れ、不動の状態でジェイルは俺を気遣った。
「どう見てもアナタのが重症だよ!」
「うむ、肋骨に肺、それと胃だな。その他骨が十数本折れている」
俺は【ダークヒール】を発動しながらジェイルに補助魔法をかけていく。
「これでまた……戦える」
「まだ戦える、の間違いでは?」
「そうとも言うな」
絶望とも言える状況下で俺たちがこんな軽口を言い合えるのは、きっと俺たちのこれまでがあったからだろう。
再び駆け始めた俺たちの間に……リィたんが吹き飛んでくる。
「「っ! キャ、キャッチだ!」」
二人でリィたんを受け止め、更に吹き飛びながらも何とか彼女を守り切る。
「すまんミック! 援護を!」
「おう! 傷一つ! いけそう!?」
「何とかやってみるさ!」
いつもは頼もしいリィたんの言葉が、どこか自信に欠けていた。
俺は勿論、ジェイルもそう感じた事だろう。
だが、そんな事当たり前なのだ。相手はリィたんと同格の雷龍。
たとえ三人がかりと言えど、戦力差があるとは言えない。
なるほど、雷龍は剣鬼のように戦闘が大好きみたいだな。
嘆きの渓谷で隠居していたリィたんとは戦力そのものに差がある。
俺たち二人でその戦力差を埋める。これが出来るかどうかが鍵だ。
俺はリィたんに補助魔法を掛け、更に回復魔法を掛けた。
「三位一体か、面白い! 来い!」
行きたくないが行くしかない。帰ってベッドに入って布団にくるまりたいが行くしかないのだ。俺とジェイルが駆け、リィたんが後方で力を溜める。
「「竜剣、稲妻っ!!」」
「遅い! 本物の稲妻を見せてやろう!」
竜剣の中でも最速の剣は、文字通り稲妻の如き攻撃により簡単に跳ね返されてしまう。吹き飛ばされた俺たちの間を抜けるのはチームミナジリ最強の矛――リィたんの一撃。
「ハァアアアアアアアッ!!!!」
「ぬるいわぁっ!!」
シュガリオンはそんなリィたんのハルバードを噛みとらえ、玩具の如く振り払う。
武器を奪われてしまったと思ったリィたんだったが、そうじゃなかった。
あれは作戦!?
「本命はコッチだっ!」
握られた硬き拳が雷龍シュガリオンの顎を打つ。
「っ!?」
だが、打ち抜くかと思った瞬間、リィたんの拳はピタリと止まってしまったのだ。
「……ふっ、狙いはよかったぞ、狙いはな?」
あんなのどうやって倒すんだよ……。
世界を揺るがすかのような巨大な咆哮。
「しゃらくさい! おぉおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
それに対しリィたんがハルバードを振り払って叫ぶ。
大気がバチバチと音を発し、俺とジェイルの緊張を高める。
「なるほど、五色の天災か……っ!」
ジェイルの言葉通り、雷龍シュガリオンがミナジリ共和国へやって来ていたらと思うとゾッとする。龍族の咆哮……下手すればこれだけで民が死ぬ。
それだけの威力を有している事は理解出来た。俺としてはとても理解したくないが。
直後、リィたんが跳んだ。
振りかぶられたハルバードと巨大な前脚。
かち合った一瞬、弾ける音の衝撃波はまるで突風だった。
だが、リィたんは言っていた。
――――なるほど、私がここにいるからこその相手という事か……!
水を司る龍では雷龍相手は分が悪い。
リィたんだけに任せる訳にはいかない。
そう、俺たちは助け合ってこの場を乗り切らなくちゃいけない。
「「竜剣、咆哮っ!!」」
俺とジェイルによる重き飛剣。
飛ぶ斬撃は雷龍シュガリオンを的確に狙うも、
「ふんっ!」
それは雷龍の尻尾によって簡単に弾かれてしまった。
幾度もぶつかり合うリィたんとシュガリオンの攻撃は、瞬く間に周囲の地形を変えていく。
「ミック、行くぞ!」
「勿論っ!」
ジェイルと共に駆ける俺。
「竜剣、剛翼っ!」
ジェイルがシュガリオンの上部から、
「竜剣、鉤爪っ!」
俺はシュガリオンの下部から攻撃する。
――――がしかし、俺の攻撃では傷一つ付かなかったのだ。
「っ! ハァアアアアアアアアアアアッ!!」
次の瞬間、ジェイルが吼えた。
ジェイルを取り巻く魔力の質が変わる。
なるほど、これがジェイルの【覚醒】か。
直後、ジェイルの一撃はそのまま上部から鱗の一枚を弾き飛ばしたのだ。
「さっすがウチのトカゲ師匠!」
「聞かなかった事にしておいてやる!」
「鱗一枚ではしゃぐな下郎っ!」
シュガリオンが苛立ちめいた声で威嚇し、尻尾を揺らす。
「くっ、ぐぉおおっ!?」
尻尾はジェイルを捉え、吹き飛んだ姿はまるで水面に石が跳ねるかのようだった。
「ジェイルさん!」
跳んでジェイルを追う俺の背後から、シュガリオンの尻尾が動く。
「行かせるとでも思ったか?」
「くっ! 全! 開! だっ!!」
この一瞬に対し、的確な能力なんてあるはずもなかった。
だから俺は全ての能力を発動し、打刀でシュガリオンの尻尾を捉えた。
ガキンとぶつかった衝撃はかつてないものだった。
それは、リィたんとの訓練がまだ最終段階にない事を物語っているかのようだった。
何とか耐えた。息も絶え絶えになりながらもギリギリで受け切った。
着地した俺は、脱臼した腕をハメながらジェイルに近づく。
「ジェイルさん!」
「ミック、無事か?」
倒れ、不動の状態でジェイルは俺を気遣った。
「どう見てもアナタのが重症だよ!」
「うむ、肋骨に肺、それと胃だな。その他骨が十数本折れている」
俺は【ダークヒール】を発動しながらジェイルに補助魔法をかけていく。
「これでまた……戦える」
「まだ戦える、の間違いでは?」
「そうとも言うな」
絶望とも言える状況下で俺たちがこんな軽口を言い合えるのは、きっと俺たちのこれまでがあったからだろう。
再び駆け始めた俺たちの間に……リィたんが吹き飛んでくる。
「「っ! キャ、キャッチだ!」」
二人でリィたんを受け止め、更に吹き飛びながらも何とか彼女を守り切る。
「すまんミック! 援護を!」
「おう! 傷一つ! いけそう!?」
「何とかやってみるさ!」
いつもは頼もしいリィたんの言葉が、どこか自信に欠けていた。
俺は勿論、ジェイルもそう感じた事だろう。
だが、そんな事当たり前なのだ。相手はリィたんと同格の雷龍。
たとえ三人がかりと言えど、戦力差があるとは言えない。
なるほど、雷龍は剣鬼のように戦闘が大好きみたいだな。
嘆きの渓谷で隠居していたリィたんとは戦力そのものに差がある。
俺たち二人でその戦力差を埋める。これが出来るかどうかが鍵だ。
俺はリィたんに補助魔法を掛け、更に回復魔法を掛けた。
「三位一体か、面白い! 来い!」
行きたくないが行くしかない。帰ってベッドに入って布団にくるまりたいが行くしかないのだ。俺とジェイルが駆け、リィたんが後方で力を溜める。
「「竜剣、稲妻っ!!」」
「遅い! 本物の稲妻を見せてやろう!」
竜剣の中でも最速の剣は、文字通り稲妻の如き攻撃により簡単に跳ね返されてしまう。吹き飛ばされた俺たちの間を抜けるのはチームミナジリ最強の矛――リィたんの一撃。
「ハァアアアアアアアッ!!!!」
「ぬるいわぁっ!!」
シュガリオンはそんなリィたんのハルバードを噛みとらえ、玩具の如く振り払う。
武器を奪われてしまったと思ったリィたんだったが、そうじゃなかった。
あれは作戦!?
「本命はコッチだっ!」
握られた硬き拳が雷龍シュガリオンの顎を打つ。
「っ!?」
だが、打ち抜くかと思った瞬間、リィたんの拳はピタリと止まってしまったのだ。
「……ふっ、狙いはよかったぞ、狙いはな?」
あんなのどうやって倒すんだよ……。
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