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第一部
その94 広がる視野
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冒険者ギルドとは魔族以外の国であればどこにでもあるらしく、エルフの国であるシェルフでもそれは同じ事だった。
リーガル王家からリーガルの冒険者ギルドに依頼し、リーガルの冒険者ギルドからシェルフの冒険者ギルドに連絡。流石に情報の値打ちを知っているのか、冒険者ギルドのギルド通信を使うと、白金貨十枚が飛ぶのだとか。いやはや、テレパシーの重要度がとてもよくわかるな。
ミケラルド商店四号店の店頭にクロードが立ってから一週間、俺とクロードは、マッキリーの町、シェンドの町を回り、あらゆる場所でエルフの存在を示した。
商人ギルドに許可をとり、サマリア侯爵領での街頭販売も行い、リーガル国でのクロードの知名度は確固たるものとなった。
「で、どうしたんです。ディックさんっ♪」
俺は弾んだ声で首都リーガルのギルドマスターであるディックに言った。
ディックは隣のニコル同様ジトッとした目で俺を見る。
「『どうしたんです』じゃねぇんだよ。どうなってんだよ、おたくのエルフは?」
「はて?」
「お前ならわかるぞ? 冒険者ランクAのお前なら。だけどな。一週間で国を一周出来る程、あのエルフの体術は練達してねぇ。それくらい俺でもわかるぜ?」
「あぁ、私が運んだって事にしておいてください。私なら可能なんでしょう?」
「ミケラルド、お前、最近なんか雑じゃねぇか?」
「わかります?」
俺はニコニコとディックに言い、そのディックはこめかみを掻きながら溜め息を吐く。
「まぁ、それだけ隠す事がなくなってきたって事か」
「流石ディックさんです」
「或いは、隠す必要がなくなってきたって事かな?」
流石ディックだ。
実際、実力云々に関しては侯爵家との繋がり、リーガル王家との繋がりをアピールしてからは隠す必要がなくなってきた。
当然、能力については秘匿とするところは多いが、漏れる心配はないし、どんどん使っていきたいと思っている。
さて、今回は俺が冒険者ギルドに行ったのではなく、ディックとニコルが四号店の応接室までやって来たのだ。ドマークを見習い、ちゃんと紅茶は出した。まぁ、入れたのは俺だけどな。
「それで、今回はどういったご用件でしょう?」
「シェルフから返事がきた」
「という事は、ついにこちらにいらっしゃる日取りが?」
「あぁ、だから俺たちは陛下への報告の帰りでもある」
ブライアン王が先方の来る日を知ってないといけないのも事実だからな。優先順位としちゃ間違っちゃいない。都合の良い日を相手に伝え、向こうがその内のどれかを選び、指定し、やってくる。当たり前だが、これを疎かにしては外交問題になる。
王家の人間でないのであれば、本来こんな手続きも必要ないが、エルフ相手では、これはまだ必要な作業である。……まだな。これからそういうものも解消していきたい。というかしなくちゃいけないんだ。
「十日後、彼らはやってくる。彼らが欲しているのは魔導書五冊。用意出来るか?」
「倉庫に二百冊ほどありますよ」
「…………聞かなかった事にするぜ」
少しは驚きに慣れてくれたのだろうか。いや、違う。頭を抱え現実を直視する事を諦めた目をしている。なるほど、理解する事を拒否したか。
ニコルも表情こそ崩さないが動かない以上、考えを放棄していると見て間違いないだろう。
さて、どうしたものか。
聞きたい事もあるし、こちらから話題を振ってみるか。
「質問させて頂きたい点が一点あるのですが、よろしいですか?」
「……何だ?」
「そんな警戒しないでくださいよ。えっと、領地を持っている方……まぁつまり領主のいる土地って冒険者ギルドや商人ギルドってないですよね?」
「あぁ」
「領地にギルドを招致する事って難しいんですか?」
「いや、別に難しい事はない。ただ大体の領主様と折り合いがつかないだけさ。ギルドを置く事が全部が全部メリットになる訳じゃないしな。それに、貴族の方々は皆ギルドというものに縁遠い。ま、お前のおかげで最近じゃリーガル王家やサマリア侯爵家からちょくちょく依頼が来てるんだ。感謝はしてるぜ」
欲しい回答と少しずれてはいるが、ギルドを招けない訳ではないという事か。
ギルドは冒険者たちの生活基盤ともなる。そして、ギルドから依頼が入れば冒険者の懐が潤い、市場を回す。ミナジリの村にギルドを招致すれば、それだけ人間が溢れるという事だ。
こちらはミケラルド商店の儲けでギルドに依頼を出し、冒険者や商人を呼ぶこと、あわよくば定住させる事が出来れば、シェンドの町……いや、首都リーガルに負けない程の活気ある都にする事が出来る。
ギルドは慈善集団に近いところがある。儲けが-にならない限りは、ギルドを招致する事を視野に入れられる。悪くない。
後はシェルフから商人たちが来るのを待つだけ。
にしても十日後か。倉庫は疲れ知らずのリィたんの力業運搬で溢れかえりそうだし、一度皆で集まった方がいいかもしれないな。
今後のためにも。
リーガル王家からリーガルの冒険者ギルドに依頼し、リーガルの冒険者ギルドからシェルフの冒険者ギルドに連絡。流石に情報の値打ちを知っているのか、冒険者ギルドのギルド通信を使うと、白金貨十枚が飛ぶのだとか。いやはや、テレパシーの重要度がとてもよくわかるな。
ミケラルド商店四号店の店頭にクロードが立ってから一週間、俺とクロードは、マッキリーの町、シェンドの町を回り、あらゆる場所でエルフの存在を示した。
商人ギルドに許可をとり、サマリア侯爵領での街頭販売も行い、リーガル国でのクロードの知名度は確固たるものとなった。
「で、どうしたんです。ディックさんっ♪」
俺は弾んだ声で首都リーガルのギルドマスターであるディックに言った。
ディックは隣のニコル同様ジトッとした目で俺を見る。
「『どうしたんです』じゃねぇんだよ。どうなってんだよ、おたくのエルフは?」
「はて?」
「お前ならわかるぞ? 冒険者ランクAのお前なら。だけどな。一週間で国を一周出来る程、あのエルフの体術は練達してねぇ。それくらい俺でもわかるぜ?」
「あぁ、私が運んだって事にしておいてください。私なら可能なんでしょう?」
「ミケラルド、お前、最近なんか雑じゃねぇか?」
「わかります?」
俺はニコニコとディックに言い、そのディックはこめかみを掻きながら溜め息を吐く。
「まぁ、それだけ隠す事がなくなってきたって事か」
「流石ディックさんです」
「或いは、隠す必要がなくなってきたって事かな?」
流石ディックだ。
実際、実力云々に関しては侯爵家との繋がり、リーガル王家との繋がりをアピールしてからは隠す必要がなくなってきた。
当然、能力については秘匿とするところは多いが、漏れる心配はないし、どんどん使っていきたいと思っている。
さて、今回は俺が冒険者ギルドに行ったのではなく、ディックとニコルが四号店の応接室までやって来たのだ。ドマークを見習い、ちゃんと紅茶は出した。まぁ、入れたのは俺だけどな。
「それで、今回はどういったご用件でしょう?」
「シェルフから返事がきた」
「という事は、ついにこちらにいらっしゃる日取りが?」
「あぁ、だから俺たちは陛下への報告の帰りでもある」
ブライアン王が先方の来る日を知ってないといけないのも事実だからな。優先順位としちゃ間違っちゃいない。都合の良い日を相手に伝え、向こうがその内のどれかを選び、指定し、やってくる。当たり前だが、これを疎かにしては外交問題になる。
王家の人間でないのであれば、本来こんな手続きも必要ないが、エルフ相手では、これはまだ必要な作業である。……まだな。これからそういうものも解消していきたい。というかしなくちゃいけないんだ。
「十日後、彼らはやってくる。彼らが欲しているのは魔導書五冊。用意出来るか?」
「倉庫に二百冊ほどありますよ」
「…………聞かなかった事にするぜ」
少しは驚きに慣れてくれたのだろうか。いや、違う。頭を抱え現実を直視する事を諦めた目をしている。なるほど、理解する事を拒否したか。
ニコルも表情こそ崩さないが動かない以上、考えを放棄していると見て間違いないだろう。
さて、どうしたものか。
聞きたい事もあるし、こちらから話題を振ってみるか。
「質問させて頂きたい点が一点あるのですが、よろしいですか?」
「……何だ?」
「そんな警戒しないでくださいよ。えっと、領地を持っている方……まぁつまり領主のいる土地って冒険者ギルドや商人ギルドってないですよね?」
「あぁ」
「領地にギルドを招致する事って難しいんですか?」
「いや、別に難しい事はない。ただ大体の領主様と折り合いがつかないだけさ。ギルドを置く事が全部が全部メリットになる訳じゃないしな。それに、貴族の方々は皆ギルドというものに縁遠い。ま、お前のおかげで最近じゃリーガル王家やサマリア侯爵家からちょくちょく依頼が来てるんだ。感謝はしてるぜ」
欲しい回答と少しずれてはいるが、ギルドを招けない訳ではないという事か。
ギルドは冒険者たちの生活基盤ともなる。そして、ギルドから依頼が入れば冒険者の懐が潤い、市場を回す。ミナジリの村にギルドを招致すれば、それだけ人間が溢れるという事だ。
こちらはミケラルド商店の儲けでギルドに依頼を出し、冒険者や商人を呼ぶこと、あわよくば定住させる事が出来れば、シェンドの町……いや、首都リーガルに負けない程の活気ある都にする事が出来る。
ギルドは慈善集団に近いところがある。儲けが-にならない限りは、ギルドを招致する事を視野に入れられる。悪くない。
後はシェルフから商人たちが来るのを待つだけ。
にしても十日後か。倉庫は疲れ知らずのリィたんの力業運搬で溢れかえりそうだし、一度皆で集まった方がいいかもしれないな。
今後のためにも。
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