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1章 始まりの街

7話 レベルアップ

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ーーどれくらい戦っているのだろうか

 時間感覚が麻痺してきた。
 この感覚は時間を忘れ残業したワーキングハイの時のようだ。

 辺りに充満する血肉の臭い
 死亡後は消滅するといえど、飛び散った血は消滅しないらしい。
 地面に無数の転がる緑の魔石

 まだ消滅前のゴブリンの死体も大量に転がっている。

 ヤバイ……気を失いそうだ
 調子に乗ってゴブリンを倒し過ぎた。

 3本持ってきたナイフは全て刃が折れ、柄だけになっている。
 武器を失った。何とか体術のみでさばき続けているが、そろそろヤバイ

 何故なら、今俺は囲まれている

「「「ギャギャギャギャギャギャ」」」
「「「ギャギャギャギャギャギャ」」」
「「「ギャギャギャギャギャギャ」」」
「「「ギャギャギャギャギャギャ」」」

 12体のゴブリンに
 武器も無い状態でだ。

 四方八方から襲いくる攻撃の嵐を全力で避け続ける。
 正直、死にそうだ…ってか身体の所々の骨が折れている。
 そして、何より出血により意識が朦朧としてきた

 俺は全力で地面を転がり、ゴブリンの群れから抜け出す。
 そして、全力で疾る!

 人間死ぬ気になれば、何でも出来るのは実証済みだ。
 俺は全力で走って、走って、拠点にたどり着いた。

 拠点に戻った俺は残りの力を振り絞り、鍵を閉め、そのまま気を失った。


 ******

「うっ……」

 霞む視界が鮮明になっていく。
 起きた瞬間の妙な静けさが気持ち悪い。
 どれくらい眠っていたのだろう
 かなり眠っていたような気がする。

 それにしても身体が軽い、というか力が漲る。
 うーん、もしかして

「ステータス!」

 *****

 名前:宮川 秋
 固有スキル :回復強化Ⅱ

 *****

 あれ?回復強化が回復強化Ⅱになっている。
 何が変化したのだろうか?

 《回復強化Ⅱ》
 回復速度の向上
 状態異常の半減

 状態異常の半減が追加されたらしい。後、感覚でしかないが回復速度も上がった気がする。
 うーん、だが、これじゃないんだよな

 俺は毎日の筋トレ、スロー素振りにより自身の肉体を確実に把握している。
 だからこそ分かる。

 明らかに身体能力が向上している。
 段階的に強くなったようだ。
 そう、ゲーム的に言うとレベルアップのように

 だがレベルアップの表示は無い。
 しかし、戦闘による経験値のようなものがあるのかもしれないな。

 レベルの存在を検証するため、俺はゴブリンを倒し続けた。
 しかし、よくあるRPGのレベル制とは違うようだ。

 敵を1体倒すことによって経験値が得られ、ある一定の値を超えるとレベルアップするのがレベル制

 だが違った。

 俺の検証で分かったレベルアップの条件仮は
 ・命を賭けた戦闘
 ・心身共に限界を超える

 そのため、今の俺ではゴブリンを何体倒してもレベルは上がらなかった。

 しかし、ゴブリンの巣らしき場所に突貫した際、50体程のゴブリンが襲いかかって来た際は、本当に死にかけた。
 右腕は完全に折れ、全身は傷だらけ、そのまま拠点にも帰れず、生死を彷徨った。
 正直、回復強化が無ければ死んでいただろう。

 おかげでレベルアップは出来たが、やはり死の恐ろしさを痛感した。

 もっと強くならねば、
 俺は今の鍛錬量を1.5倍に増やそうと心にきめた。
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