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第四章 不思議な世界

第百四十四話 次の色んな面での行き先は

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  僕たちが次の行き先を悩んでいると、精霊さんと妖精さんの言葉を翻訳したソフィアが話し出した。


「次はジルアキラン教国でお願いします」

「何故? 妖精さんか精霊さんの頼み?」

「そうですよ。でも他にも理由はありますけどね」


  ソフィアがそう言うから、僕たちの次の行き先はあっさりとジルアキラン教国になった。

  だけどここまでやった事で何かはあるんだろうね。貴族も罰が与えられたとはいえ、次の人に権力が委譲されたし、妖精を手にいれた事も目立つしね。


  そんな先の事件が予見されるものの、ジルアキラン教国への旅の準備をしていた。


……
……


  ……旅の準備をするうちに、不思議な人形が気になり始めた。

  おそらくこれも貴族っぽい人が手にいれていたから、確認できないものだから謎が深まる。

  それにこの魔力放出病は明らかに魔人の仕業だろう。でなければいきなりこんな感じで流行らないだろう。


……


  で 、僕たちは今旅の準備で訪れた冒険者ギルドで、弟子たちに囲まれた後に、商人ギルドに行かなければいけない用事ができ、商人ギルドでサントールからサポイタンヒュージュン病ではなく、魔力放出病の治療薬に必要な素材が不足していると言われた。


  だから今僕たちがいるのはナイデラ交易国の港から離れた浜辺だった。

  ここで、何でここでと言われるかもしれないが、ここで採取できる貝殻も魔力放出症の治療薬の素材だ。

  デーブンが昔浜辺を爆走したように、頑張ればいくらでも採取できる素材だが、あいにく僕たちの弟子以外の冒険者にはちょっと難易度が高い場所だった。


  ――ここは珍しくゴブリン以上の魔物がいて、今の冒険者ギルドでは依頼を受けれるほどのランクの冒険者は集まっていない。かき集めたら良いと思われるが、それはもう少し待たないといけないと思われる状況だった。


  この後に魔力放出病が一般的になると、稼げると言う噂を聞き付けた冒険者がナイデラ交易国にも来るだろう。もしくは他の国の海岸で素材を採取して薬が作られるようになるだろう。だけど今は移行期……まだまだ高額の依頼と出来ない商人ギルドの事情もあるだろう。


  だから僕たちは出来る限りの素材を集めた(後に納めた)。


  ――だがそこに不穏な気配も近寄ってくる。


「おい! お前らがラーバンスト王子に何か言ったんだろ! ――お陰で私は引退させられたぞ! ……だが私は納得しない、お前らのような下賎な者が何をやっているんだ! 黙って私のような高貴な者に雇われるべきだろうーー?」


  あ~あのオークション会場にいた伯爵様? それにこの三十人くらいの人は武装しているから私兵? ――これはラーバンストに小一時間くらい愚痴を言っても良い状況か?


「――今さら沈黙しても遅い! ――お前らは私の復権の糧になれ! ――あ~、私の慰み物になるのも決定だがな。……この私の私兵を前にして、抵抗など出来ないだろ!?」


  ――何か勝手に話が進んでいるけど……精々ゴブリン程度、いやゴブリンにも劣るような戦力で何を言っているんだろう?


「ククッ! 諦めたか流石に……いくらSランク冒険者とは言え、この人数相手にはな! ――おとなしく縄をかけられよ!」


  え~と、何伯爵だかわからないけど、伯爵の言葉で兵士が僕たちに駆け寄ってきた。完全に武装、攻撃的によってきたが、少しも身の危険を感じない……


「――ん~仕方がない……サクラ! あの武器には慣れた!? 鎌とは違うから使い勝手が悪いだろうけど!」


「――大丈夫よラウール! 私に扱えない武器はない……」とサクラが言うと手には真っ黒な大槌が……

「で、このラウール特製の大槌を――――ん!――――うりゃ!」とサクラが大槌を砂浜に振り下ろす――


  すると砂浜が爆発したように伯爵の兵士に砂が押し寄せ視界を塞ぎながら、砂の塊が体にぶつかる――


  更に追い討ちをかけるようにヤマトが黒猫の姿のまま大きくなり――それはもう十メートル程になり咆哮を放つ――


  ――それだけで何伯爵の集団は制圧された。


……
……


  目の前の砂が消え去り、目の痛みも治まった後に見えたのは、大きな猫だった。

  ――勿論いきなり目の前に現れた十メートルはある猫は、兵士にとっては魔物――自分よりも強者に感じるほどの存在感を放っていた――


  追い討ちで、目の前には砂浜なのに大きなクレーター状の大地がある。
  ――この一撃を喰らったら……そう兵士は考えたのだ。


「で、まだやる? ――一方的な、理不尽な敵意だと思うんだけど。――それに、引退になった伯爵とは言え、王子に逆らっても大丈夫なの?」


  僕がそう言うと、目の前の何とか伯爵は何も言えなかった。

  だが、このままでは引けなかったであろう何とか伯爵が僕たちに向かって走って来ると、剣を抜き斬りかかってきた。


  ――これは拙いな。

  ――罪を重ねるだけだろう……そうであれば……


  僕は――ガイブンを――思い出す――
  ――ガイブンは陰で成敗したが、今のこの人はどう対処するべきか……


  ――ガイブンと同じくこっそり殺る?

  ――今、この瞬間に殺る?

  ――王子が処分したのに、改心しない、この後も改心が期待できないけど、ラーバンストに任せる?

  ――後回しにしても何も変化はないと思われる人には、どう対処するべきか……



  ……あ~、昔からの記憶が思い出される。人は改心できるなら、大体の人ははじめのきっかけや、罪の意識で変わる。
  だけど変われない人も、何か自分だけの事を思わず、人の事を考えたときに変わるきっかけが与えられる。
  ――稀に、自分のことだけを考えて行動した結果が良い結果をもたらすこともあるが…………逆に自分だけの正義感を相手に押し付けて、相手を不幸にするだけの存在もいるが……。善意のための善意や正義は相手にとっては不幸で重荷である。

  だからこそ、自分以外の人はどこまでも理解できない人だと思わなければいけない。

  ――だけどその中に自分の事を理解できなくとも、理解しようとしてくれる人は貴重だ。

  ――更にその中で信用した人はもっと貴重だ。


  その信用していく過程を、身分だから、性別が違うから、容姿が釣り合わないから、趣味が違うから……違うところだけ探して拒絶するのは間違っていると思う。



  ――そんな自分の価値観と、あの時やってしまったガイブンについてを今、この瞬間に考えてしまう。


……
……


  ガキンッ!
  何とか伯爵の剣を、僕のあの黒い刀で切れないようにして止める……

  この刀と、何とか伯爵の趣向がこらされた剣の鍔迫り合いを自分の目で見て――――何か僕の心の対立と同じか? と瞬間的に思い、可笑しくなる。


  ――僕は自分が気に入らないからと、戦っているときではない場面で、実力が劣る人を一方的に成敗した……


  だったら今僕がやることは?


  ――鍔迫り合いになりながら、一寸考えてしまった。

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