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22.ラウールの迷い
目立つソフィア
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僕たちは今商人ギルドの一室にいる。
ラシーア帝国全土で行商をしたいと説明すると通された部屋だ。
僕たちはおとなしい動物という事で一緒にいることを許されている。
ソフィアがお茶を飲みながら待っていると、小太りの男が入ってきた。
「初めましてエルフの商人さん。私は商人ギルドの行商人を担当しています。気安くダンとお呼びください。」
そう言って頭を下げ席に着いた。
「初めましてソフィアと申します。私はラシーア帝国全土をまわりたいと考えていますが、何か必要な手続きはございますか?」
「はい。帝国全土を行商で回るとなりますと、多額の金銭を負担していただく必要があります。ただの行商で有れば割に合わないと思いますが、いかがなものでしょうか?」
「そうなんですね。一般的な物では割に合わないと。それでは貴重な物を持っているとしたらいかがですか?」
「貴重な物・・・。物には寄りますが、その辺の商店や我々商人ギルドに売却したほうが利益が出ると思いますが。どうしても行商として歩きたいのですか?」
「はい。旅をしながら商売をした時、何か手続きに不備があって捕らえられたり罰せられることは避けたいですから。」
目の前のダンは考える格好をした。
「そうですね。あなたはエルフですよね? エルフであれば何か言いがかりをつけて奴隷にしようと企む者も出てくる可能性があります。この帝国でもエルフの奴隷は高額に取引されていますから。」
「そうなのですか・・・。あまり奴隷を見ることがなかったので・・・。私は危ないですか。」
「はっきり言うと危ないです。ですから行商はあまりお勧めできません。しかしどうしてもと言うのであれば正規の手続きを踏み、どうやって利益を出すかを考える事が大切だと思います。」
目の前のダンは信用できそうな人間に思える。
ハッキリと危険も教えてくれて、不利益にならない方法も教えてくれる。
ソフィアの顔を見ると同じ考えなのか口を開こうとしている。
「ありがとうございます教えていただいて。それで、正規の手続きのお値段や、素材や商品での支払いは可能か教えていただきたいのですが。」
「私は心配ですが、人の商売に口を挟むことはできませんね。損をしないようにうまくいくことを願っています。」
一息つき
「もし素材でと言うのであれば、ドラゴンの爪や鱗が数枚、ミスリルなどの素材であれば可能です。」
そう言ったダンは金銭での支払額も教えてくれた。
「それでは素材でお願いしたいのですが。」
「どんな素材ですか? 少し鑑定する時間もいただきますが。」
「はい。どんなドラゴンであればよろしいですか? あとミスリルであればどの程度の量があればよいですか?」
「ドラゴンで言うとワイバーンなど劣等種は五本は欲しいですね。アースやレット、グリーン、ブルーであれば一本で十分です。」
「それでは一番あるアースドラゴンの爪を一本でお願いします。」
そう言うとソフィアはアースドラゴンの爪を一本取り出した。
僕たちがダンジョンで獲得したドラゴンが一番多い。
魔の森のドラゴンはそこまで数がいなかったから。
「一番たくさん・・・。アイテムバックも持っている。ソフィアさん、あなたは・・・。」
「仲間や家族に恵まれているだけですよ。商人としては経験が少ないですから。」
「わかりました。それでは一度お預かりします。」
そう言ってダンは一度ドラゴンの爪をもち退室した。
僕達も念話でダンは信用できそうだと話したり、どんな反応が返ってくるか話していた。
しばらく念話で会話しているとダンが戻って来た。
「ソフィアさん。本物と確認が取れました。この素材で行商の資格を得ることが出来ますがよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
ソフィアが返事をすると書類を出してきたため、ソフィアが手続きをした。
最後にダンが一つのプレートを出しソフィアに渡した。
「そのプレートが帝国全土で行商を行うことが出来る証明になります。なくした場合の再発行は同じくらいの金額がかかります。そしてそのプレートは最後に魔力を込めないと個人の証明になりませんので、今一度で良いので魔力を込めてください。最後に、ソフィアさんはエルフ。貴族や盗賊、悪いやからにはお気をつけて。」
ダンは最後まで心配してくれたようだ。
悪い気配は感じられない。
あのクロウも念話で良い人と言っている。
ソフィアはプレートに魔力を込め、自分の商人ギルドプレートと一緒にしまった。
最後にはダンにお礼を言い、部屋を出た。
商人ギルド内ではエルフは一人もいなかったため、ソフィアが目立っていた。
悪意ある視線も感じられ、先ほどのダンがどれだけいい人だったかがわかる。
そんな視線にさらされながらも僕たちは商人ギルドを後にした。
~~~~~
商人ギルドを出て僕たちはもう一度周りを見渡したがエルフはいなかった。
獣人も少ない上に奴隷になっている状況だった。今までの国では奴隷をそれほど意識しなくとも生活が出来た。
しかし帝国では奴隷に関わることがありそうで、僕たちの中の誰かが切れないか不安がある。
それでもいざと言うときのために予定通り帝国は回る。
手始めにフロックリンで帝国の空気を感じるため行動することをみんなで決めた。
ラシーア帝国全土で行商をしたいと説明すると通された部屋だ。
僕たちはおとなしい動物という事で一緒にいることを許されている。
ソフィアがお茶を飲みながら待っていると、小太りの男が入ってきた。
「初めましてエルフの商人さん。私は商人ギルドの行商人を担当しています。気安くダンとお呼びください。」
そう言って頭を下げ席に着いた。
「初めましてソフィアと申します。私はラシーア帝国全土をまわりたいと考えていますが、何か必要な手続きはございますか?」
「はい。帝国全土を行商で回るとなりますと、多額の金銭を負担していただく必要があります。ただの行商で有れば割に合わないと思いますが、いかがなものでしょうか?」
「そうなんですね。一般的な物では割に合わないと。それでは貴重な物を持っているとしたらいかがですか?」
「貴重な物・・・。物には寄りますが、その辺の商店や我々商人ギルドに売却したほうが利益が出ると思いますが。どうしても行商として歩きたいのですか?」
「はい。旅をしながら商売をした時、何か手続きに不備があって捕らえられたり罰せられることは避けたいですから。」
目の前のダンは考える格好をした。
「そうですね。あなたはエルフですよね? エルフであれば何か言いがかりをつけて奴隷にしようと企む者も出てくる可能性があります。この帝国でもエルフの奴隷は高額に取引されていますから。」
「そうなのですか・・・。あまり奴隷を見ることがなかったので・・・。私は危ないですか。」
「はっきり言うと危ないです。ですから行商はあまりお勧めできません。しかしどうしてもと言うのであれば正規の手続きを踏み、どうやって利益を出すかを考える事が大切だと思います。」
目の前のダンは信用できそうな人間に思える。
ハッキリと危険も教えてくれて、不利益にならない方法も教えてくれる。
ソフィアの顔を見ると同じ考えなのか口を開こうとしている。
「ありがとうございます教えていただいて。それで、正規の手続きのお値段や、素材や商品での支払いは可能か教えていただきたいのですが。」
「私は心配ですが、人の商売に口を挟むことはできませんね。損をしないようにうまくいくことを願っています。」
一息つき
「もし素材でと言うのであれば、ドラゴンの爪や鱗が数枚、ミスリルなどの素材であれば可能です。」
そう言ったダンは金銭での支払額も教えてくれた。
「それでは素材でお願いしたいのですが。」
「どんな素材ですか? 少し鑑定する時間もいただきますが。」
「はい。どんなドラゴンであればよろしいですか? あとミスリルであればどの程度の量があればよいですか?」
「ドラゴンで言うとワイバーンなど劣等種は五本は欲しいですね。アースやレット、グリーン、ブルーであれば一本で十分です。」
「それでは一番あるアースドラゴンの爪を一本でお願いします。」
そう言うとソフィアはアースドラゴンの爪を一本取り出した。
僕たちがダンジョンで獲得したドラゴンが一番多い。
魔の森のドラゴンはそこまで数がいなかったから。
「一番たくさん・・・。アイテムバックも持っている。ソフィアさん、あなたは・・・。」
「仲間や家族に恵まれているだけですよ。商人としては経験が少ないですから。」
「わかりました。それでは一度お預かりします。」
そう言ってダンは一度ドラゴンの爪をもち退室した。
僕達も念話でダンは信用できそうだと話したり、どんな反応が返ってくるか話していた。
しばらく念話で会話しているとダンが戻って来た。
「ソフィアさん。本物と確認が取れました。この素材で行商の資格を得ることが出来ますがよろしいですか?」
「はい。よろしくお願いします。」
ソフィアが返事をすると書類を出してきたため、ソフィアが手続きをした。
最後にダンが一つのプレートを出しソフィアに渡した。
「そのプレートが帝国全土で行商を行うことが出来る証明になります。なくした場合の再発行は同じくらいの金額がかかります。そしてそのプレートは最後に魔力を込めないと個人の証明になりませんので、今一度で良いので魔力を込めてください。最後に、ソフィアさんはエルフ。貴族や盗賊、悪いやからにはお気をつけて。」
ダンは最後まで心配してくれたようだ。
悪い気配は感じられない。
あのクロウも念話で良い人と言っている。
ソフィアはプレートに魔力を込め、自分の商人ギルドプレートと一緒にしまった。
最後にはダンにお礼を言い、部屋を出た。
商人ギルド内ではエルフは一人もいなかったため、ソフィアが目立っていた。
悪意ある視線も感じられ、先ほどのダンがどれだけいい人だったかがわかる。
そんな視線にさらされながらも僕たちは商人ギルドを後にした。
~~~~~
商人ギルドを出て僕たちはもう一度周りを見渡したがエルフはいなかった。
獣人も少ない上に奴隷になっている状況だった。今までの国では奴隷をそれほど意識しなくとも生活が出来た。
しかし帝国では奴隷に関わることがありそうで、僕たちの中の誰かが切れないか不安がある。
それでもいざと言うときのために予定通り帝国は回る。
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