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31話 4階層②
しおりを挟む「ついに4階層のボス戦だな。おそらくボスは人型の緑スライム。緑スライム騎士でほぼ確だろうな」
「ニャン」
頷くタムタム
「お前もそう思うか?そこで一つお願いなんだが1回目は俺一人で戦わせてもらってもいいか?」
「ニャ」
「ありがとう。では好きにさせてもらうな」
俺は4階層のボスの扉を開いた。
広場には予想通り苔の生えた緑スライムの人型が立っていた。
武器は槍?全体に緑スライム液がべっとりついている。
でも、案外普通の武器だな。
ちなみにボス戦を前に俺はレインスーツを身につけた。
更にumbrellaも装備している為、準備は万全だ。
「行くか!」
俺は緑スライム騎士に向けて駆け出す。
俺に気づいた緑スライムが片手を銃型に変化させ、緑液の弾丸を発射してきた。
さすがは4階層ボス、なかなかの速さだ。
だが距離もあるし、全然避けられる。
俺は緑液の弾丸を飛び散りを警戒し、大きく避けながら接近していく。
ある程度近づくと、緑スライム騎士は槍攻撃に切り替えてきた。
核は苔のせいで見えない。
緑スライム液がべったりの槍が伸びてくる。
俺は【移動】を使用し、槍の射程範囲外へ移動する。
昨日の連戦でスキル【移動】は1回に2mまで移動できるようになった。歩幅にすると約3歩分の距離を一瞬で移動できる。
1回の【移動】で敵の攻撃範囲から脱出できるのはかなり大きい。
俺は一気に緑スライムの槍の間合いの外へとーーっ!
マジかっ!間合いの外に避けたと思ったが、槍の先端からビームのように緑スライム液が発射された。
溶解成分が無ければumbrellaとレインスーツで問題無しだが、ここは安全を見て避けるべきだな。
ビームの軌道から外れる為、横方向へと【移動】
俺は緑スライム液のビームを避ける。
だが、緑スライム騎士はそのまま槍を横に一閃。
水平にビームが展開される。しかも速度が速い。
通常の【移動】では範囲外に抜けれない。
そう、今までであればな
ーー【移動】
次の瞬間、俺は地面に深くしゃがみ込んでいた。
俺の真上を緑スライム液が通過する。
"移動後の体勢の変更"
タムタムに負けたくない一心で【移動】を使いまくっていたら可能になった【移動】の新たな能力だ。
以前は【移動】前後の体勢は同じであり、不安定な体勢で【移動】した場合、【移動】した後も変わらず不安定な体勢だった。
しかし、新たな能力では移動後の体勢を変化させられる。
代わりに移動距離は半減するが、これはかなり有能だ。
今回のような緊急の回避にも使えるしな。
立ち上がった俺は2連続【移動】で緑スライム騎士の真横へ移動
加えて体勢変化の【移動】で短剣を振りかぶった状態に変化
側から見るとコマ送りのようになっているだろう。
距離的には結構離れているが、槍攻撃後で無防備な緑スライム騎士。
ーー攻撃のチャンスだ。
俺は【斬撃】を緑スライム騎士の足元の地面に飛ばす。
狙い先を間違ったわけでは無い。
放った斬撃は、地面で跳ね返り、緑スライム騎士の下半身を切断した。
これは俺の【斬撃】の新しい能力
"跳ね返る斬撃"略して【跳斬撃】
跳ね返りを利用する事で飛距離が2倍になるのだ。
威力は飛距離に反比例し弱くなってはしまうが。
これもタムタムに負けたくない一心で敵が居なくても【斬撃】を放ち訓練した成果だ。
足を切られその場に倒れる緑騎士スライム
身体を再生しようとしている。
俺は【移動】を使用し、再び距離を詰める。
更に短剣を振りかぶる体勢に【移動】
【斬撃】を飛ばす。
1撃目!
2撃目!
3撃目!
4撃目!
核が見えない為、どんどん【斬撃】を放つ。
斬撃の連撃数も3連撃から5連撃へと増えている。
5撃目!
5撃目で核を切り裂いたようだ。
細切れになった緑スライム騎士が粒子と化す。
その場に残る緑の魔石と……緑スライム素材の腹巻?
うーん、このフォルムは腹巻きだよな
もしくはターバン?何かのカバー?
でも腹巻きがなんかしっくりくるよな。
相変わらず統一感が無いドロップアイテムだ。
だが一体どんな効果だろう、楽しみだ
「ニャー」
するとタムタムが俺の足を前脚でトントンと叩いてきた。
「どうした?」
「ニャ」
2本のナイフを浮かせ、ナイフ同士をキィンキィンッとぶつける。
「お前も戦いたいのか?」
「ニャン」
もちろん!とばかりに頷く猫
こいつ戦闘狂か?
だがいいだろう。
「いいぞ!じゃあ、俺はドアを開け閉めしてリセットするから頑張れよ」
「ニャ」
タムタムは相変わらず余裕な素振りで短く鳴く。
俺はドアの外に出て、ドアを閉めてもう一度開ける。
"ーーシュッ"
開けた時に俺の目に入ったのは緑スライム騎士の核がちょうど斬られている所だった。
「マジか……瞬殺にも程があるだろ」
「ニャーォ」
完了とばかりに大きく背伸びし、2振りのペティナイフを鞘に戻す。
こいつやっぱり俺よりも強い?いや、そんなはずは……
とりあえずは次の階層に進もう。
次はようやく5階層だ。
***
5階層に降りた俺とタムタム
今回は続けて探索するつもりだ。
現状かなり余裕を持って倒せているし、そろそろレベルアップがしたいと考えているからだ。
5階層を少し進んでいくと、いつもの広場が見えてきた。
いや、いつもより広そうだな。
慎重に進み、通路から岩肌のドームのような広場を覗く
ーーこれが5階層か
俺は少々驚いた。
広場にいたのはスライムのグループだ。
スライム、赤スライム、黄スライムの3体がいた。
まさか、今までに倒したスライム達がグループでいるとはな。
今までの魔物が一挙に登場って激アツ展開。
この階層が最下層だったりしないよな?
等級の低いダンジョンは階層数も少ない事は珍しくないらしいし、十分にあり得る。
「まずは倒すか。初めての複数戦闘か……タムタム、俺が黄色倒すから、他の2体を頼んでもいいか?」
この中で黄色スライムが一番移動速度も速く、麻痺するスライム液がある為、一番厄介な存在だ。
逆に黄スライムさえ倒せば、後のスライムは余裕だろう。
「ニャン」
タムタムの2本のナイフが宙に浮き上がる。
準備万全という感じだな。
「行くぞ!」
俺は広場に入り、【移動】を連続で使用し、一気に黄スライムに接近。
まだ黄スライムは反応できていない。
俺はスライム液の飛び散り範囲外から【斬撃】を放つ。
もちろん放つ場所は黄スライムのやや手前の地面だ。
【跳斬撃】
白い斬撃は、地面で跳ね返り、黄スライムを一閃
真っ二つになった黄スライムに更に【跳斬撃】
黄スライムの核を切り裂いた。
命中率もバッチリだな。
さぁ、残りの2体は?と目を向けると
既に魔石と化していた。
これをやった当の本人は、後ろ足で首を掻いてくつろいでいる。
なんだろう……この敗北感は
俺より後に飛び出したはずなのに既に倒しているだと
次の広場もスライムのグループで緑スライムが4体もいた。
現状で一番強いスライムだがタムタムと2体ずつを担当し、なんなく撃破できた。
どうやらこの階層は広場に魔物が1体では無く、複数のスライムがランダムな組み合わせで出現するみたいだ。
俺とタムタムはとりあえず対複数に慣れるため、ひたすらに5階層を巡回した。
「……かなり貯まったな」
「ニャァ……」
途中からはタムタムと別々で広場を巡回したという事もあり、魔石が山のように積み上がっている。
米袋10袋分はありそうだ。
あぁ、ガチで運ぶのが憂鬱だ……
それにしても今日も時間を忘れて頑張ってしまった。
流石にボス戦は次の機会にしよう。
レベルアップはしなかったけど、これだけ戦闘したとなるとダンジョン後の反動がすごいだろうな。
スライム枕があるから大丈夫だけど、正直無かったら精神が崩壊するレベルの痛みに襲われるだろうな。
考えただけでも背筋が凍る気分だ。
その日、俺とタムタムは入り口から5階層までを何度も往復し、魔石を搬送した。
いつものバッグは全て満タン、+米袋(30kg用)が13袋が埋まった。
獲得魔石量が歴代最高記録となった日であった。
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