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2章 ガーディアン襲撃編

32話 パール奮闘記

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「おい!パール諦めるな!」

「プゥ~~!」

「もっとやれる!お前なら乗り越えれる!」

「プゥ~~」

俺とパールはあれから訓練の毎日を送っていた。

当初のパールの身体能力は極めて低く、爪や牙と言った攻撃手段を持っていないため、ゴブリン相手では殺されるくらいに弱かった。

だがパールには根性がある。

俺が限界を超えて鍛えても、力強い瞳で訴えかけてくるからだ。
若干瞳が潤んでいたり、全身が小刻みに震えたりするが、武者震いという奴だろう。

パールを鍛える上でまず重視したのが機動力だ。

機動力を高めることで生存率はグンと上がる。
逃げるにしても、敵の攻撃を避けるにしても必要な力だ。
防御力が低いパールには尚更必要な力だった。

しかし、鍛えても鍛えてもパールに機動力は身につかなかった。
それはパール自身の身体が原因だった。

丸い体に短い4足、身体的な構造に決定的な問題があったのだ。

俺はどうすれば解決するか考えに考えた。

だが答えはそう簡単には出なかった。

しかし、そんなある日、俺は真夜中にふと目を覚ました。

そして気づいた。布団にパールがいない事を。

俺は一瞬焦ったが、すぐに冷静になり辺りの気配を探った。

すると隣の部屋に気配を感じ、家全体が僅かに振動している事に気づく。

俺は気配を消して、隣の扉をそっーと開け中を覗く

そこには、懸命に反復横跳びを繰り返すパールの姿が
速度はかなり遅く、不恰好だが俺は心が震えるのを感じた。

そして、俺は出かけた声をせき止め、そっとドアを閉め、眠りについた。

翌日から俺は機動力にこだわらず、パールを全体的に鍛える方針に切り替えた。

パールならば自ら答えを見つける気がしたからだ。

俺はパール自身の力を信じる事にしたのだ。

そして、ある日俺はパールに実践の空気感だけでも感じさせるためゴブリンと対峙させた。

勿論、俺が即座に助けに入るつもりで。

だが、パールはゴブリンから俺を遠ざけた。
これはパールが示した初めての意思だった。

俺はその意思を受け止め、ただ頷いた。

"やれるだけやってみろ"という意思を込めて

パールとゴブリンは対峙する。

敵のゴブリンは刃物は持っていないが、木の棒を持っていた。
対するパールに攻撃手段はない。

戦力差は明らかだった。

パールは必死で動き、突進で攻撃を試みるもゴブリンには通用せず木の棒で滅多打ちにされる一方

ピンクの肌は所々紫に変色している。

しかし俺が助けに入ろうとすると強い戦意を俺に向けてきた。

パールは何度殴られても何度も立ち上がった。

そして、変化は突然起きた……

敵の攻撃をパールが突如避け始めたのである。

その方法は手足を動かすのとは逆、手足を使わず転がって移動する方法だ。

すごい!と俺は思わず口に出るほど衝撃だった。

地面を滑らかに自由自在に転がるパール
ゴブリンはその動きについていけず、隙ができた瞬間
まるで弾丸のようにぶつかる。

パールは自分の力で欠点を克服したのだ。

その後、パールはヒット&アウェーを繰り返し、何とかゴブリンを倒した。

俺は頑張ったパールを目一杯抱きしめた。

本当によく頑張ったな
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