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第一部
その28 リィたんはお金がお好き
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夜目が利いてしまうというのも悩みものだ。
俺の隣のリィたんの目が……物理的に光っている。
こんなの誰かに見られたらどうするんだよ。
まぁ、適当に光魔法だとか言っておけばいいだろうけど。
今回受けている討伐依頼はランクFの『マミー』退治。
討伐部位は腕。マミー一体につき銀貨1枚という中々の好条件だ。といっても、モンスター一体で千円と考えると、やはり割に合ってないような気がする。
三体で条件はクリアされるようだが、リィたんは既に七体目を……、
「やったぞミック!」
今倒したな。
マミーは全身包帯が巻かれた動きの遅いアンデッドモンスターだ。
アンデッド系のモンスターには、リィたんの探知が中々引っ掛からなかったが、コボルトの固有能力【嗅覚】で死臭を嗅ぎつければすぐに見つかった。
冒険者であればもっと違った討伐方法になるのだろうが、こっちは魔族と大海獣だし仕方ないだろう。
「おぇ……」
「私も見ていて吐き気がするな」
マミーの血を指に付け、舐める俺と、それを残念そうに見るリィたん。
「いや、リィたんがやれって言ったんじゃないか!」
「それでもミックがやると……な。ほれ、口をすすげ。ウォーター」
「がぼぼぼぼぼ」
強力な口腔洗浄器を最強にしたかのような酷い扱いだが、これに関しては仕方ない。
「今度は何だ?」
「うーん【腐臭】……ですね」
「絶対に使うなよ、ミック」
「時と場合によりますが、基本使わない方向で」
俺はそう言いながらマミーの腕を闇空間に閉まった。
これは、リィたんがあまりにもモンスターを狩るため、俺が緊急で考案した闇魔法だ。取り出し可能な物置くらいの感覚で使っているが、発動した時、リィたんは結構驚いていた。
闇魔法に関しては使える人間もいるそうなので、別段気にせず冒険者ギルドでも使えるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「七十二本ですね」
この受付嬢も流石だな。もう既にこの異常性に慣れたか。
胸元に付けているネームプレートにすっと目を運ぶ。
「ネム」と書いてある。ほんわかした印象と、実直に仕事をこなすプロフェッショナルといったところだろう。
「こちらが報酬です」
金貨七枚、銀貨二枚を受け取った俺とリィたんは、夜も遅くなりそうなので、ナタリーの家に帰る事にした。というか、ようやくリィたんも満足したようだ。
帰る途中、町中で妙な気配を感じた。
冒険者ギルドにはパーティ制度というものはなく、受付に来たメンバーで、均等に功績を分ける方式をとっている。
だからこそ、報告を抜け駆けする冒険者もいるそうだが、そういう時は冒険者ギルドから調査が入るのだ。
「つけられているぞ、ミック」
やはりそうだろうな。これ程の速度でモンスターを狩れば、嫌でも目立ってしまう。おそらく早速冒険者ギルドに目を付けられたようだ。
集団でモンスターを狩り、二人だけで報告に来ていれば、それは問題になるからな。
俺はすぐにリィたんにテレパシーを発動した。
『おそらく冒険者ギルドが雇った冒険者です。ナタリーの家がバレても面倒です、撒きましょう』
『倒さないのか?』
『倒してギルドにつき返してもいいのでしょうけど、それだとただの悪目立ちですからね。ナタリーの家の方とは逆の出口から出ましょう』
『わかった』
そうして俺たちは冒険者を撒き、ナタリーの家に戻ったのだ。
「おっそーい! 遅いよミック!」
ナタリーがぷんすこ怒ってらっしゃる。
というか良い子は寝る時間というには遅すぎる時間だと思うのだが?
「うぇ!? だってリィたんが頑張るんだもんっ?」
「ミックだけ帰ればリィたんも付いて来たわよ!」
ずいと迫るナタリー。確かにそうかもしれない。
ふむ、随分と眠そうだ。無理して起きててくれたようだな。
ご両親が苦笑しているところを見ると、かなり我儘言ったようだ。
「さぁ、ミケラルドさんも帰ってきたし、ナタリーはもう寝なさい」
クロードの言葉に押され、ナタリーは不満気な顔をして俺を見続けながら部屋まで戻った。
俺はリビングの椅子に座り、ナタリーの部屋から戻ってきたクロードは、その対面に座った。
ジェイル? ジェイルはリィたんの武勇伝をこんこんと聞かされている頃だろう。
お茶を持ってきたエメラも、クロードの隣に座る。
「本当、驚きました。ナタリーがあそこまでミケラルドさんに懐いているとは」
「なんだかんだで三歳児みたいなものですから、姉のように振る舞ってくれます。ははは」
「うーむ、それにしてもそうは見えませんね。魔族の方は成長が早いのでしょうか?」
「いえ、そういった訳じゃないのですが……」
俺が口籠ると、エメラが気を利かせてくれたのか、別の話題を振ってきた。
「そういえば、今日はどうだったのですか? 初めての冒険者のお仕事」
「え、あぁ……聞きます? 私の苦労話?」
そんな力ない言葉を言い放つと、クロードとエメラは目を丸くさせてしまった。
「はっはっはっは! なんと! 一日でランクFにっ?」
「まぁ、既に金貨が十枚なんて、素晴らしいですわ」
確かに、一日で十万円と考えれば、相当やばい収入だ。
こなした依頼は二件だけど、数が数だしな。
こんな話を、クロードとエメラは屈託のない笑顔で受け入れてくれる。娘であるナタリーが差別され生きてきただけあって、差別意識のない家族なのだろう。
人界でこんな家族に出会えて、俺は本当に運がよかった。
明日も頑張ろう。
そして、この家族に恩返しをするんだ。
俺の隣のリィたんの目が……物理的に光っている。
こんなの誰かに見られたらどうするんだよ。
まぁ、適当に光魔法だとか言っておけばいいだろうけど。
今回受けている討伐依頼はランクFの『マミー』退治。
討伐部位は腕。マミー一体につき銀貨1枚という中々の好条件だ。といっても、モンスター一体で千円と考えると、やはり割に合ってないような気がする。
三体で条件はクリアされるようだが、リィたんは既に七体目を……、
「やったぞミック!」
今倒したな。
マミーは全身包帯が巻かれた動きの遅いアンデッドモンスターだ。
アンデッド系のモンスターには、リィたんの探知が中々引っ掛からなかったが、コボルトの固有能力【嗅覚】で死臭を嗅ぎつければすぐに見つかった。
冒険者であればもっと違った討伐方法になるのだろうが、こっちは魔族と大海獣だし仕方ないだろう。
「おぇ……」
「私も見ていて吐き気がするな」
マミーの血を指に付け、舐める俺と、それを残念そうに見るリィたん。
「いや、リィたんがやれって言ったんじゃないか!」
「それでもミックがやると……な。ほれ、口をすすげ。ウォーター」
「がぼぼぼぼぼ」
強力な口腔洗浄器を最強にしたかのような酷い扱いだが、これに関しては仕方ない。
「今度は何だ?」
「うーん【腐臭】……ですね」
「絶対に使うなよ、ミック」
「時と場合によりますが、基本使わない方向で」
俺はそう言いながらマミーの腕を闇空間に閉まった。
これは、リィたんがあまりにもモンスターを狩るため、俺が緊急で考案した闇魔法だ。取り出し可能な物置くらいの感覚で使っているが、発動した時、リィたんは結構驚いていた。
闇魔法に関しては使える人間もいるそうなので、別段気にせず冒険者ギルドでも使えるだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「七十二本ですね」
この受付嬢も流石だな。もう既にこの異常性に慣れたか。
胸元に付けているネームプレートにすっと目を運ぶ。
「ネム」と書いてある。ほんわかした印象と、実直に仕事をこなすプロフェッショナルといったところだろう。
「こちらが報酬です」
金貨七枚、銀貨二枚を受け取った俺とリィたんは、夜も遅くなりそうなので、ナタリーの家に帰る事にした。というか、ようやくリィたんも満足したようだ。
帰る途中、町中で妙な気配を感じた。
冒険者ギルドにはパーティ制度というものはなく、受付に来たメンバーで、均等に功績を分ける方式をとっている。
だからこそ、報告を抜け駆けする冒険者もいるそうだが、そういう時は冒険者ギルドから調査が入るのだ。
「つけられているぞ、ミック」
やはりそうだろうな。これ程の速度でモンスターを狩れば、嫌でも目立ってしまう。おそらく早速冒険者ギルドに目を付けられたようだ。
集団でモンスターを狩り、二人だけで報告に来ていれば、それは問題になるからな。
俺はすぐにリィたんにテレパシーを発動した。
『おそらく冒険者ギルドが雇った冒険者です。ナタリーの家がバレても面倒です、撒きましょう』
『倒さないのか?』
『倒してギルドにつき返してもいいのでしょうけど、それだとただの悪目立ちですからね。ナタリーの家の方とは逆の出口から出ましょう』
『わかった』
そうして俺たちは冒険者を撒き、ナタリーの家に戻ったのだ。
「おっそーい! 遅いよミック!」
ナタリーがぷんすこ怒ってらっしゃる。
というか良い子は寝る時間というには遅すぎる時間だと思うのだが?
「うぇ!? だってリィたんが頑張るんだもんっ?」
「ミックだけ帰ればリィたんも付いて来たわよ!」
ずいと迫るナタリー。確かにそうかもしれない。
ふむ、随分と眠そうだ。無理して起きててくれたようだな。
ご両親が苦笑しているところを見ると、かなり我儘言ったようだ。
「さぁ、ミケラルドさんも帰ってきたし、ナタリーはもう寝なさい」
クロードの言葉に押され、ナタリーは不満気な顔をして俺を見続けながら部屋まで戻った。
俺はリビングの椅子に座り、ナタリーの部屋から戻ってきたクロードは、その対面に座った。
ジェイル? ジェイルはリィたんの武勇伝をこんこんと聞かされている頃だろう。
お茶を持ってきたエメラも、クロードの隣に座る。
「本当、驚きました。ナタリーがあそこまでミケラルドさんに懐いているとは」
「なんだかんだで三歳児みたいなものですから、姉のように振る舞ってくれます。ははは」
「うーむ、それにしてもそうは見えませんね。魔族の方は成長が早いのでしょうか?」
「いえ、そういった訳じゃないのですが……」
俺が口籠ると、エメラが気を利かせてくれたのか、別の話題を振ってきた。
「そういえば、今日はどうだったのですか? 初めての冒険者のお仕事」
「え、あぁ……聞きます? 私の苦労話?」
そんな力ない言葉を言い放つと、クロードとエメラは目を丸くさせてしまった。
「はっはっはっは! なんと! 一日でランクFにっ?」
「まぁ、既に金貨が十枚なんて、素晴らしいですわ」
確かに、一日で十万円と考えれば、相当やばい収入だ。
こなした依頼は二件だけど、数が数だしな。
こんな話を、クロードとエメラは屈託のない笑顔で受け入れてくれる。娘であるナタリーが差別され生きてきただけあって、差別意識のない家族なのだろう。
人界でこんな家族に出会えて、俺は本当に運がよかった。
明日も頑張ろう。
そして、この家族に恩返しをするんだ。
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