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第一部
その231 激闘
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「ほう、その歳で超回復まで使えるとは驚きだな」
「ダークヒールを使えば……元通りです」
「ふふふふ、顔はそう言っていないが?」
確かにその通りだ。
体内に負ったダメージは回復出来ても、今だ鈍痛が残っている感じだ。
更には【恐怖耐性】でもカバーしようがないこの震え。
圧倒的強者との対峙。この恐怖はいつ以来だろうか。
そうだ、おそらくあの時だ。まだリィたんが仲間になってなかった時、水龍リバイアタンと対峙した時。
あの時切り抜けたトンチはもう使えない。
何故なら相手はスパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル。
俺が憎くて憎くてたまらないあのスパニッシュなのだから。
こればかりは命懸け。ジェイルとリィたんが手を出すことはない。
何故ならこいつは俺が超えるべき相手。超えなければいけない相手だからだ。
その話をした時、ジェイルは黙って、リィたんは笑って応えてくれた。
だから俺は、俺の我儘に応じてくれた彼らに、応えなくてはいけないんだ。
「今度は、気を失うだけではすまないかもしれないな」
「【外装強化】」
「まだ特殊能力を残していたか」
「【外装超強化】」
「がしかし気になる」
「【脚腕同調】」
「この短期間でどうやってそれ程の能力を身につけた?」
「【突進力】」
「っ! いや、それは【特殊能力】ではないな! 【固有能力】!?」
「……【超突進力】!」
「ちぃ! トールトルネイド!」
雷を纏った巨大な竜巻に飛び込んだ俺は、打刀を抜き叫ぶ。
「竜剣、竜巻!」
「馬鹿な!? 何故雷が効かぬ!?」
雷魔法【リチャージ】により、雷系の魔法を受ければ、それは全て俺の魔力へと変換される。
「おぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「くっ! 更なる力を残していただと!?」
それを魔力還元する事で、俺の力がスパニッシュに追いつく。
「ぐっ!? 何だ!? 腕が!? こ、これは聖なる力!?」
付与により【聖加護】を施した打刀が発光する。
「馬鹿な、それは勇者の剣!? しかしそれは今……! いやそうではない!」
「そう、何故私がこれを扱えるか。問題はそこですよね……はっ!」
「くっ! 【ダークブースター】!」
「……【ダークブースター】!」
「何故貴様が【ダークブースター】を!?」
【解析】を発動し、【ダークブースター】の仕組みが手に取るようにわかる。だが、それを教えてやる程、俺は間抜けじゃない。
「このっ!」
また風雷の双手! だが、こちらも間もなく解析が終わる。
「【風雷剣】!」
雷の渦を纏う俺の打刀が、スパニッシュの拳にぶつかる。
「こ、小癪なっ!」
遂に拮抗を見せた互いの一撃に、スパニッシュが焦りを見せる。
「ならばこれはどうだ!」
俺の周囲に闇色の球体が放出される。
スパニッシュは一度ニヤリと笑うと、その球体へ向かって飛び込んだのだ。
悪寒――最初に感じたのはソレだった。【危険察知】が反応し、背筋を凍らせる。
瞬間、俺は戦場から姿を消したのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
「何やってるの、ミック?」
「あ~~~……死ぬかと思った」
「もしかして……また死んじゃうような事してたの?」
「いや、そんな事ないよ……ナタリー」
「そう、ならいいんだけど、シェンド店に何か用があったんじゃないの?」
「いや……咄嗟に転移したから慣れたここに飛んじゃっただけ。すぐ戻るよ。あ、今日は夕飯いらないから」
「あ、ちょっとミック! ちょ――――」
――――魔族四天王の攻撃をかわすんだ。国を跨いでかわしても別に問題ないだろう。
戦場から逃げたのではない。これは戦略的回避である。
そう自分に言い聞かせながら、俺はリィたんが首から下げていたアクセサリーから出現する。
「随分と大層な回避行動だったなミック」
「一歩間違ってたら首が飛んでたよ」
「奴の【ゾーン】は厄介だ。注意しろ」
「うん、一回で何となくだけど魔法の効果はわかったから」
「ならばいい。ふん!」
言いながらリィたんは、ハルバードを振るいスパニッシュへの道を切り開いた。
苛立つスパニッシュが俺を捉えると、俺たちは再び駆けた。
「貴様! 一体何をした!?」
「ただの回避行動ですよ。もしかして見えませんでした?」
「嘗めた口を!」
再び飛ばされる【ゾーン】。
これは闇魔法か。【ゾーン】の中に身を投じる事で他の【ゾーン】から出現する、簡略瞬間転移という感じの魔法だろう。種がわかればこちらも対処出来る。
必要なのは【嗅覚】、【超嗅覚】、【超視覚】、【超感覚】、そして【散眼】。魔力の揺らぎを鼻で、目で、肌で感じろ。そこに奴が……スパニッシュがいる。
「……っ! そこだ!」
「なっ!?」
両腕で俺の一撃を受け、後方へ飛ばされるスパニッシュが睨む。
だが、次の瞬間俺はスパニッシュに追い付いていた。
「これは【瞬歩】か!?」
「ぬん!」
【怪力】を発動して振り下ろした一撃が、スパニッシュの身体を大地に埋める。
直後、大地から飛び出たスパニッシュが、風魔法【エアスライス】を放って俺を牽制した。
俺は近くのドッグウォーリアの死体を持ち上げ、それを防ぐ。
「はぁはぁはぁ……貴様……一体どれだけの能力を身につけた……っ!?」
「さぁ? まだまだ増える予定があるので、全部身に付けてからもう一度聞いてください」
「どこまでも嘗め腐った奴だ! っ! 何をしている!?」
俺はスパニッシュによって切り刻まれたドッグウォーリアの死体から、一滴のソレを指先に付けた。
そう、俺は新たなる能力を得るのだ。
「ダークヒールを使えば……元通りです」
「ふふふふ、顔はそう言っていないが?」
確かにその通りだ。
体内に負ったダメージは回復出来ても、今だ鈍痛が残っている感じだ。
更には【恐怖耐性】でもカバーしようがないこの震え。
圧倒的強者との対峙。この恐怖はいつ以来だろうか。
そうだ、おそらくあの時だ。まだリィたんが仲間になってなかった時、水龍リバイアタンと対峙した時。
あの時切り抜けたトンチはもう使えない。
何故なら相手はスパニッシュ・ヴァンプ・ワラキエル。
俺が憎くて憎くてたまらないあのスパニッシュなのだから。
こればかりは命懸け。ジェイルとリィたんが手を出すことはない。
何故ならこいつは俺が超えるべき相手。超えなければいけない相手だからだ。
その話をした時、ジェイルは黙って、リィたんは笑って応えてくれた。
だから俺は、俺の我儘に応じてくれた彼らに、応えなくてはいけないんだ。
「今度は、気を失うだけではすまないかもしれないな」
「【外装強化】」
「まだ特殊能力を残していたか」
「【外装超強化】」
「がしかし気になる」
「【脚腕同調】」
「この短期間でどうやってそれ程の能力を身につけた?」
「【突進力】」
「っ! いや、それは【特殊能力】ではないな! 【固有能力】!?」
「……【超突進力】!」
「ちぃ! トールトルネイド!」
雷を纏った巨大な竜巻に飛び込んだ俺は、打刀を抜き叫ぶ。
「竜剣、竜巻!」
「馬鹿な!? 何故雷が効かぬ!?」
雷魔法【リチャージ】により、雷系の魔法を受ければ、それは全て俺の魔力へと変換される。
「おぉおおおおおおおおおおおおっ!」
「くっ! 更なる力を残していただと!?」
それを魔力還元する事で、俺の力がスパニッシュに追いつく。
「ぐっ!? 何だ!? 腕が!? こ、これは聖なる力!?」
付与により【聖加護】を施した打刀が発光する。
「馬鹿な、それは勇者の剣!? しかしそれは今……! いやそうではない!」
「そう、何故私がこれを扱えるか。問題はそこですよね……はっ!」
「くっ! 【ダークブースター】!」
「……【ダークブースター】!」
「何故貴様が【ダークブースター】を!?」
【解析】を発動し、【ダークブースター】の仕組みが手に取るようにわかる。だが、それを教えてやる程、俺は間抜けじゃない。
「このっ!」
また風雷の双手! だが、こちらも間もなく解析が終わる。
「【風雷剣】!」
雷の渦を纏う俺の打刀が、スパニッシュの拳にぶつかる。
「こ、小癪なっ!」
遂に拮抗を見せた互いの一撃に、スパニッシュが焦りを見せる。
「ならばこれはどうだ!」
俺の周囲に闇色の球体が放出される。
スパニッシュは一度ニヤリと笑うと、その球体へ向かって飛び込んだのだ。
悪寒――最初に感じたのはソレだった。【危険察知】が反応し、背筋を凍らせる。
瞬間、俺は戦場から姿を消したのだった。
◇◆◇ ◆◇◆
「何やってるの、ミック?」
「あ~~~……死ぬかと思った」
「もしかして……また死んじゃうような事してたの?」
「いや、そんな事ないよ……ナタリー」
「そう、ならいいんだけど、シェンド店に何か用があったんじゃないの?」
「いや……咄嗟に転移したから慣れたここに飛んじゃっただけ。すぐ戻るよ。あ、今日は夕飯いらないから」
「あ、ちょっとミック! ちょ――――」
――――魔族四天王の攻撃をかわすんだ。国を跨いでかわしても別に問題ないだろう。
戦場から逃げたのではない。これは戦略的回避である。
そう自分に言い聞かせながら、俺はリィたんが首から下げていたアクセサリーから出現する。
「随分と大層な回避行動だったなミック」
「一歩間違ってたら首が飛んでたよ」
「奴の【ゾーン】は厄介だ。注意しろ」
「うん、一回で何となくだけど魔法の効果はわかったから」
「ならばいい。ふん!」
言いながらリィたんは、ハルバードを振るいスパニッシュへの道を切り開いた。
苛立つスパニッシュが俺を捉えると、俺たちは再び駆けた。
「貴様! 一体何をした!?」
「ただの回避行動ですよ。もしかして見えませんでした?」
「嘗めた口を!」
再び飛ばされる【ゾーン】。
これは闇魔法か。【ゾーン】の中に身を投じる事で他の【ゾーン】から出現する、簡略瞬間転移という感じの魔法だろう。種がわかればこちらも対処出来る。
必要なのは【嗅覚】、【超嗅覚】、【超視覚】、【超感覚】、そして【散眼】。魔力の揺らぎを鼻で、目で、肌で感じろ。そこに奴が……スパニッシュがいる。
「……っ! そこだ!」
「なっ!?」
両腕で俺の一撃を受け、後方へ飛ばされるスパニッシュが睨む。
だが、次の瞬間俺はスパニッシュに追い付いていた。
「これは【瞬歩】か!?」
「ぬん!」
【怪力】を発動して振り下ろした一撃が、スパニッシュの身体を大地に埋める。
直後、大地から飛び出たスパニッシュが、風魔法【エアスライス】を放って俺を牽制した。
俺は近くのドッグウォーリアの死体を持ち上げ、それを防ぐ。
「はぁはぁはぁ……貴様……一体どれだけの能力を身につけた……っ!?」
「さぁ? まだまだ増える予定があるので、全部身に付けてからもう一度聞いてください」
「どこまでも嘗め腐った奴だ! っ! 何をしている!?」
俺はスパニッシュによって切り刻まれたドッグウォーリアの死体から、一滴のソレを指先に付けた。
そう、俺は新たなる能力を得るのだ。
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