上 下
10 / 70
1章 始まりの街

9話 ボスゴブリン

しおりを挟む
爆竹が鳴り響いた瞬間、建物内が騒がしくなった。

ーーだが、ちょっと待て…

「多くないか?」

建物内の音がどんどん大きくなっていく
それはもう轟音だ

「「「"ギャギャギャギャギャギャ"」」」

何体ものゴブリンがゾロゾロと入り口から這い出てくる。
だが、いつものゴブリンとは違う

皆、武器を持っている。
粗末な武器ではなく、ナイフやハンマー、ノコギリなど武器と呼べるものを装備している。
おそらくホームセンターなどから盗んできたのだろう

だが面白い……それくらいじゃないと強くなれない

俺は新調したナイフを握りしめ、構える。
このナイフはハイス鋼を使用した高硬度のナイフで普通に買えば数十万はする高級ナイフだ。
お金は世界が平和になれば払うつもりだ。

よし!さぁ、突撃だ!

 俺はナイフを片手に低姿勢でゴブリンの群れに一気に近づく。集団戦の場合は敢えて、懐に入る事で敵の連携を妨げ、攻撃の方向性を予想しやすくなる。

あの本の教えだ。

 俺を囲んだゴブリンの攻撃が360度から襲ってくる。
だが、取り囲める人数は限られている。そのため1度に襲い来る攻撃も限定される。

 全神経を集中させ、ゴブリンの攻撃を避け、確実に急所を斬って行く、
 敵の血を使った目潰し、敵の攻撃を利用した同士討ち、使えるテクニックは全て駆使して、ゴブリンを順に始末して行く。

 同じ場所には絶対留まらず、動き続ける。

 10分程は戦い続けただろうか?ようやく最後の1体を倒すことに成功した。お陰で高級ナイフの刃はボロボロだ。流石に斬り過ぎた

辺りには無数の魔石が散らばっている。
だが、今は拾うことはできない。

何故なら

「ギャァアアアオオオ!!」

 通常の倍ほどある背丈のゴブリンが建物から現れたからだ。通常のゴブリンより濃い緑色、筋肉質な身体、何より手には数十キロはあるだろう鉄の角材を持っている。

見るからにパワー型ってわけか
今までのゴブリンであれば身体的優位はこちらにあったが、このボスゴブリンの場合はおそらく負けている。

俺はカバンから予備のナイフを取り出し装備する。

よし行くぞ!速攻

前への倒れこみからノーモーションの加速
ボスゴブリンの懐に飛び込む

しかし、途中、直感が警鐘を鳴らした。
ーー急停止、横に飛び地面を転がる。

俺がいた場所には、鉄の角材が土煙を上げ、振り下ろされていた。

背筋に冷たいものが走る……
もし、当たっていれば確実に死んでいた。反応が速すぎる。
改めて襲い来る恐怖

その恐怖の所為か俺はボスゴブリンの懐に飛ぶこむ事が出来ず、闘いは膠着状態に入っていた。

ボスゴブリンのパワーと反応速度により懐に入れない
俺の体力が多いといえど、長引けば敵の増援など不確定要素が多い

決めなければ……

「グワァォァァァァォァ!!」

その時、ボスゴブリンが叫び声を上げた。
地面が軽く震えるほどの咆哮

何事だ!仲間を呼んだのか?
俺はそう考え、一瞬周りを警戒したがどうやら違う
変化があったのは"ボスゴブリン"の方だ!

ボスゴブリンの肌の色が緑から赤黒く変化している。
顔はより凶暴さを増し、牙も爪も鋭く伸び、眼は血走っている。

俺は後悔している。
特に何もしてないのに強くなったじゃないか…
普通は相場は大ダメージを負って追い込まれてからじゃないのか!
ちっ無理をしてでも早めに倒しておくべきだった

だが、俺の心は恐怖を含みながらも

「最強への道に強者の闘いは必須だよな」

 血が沸き立つのを感じていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉

Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」  華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。  彼女の名はサブリーナ。  エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。  そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。  然もである。  公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。    一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。  趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。  そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。 「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。  ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。  拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。    

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます

ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう どんどん更新していきます。 ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

処理中です...