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14話 スライム騎士

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ウォーミングアップにスライムを倒し続け、気づけば24時間。
楽しくなってついつい倒しすぎた。ここにいると時間感覚がおかしくなるな。
だが、ウォーミングアップはもう十分
というわけで今、俺はボス部屋の扉の前にいる。

この扉を開ければこの階層のボスがいるわけか
少しばかり緊張するな
例えるならば、就活の面接前のあの緊張感だ。

《ボス》
次の階層へ行く為の門番的存在、別名、階層の守護者とも言われる。
強さは通常の魔物とは一線を画すとの事。
一般的にはその階層の強力な魔物がボスになっている場合が多いと言われている。

おそらくこの扉の先にいる魔物は強いスライム系の魔物だろう。

あぁ……ドキドキする。

俺はドアを僅かに開き、閉まらないように10kgのダンベルをドアストッパーとして設置する。
ボス部屋の扉はアニメのように入ると出られないみたいな事はないらしいが、念には念をだ。

さて、ボスを見てやろうじゃないか

ーー鏡を使ってな!

さすがにいきなりドアから顔を出す勇気は無い。
鏡だけを扉の中に差し込み、反射で部屋の中をみる。
鏡に映ったのは一つのシルエット

これは人型?いや、スライム、なのか?

全身透き通った青色のスライムボディが人を形取っている。
心臓の位置には野球ボール大の核が見える。
更に手には剣を持っている。
名づけるならばスライム騎士だな。
スライムに乗っていない為、騎士きしだ。ナイトでは無い。

というか魔物が武器持つなよと思う。
己の身体で勝負してこいよ。
お前の眷属?スライム達はその身のみで向かってきたぞ

だが、こいつも人型で剣は持ってるけど、スライムには変わりない。

俺は思い切ってボス部屋に踏み行った。
一瞬チラリと振り返り扉が開いたままになっている事を確認する。

さぁ、戦闘だ。

気持ち一気に戦闘仕様に切り替える。
負けたら死だからな

スライム騎士は剣を持った状態で体をクネクネと揺らしている。

まずは相手の実力確認だ。

俺は距離を開けた状態でスライム騎士を中心に円を描くように駆け出す。

俺に気づいたスライム騎士の頭部分だけが俺の移動に合わせて回る。
回る。回り続ける。720°は回ったな。
スライムだもんな。
人型だが関節という概念は無いらしい。

次は反応速度だ。

俺は速度を上げ、距離はまだ取った状態で縦横無尽に移動する。

なるほど,頭の回転が俺の動きに追いついてきていない
どうやら俺の全力の速度にはついて来れないようだ。

レベルアップは最初以来していないが、ダンジョンに入る度に身体能力は多少上がっている。
おそらくダンジョンから出た瞬間に襲ってくる激しい痛みとかが関係しているのだろう。

スピードはこちらが有利という事が分かった。
少し距離を詰めてみよう。

円を描きながら徐々に近づき、大体4メートルくらいになった時
スライム騎士が剣を持っていない左手を筒状に変化させ、水鉄砲のように溶解液の塊を飛ばしてきた。

《移動》発動

俺は瞬時にスキルを使用し、溶解液を避ける。
通常のスライムよりはかなり速いが、全然避けれる。

なるほどな
この距離では溶解液を放ってくる事がわかった。

では、更に近づいてみるとしよう。
俺は溶解液を避けながら接近

ーーおっと!

俺の接近は途中で止められた。
スライム騎士が剣を水平に持ち上げ、上半身を駒のように振り回し始めたのだ。
その振り回し速度はどんどん速くなっていき、剣の残像がまさに扇風機、いや駒のようになっている。
小学生が考えるような技だ。

だが厄介な事にこれでは近づけない。
かなりダサい技だが、近づかせないという一点ではかなり強力だ。
加えて上半身が回ることにより、核の位置も定まらない。

これはかなり厄介だ。

ーー昨日の俺であったならば……だけど

俺のスキルは成長した。
そして、手に入れた"新たな力を"

俺は駒のように回り続けるスライム騎士の間合いの少し外側に【移動】を発動。
距離感はバッチリだ。

俺はその位置で短剣を真横に一閃

シュッという空気を切り裂く音と共に短刀から白い斬撃が飛び出し

"キンッ"

回転するスライム騎士の剣に当たり、スライム騎士の手から剣が弾け飛ぶ。
駒の回転が止まり、スライム騎士は無手状態

ビビったろ?

これが【斬撃】の新能力
"飛ぶ斬撃"だ。
飛距離は最大で50cmまでで威力は半減するが、ただただカッコいい。

眼前の万歳状態のスライム騎士
心臓部にある核が無防備だ。

次は【移動】の成長を見せよう

【移動】を2で使用し、スライム騎士の真横に移動する。
今の俺は2回連続までインターバル無しで使う事ができる。

目の前には野球ボール大の"核"

とどめの【斬撃】!

核を真っ二つ切り裂いた。
スライム騎士の身体が粒子と化し、深い青色の核ともう一つ"何か"が落ちた。

何だろーー"ドクンッ"

心臓が強く脈打った。
これは"レベルアップ"だ!
全身に膨大な力が流れていく不思議な感覚
まるでスーパーサ●ヤ人3になった気分だ。
身体能力のめちゃくちゃ上がった気がする。

あの激痛による成長が微々たるものに思えてくる。
あんなに痛い思いをしたのな……
でもそれはいい。
小さな努力も大事だしな!

さて魔石と一緒に残ったドロップアイテムの確認をするとしよう。
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