上 下
44 / 70
3章 3つ巴ベース編

43話 一撃

しおりを挟む

 
俺の動きを先読みしているが如く的確に槍が突いてくる。

攻撃は見切れない程速いわけではない

雷を纏っているが速度は意識があった時に比べると遅い
もしかしたら他のスキルを使用に制限がかかるかもしれない

だがーー"強い"

まるでお手本のような一切の狂いのない攻撃
何を考えているかわからない無の表情
更に殺意も感じない。

故に一切挙動が読めない。
だが、俺は何とか全神経に意識を集中させ避ける。

「ねぇねぇ!あの男粘りすぎじゃない。」

少女の声が耳に入る。
なんて事を言うんだ
俺が全力で戦っているのに。
今も必死で槍を避け続けている。

「僕も不可解だ。彼のスキルにこれといった強力なスキルはないのに…」

うん?優等生君の発言に気になる部分はあるが、それどころではない。まずは戦闘に集中しなければ

まるで詰将棋のように俺の攻撃を封じ、動く先へと穂先が向かってくる。何をしても通じない。

だが決して槍が早いわけではないのならば

ギリギリで避けれる。
だがそれも徐々に厳しくなってきている。

しかし、相手が俺の攻撃を分析し演算し予測してくるならば
それを越えるまでだろ

俺は敢えて【全力】の発動を止める
急激に低下する身体能力。
スキルの反動が全身を襲う。

ーーヤバイっ

「うっ!!」

槍を避け切れず、脇腹を抉られる。
かなり痛い。

だが、これでいいんだ。
【直感】がこの相手を超えるには、自らをより境地に立たせる必要があると、鍛えた力を技に昇華させるのだと伝えて来る。

俺は自分の努力を信じる。

槍を避ける。
転げながら切り裂かれながらでも
泥臭くてもみっともなくてもひたすらに避ける。

集中しろ!集中だ!

全神経、全意識を研ぎ澄ますんだ。
【集中】だ。より深く

相手が俺を分析し、俺の戦闘中の成長までも読んでくるならば
俺はその読みの上をいかなればならない

一瞬で爆発的な予想を超える一撃を放たなければならない

「はぁ!!!!」

殺気を込めた気合の咆哮
ピアス少年が俺から距離を取る。
何かを警戒したのだろう。
だが、この咆哮は俺自身を焚き付けるだけのもの

"一瞬の空白を生み出すためのもの"

俺はナイフを逆手に持ち、足幅を広げる。
全身の力を溜めるイメージ、溢れ出しそうな力を蓋で強引に抑え込むイメージで力を溜める。

抑えろ!まだ耐えろ

ピアス少年の槍がまるで一本の矢のように向かって来る。

狙う先は俺の心臓だろう。
避けなければと身体が警報を鳴らすが、意志の力でねじ伏せ

限界まで待つ。

穂先は既に俺の身体の数十センチまで来ている。

まだだ……

ーー来た!周りが速度がスローに見える。

穂先が服に触れるーーーここだ!

【全力】を一気に解放!
全身の筋肉を強引に可動させる。
骨と筋繊維が軋む音が聞こえる

槍を支点に身体を回転させ、一気に懐へ近づく

一撃で決める!

俺はナイフの柄を思いっきり相手の腹に撃ち込んだ。

スローと化した時間が戻り、ピアス少年はまるで弾丸のように吹き飛び壁にぶち当たる。

今度はピクリとも動かない。
……が死んではいないだろう

後は、口を開けたまま固まっている2人だ。

さて、どうするか…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...