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第一部
その34 ダンジョン
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しかしカミナは、仮住まいであるクロード家の奥方エメラの友人である。
そんな立場のカミナを無下には出来ない。
俺はリィたんにテレパシーでそう伝え、仕方なく一緒にダンジョンに潜るという事になったのだ。
「ミケラルド様、ポーションはお持ちですか?」
「いや、出来ればダンジョンに潜る時はどれくらい使うのか教えてくれると助かる」
一般的な常識を吸収する事は悪い事じゃない。
むしろ、人界で稼ぐためには今後必要となるかもしれないからな。聞いておいて損はないだろう。
「そうですねぇ、後衛であれば十本、前衛であれば三本といったところでしょうか」
「後衛の方が使わないんじゃない?」
「えぇ、なので後衛が前衛の分も持つのです。前衛は動きが激しく、ポーションの瓶が割れてしまう事もありますので」
「つまり、後衛は荷物持ちも兼ねてるのか」
「当然、そこまで重くも出来ないので、戦闘に差し支えない範囲で、という事になります」
という事は、闇空間が使える俺は、他の冒険者より圧倒的に有利って事だな。
「回復系の特殊能力がある人がいても、ポーションの数は変わらないって事?」
「ミケラルド様はヒールを使えるのですか?」
「はい」
僧侶風の冒険者キッカさんから吸っちゃったやつだけどな。
「それでしたらポーションは半分の五本、残りは魔力回復薬――マナポーションを持つといいかもしれません。ヒールはポーションより回復効果が高いので、有用ですけど、魔力消費も激しいので」
それに関しては不安はないけどな。
「それ以外は?」
「マッピング用の羊皮紙やペン。インク、そして食料でしょう。でも、ポーション系以外でしたら、私が持ってますので、是非ご活用ください」
「おー、ありがとう」
「ふふふ、ミケラルド様のためですもの。当然ですっ♪」
うーむ、悪い人ではなさそうだが、なんとも肩身が狭くなるような呼ばれ方だ。
「このお店のポーションがお買い得です」
マッキリーの商業区へ赴いた俺とリィたんは、カミナに言われた通り、ポーションを買った。
ついでに近くの別の店で、リィたんのポーション用のポーチを購入し、ようやく俺たちはダンジョンの入り口までやって来たのだ。
依頼は冒険者ギルドで四件受けたため、最下層へ行けたとしたら相当潤うな。
ダンジョンは一組のパーティが並んでいたが、すぐに俺たちの番になった。
どうやら一組が入ると、しばらく入れなくなるそうだ。
一緒に入ってしまうと、次の階層に潜る時にまた一緒でなければ駄目なのだとか。
死んだ者に対しては、例外とか怖い話も聞いた。
「聖薬草と聖水って一回に取れる量が決まってるの?」
「えぇ、正確には同じタイミングにダンジョンに入ったパーティに対して決まった量が出現するそうです。これは、神様からの報酬と呼ばれています」
「ほぉ」
リィたんが目を見張る。
この世界で神の力や恩恵は大きいって事だな。
「さぁ、それじゃあ行きましょう!」
「おぅ」
「楽しみだな」
リィたんは、カミナに対して苦手意識がないようだが、いつもの調子で大丈夫なのか不安だ。
ダンジョンに入ると、早速モンスターが現れた。
「スケルトンね。打撃系の攻撃が有効です! ……え?」
とかカミナが言ってる間にリィたんがスケルトンを叩き壊した。
「やはりこの武器は私に合ってるな!」
ハルバード片手に楽しそうだな。
小枝の如く振り回すから確かにリィたんには合っているのだろう、が! カミナのキョトンとした顔を、俺はどうしたらいいだろう。
「今、一体何を……?」
「ん? 真っ直ぐ走ってこれを振り払っただけだ」
俺は目で追えたが、カミナにとっては異次元の動きだったようだ。
「す、凄いです! まさかこれ程とは……ぁ!?」
思わず口が滑ったみたいだな。
やっぱり俺たちの実力をある程度高く見積もっていたようだが、予想外だったようだ。
たった一回の戦闘で気付くって事は、カミナも中々の冒険者って事だな。
「ま、まさかミケラルド様もっ?」
「まぁ、あれくらいの動きなら」
「おぉ!」
「因みに、あのレベルの動きで冒険者ランクってどんなもんなの?」
「……うーん、わかりません。ランクS以上は未知の領域ですから。でも、ランクA以上なのは確実かと」
その話を聞き、リィたんはとても機嫌が良さそうだ。
魔族ですら恐れるんだから、リィたんはSSSランクだと思うけどな。
「ただ、ランクS以上の冒険者はマジックアイテムも多く持ってますので、肉体能力だけで実力を計るのも難しいとされてます」
俺もこのまま魔法、特殊能力、固有能力を増やしていけば、その内そのレベルまで行けるかもしれない。
うーん、夢が広がるな。
しかし、リィたんのおかげと、カミナの理解力の早さにより、気兼ねなく戦闘が出来るようになったな。
「リィたん、そっちお願い」
「もう終わった」
「わ、私……足手まといなのでは?」
そんな事はないぞ。多分。
そんな立場のカミナを無下には出来ない。
俺はリィたんにテレパシーでそう伝え、仕方なく一緒にダンジョンに潜るという事になったのだ。
「ミケラルド様、ポーションはお持ちですか?」
「いや、出来ればダンジョンに潜る時はどれくらい使うのか教えてくれると助かる」
一般的な常識を吸収する事は悪い事じゃない。
むしろ、人界で稼ぐためには今後必要となるかもしれないからな。聞いておいて損はないだろう。
「そうですねぇ、後衛であれば十本、前衛であれば三本といったところでしょうか」
「後衛の方が使わないんじゃない?」
「えぇ、なので後衛が前衛の分も持つのです。前衛は動きが激しく、ポーションの瓶が割れてしまう事もありますので」
「つまり、後衛は荷物持ちも兼ねてるのか」
「当然、そこまで重くも出来ないので、戦闘に差し支えない範囲で、という事になります」
という事は、闇空間が使える俺は、他の冒険者より圧倒的に有利って事だな。
「回復系の特殊能力がある人がいても、ポーションの数は変わらないって事?」
「ミケラルド様はヒールを使えるのですか?」
「はい」
僧侶風の冒険者キッカさんから吸っちゃったやつだけどな。
「それでしたらポーションは半分の五本、残りは魔力回復薬――マナポーションを持つといいかもしれません。ヒールはポーションより回復効果が高いので、有用ですけど、魔力消費も激しいので」
それに関しては不安はないけどな。
「それ以外は?」
「マッピング用の羊皮紙やペン。インク、そして食料でしょう。でも、ポーション系以外でしたら、私が持ってますので、是非ご活用ください」
「おー、ありがとう」
「ふふふ、ミケラルド様のためですもの。当然ですっ♪」
うーむ、悪い人ではなさそうだが、なんとも肩身が狭くなるような呼ばれ方だ。
「このお店のポーションがお買い得です」
マッキリーの商業区へ赴いた俺とリィたんは、カミナに言われた通り、ポーションを買った。
ついでに近くの別の店で、リィたんのポーション用のポーチを購入し、ようやく俺たちはダンジョンの入り口までやって来たのだ。
依頼は冒険者ギルドで四件受けたため、最下層へ行けたとしたら相当潤うな。
ダンジョンは一組のパーティが並んでいたが、すぐに俺たちの番になった。
どうやら一組が入ると、しばらく入れなくなるそうだ。
一緒に入ってしまうと、次の階層に潜る時にまた一緒でなければ駄目なのだとか。
死んだ者に対しては、例外とか怖い話も聞いた。
「聖薬草と聖水って一回に取れる量が決まってるの?」
「えぇ、正確には同じタイミングにダンジョンに入ったパーティに対して決まった量が出現するそうです。これは、神様からの報酬と呼ばれています」
「ほぉ」
リィたんが目を見張る。
この世界で神の力や恩恵は大きいって事だな。
「さぁ、それじゃあ行きましょう!」
「おぅ」
「楽しみだな」
リィたんは、カミナに対して苦手意識がないようだが、いつもの調子で大丈夫なのか不安だ。
ダンジョンに入ると、早速モンスターが現れた。
「スケルトンね。打撃系の攻撃が有効です! ……え?」
とかカミナが言ってる間にリィたんがスケルトンを叩き壊した。
「やはりこの武器は私に合ってるな!」
ハルバード片手に楽しそうだな。
小枝の如く振り回すから確かにリィたんには合っているのだろう、が! カミナのキョトンとした顔を、俺はどうしたらいいだろう。
「今、一体何を……?」
「ん? 真っ直ぐ走ってこれを振り払っただけだ」
俺は目で追えたが、カミナにとっては異次元の動きだったようだ。
「す、凄いです! まさかこれ程とは……ぁ!?」
思わず口が滑ったみたいだな。
やっぱり俺たちの実力をある程度高く見積もっていたようだが、予想外だったようだ。
たった一回の戦闘で気付くって事は、カミナも中々の冒険者って事だな。
「ま、まさかミケラルド様もっ?」
「まぁ、あれくらいの動きなら」
「おぉ!」
「因みに、あのレベルの動きで冒険者ランクってどんなもんなの?」
「……うーん、わかりません。ランクS以上は未知の領域ですから。でも、ランクA以上なのは確実かと」
その話を聞き、リィたんはとても機嫌が良さそうだ。
魔族ですら恐れるんだから、リィたんはSSSランクだと思うけどな。
「ただ、ランクS以上の冒険者はマジックアイテムも多く持ってますので、肉体能力だけで実力を計るのも難しいとされてます」
俺もこのまま魔法、特殊能力、固有能力を増やしていけば、その内そのレベルまで行けるかもしれない。
うーん、夢が広がるな。
しかし、リィたんのおかげと、カミナの理解力の早さにより、気兼ねなく戦闘が出来るようになったな。
「リィたん、そっちお願い」
「もう終わった」
「わ、私……足手まといなのでは?」
そんな事はないぞ。多分。
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