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第三章 上を目指して

第百二十二話 バイアント王国のゴブリン狩り

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  凄まじい速さで消えていったクロウとヤマトを横目で確認しながら、僕とサクラはゴブリンの気配を探しながら先に進んだ。

  今日もサクラは大鎌を装備して、やる気が溢れている。
  そんなサクラとは違い、僕はただの棒を装備している……だけど邪魔な草を寄せるのは楽だよ……って、魔法ですむけど……


  そんな余計な事を考え、見つけたゴブリンを倒しながら先に進んだ。


  今発見しているゴブリンは、以前の防衛戦とは違い、バラバラに動いている印象だ。
  上位種が率いているゴブリンは別なのだろうが、集団から離れたゴブリンはこんなもんなんだろう。
  これなら僕たち以外の人たちも以前ほどは苦戦しないだろう。


……
……


  初日のゴブリン狩りが終わった。
  悔しいことに上位種は一匹もいなかった。


……
……


  二日目、三日目と上位種が出てこず、たった数日だが焦れったくなり、王都から離れることにした。

  ギルマスには事情を説明し……まーーゴブリンの上位種に会わなくて悔しいと話し……遠くまで行ってくると告げた。

  だがエントルギルマスは王都の心配もしたので、ここは僕たちのミスリルゴーレム馬を置いていく事にした。

  戦闘力を見せつけると唖然として許可してくれたので、王都の防衛力強化には十分だろう。ただ、邪な考えを誰も持たないようにして――と釘を指しておいた。


……


  僕たちは野に放たれた……って、元々自由に過ごしていたが、周りに誰もいないから今までの自重を取り払った。
  ……相変わらず人前で自重しない行動はなかなか出来ない。これはもう性格だな。


……

  
  行動範囲が拡がり僕たちはホブゴブリンやゴブリンリーダーなどは倒すことができた。
  そこで一度クロウに出会ったが、クロウはゴブリンの魔人を一匹だが倒していた。


  その事を聞いて悔しくて、僕たちは移動速度を上げた。

  ――その結果、僕たちパーティーは国中を走り回って……飛び回ってしまったのだが……まーー回ると言うか移動しまくったのだが……


……


  何か競争原理なのか一心不乱にゴブリンを倒しまくった。
  集落はもちろん単独で歩いているゴブリン、冒険者らしい人が苦戦していたゴブリンまで、自由に倒していった。

  ついつい14日ほどゴブリン討伐をしてから「やってしまったね……」とサクラと話をした。


「これはおそらく他の人の仕事を奪ったね……」
「そうねラウール……」
「これが出てきたってことは……」
「もう大分生態系が戻って来る証拠だね。」
「……じゃあ久しぶりの肉をお届けしましょうか……」
「――だね、じゃあラウール! 共同作業よ!」

  ――僕たちの目の前にはいるオークは、バイアント王国の国境よりも馬車で数日の位置にいた。
  これはゴブリンが大分いなくなった証拠だろう。魔素が溜まったというよりは、移動してきたオークだと思う。
  ん~、もう少しだ!


  もちろんオークはあっさりと倒して収納した。
  これは王都で売りに出そう。肉に飢えた人たちがいくらで……


……


  変に守銭奴な思考に片寄り始めていたが、僕たちは王都に移動し、危ない目にも合わずに到着した。


  クロウたちとも待ち合わせをしていたので、久しぶりに皆が揃った。

  僕たちはそれぞれの成果を話したが、ここはやはりクロウが一番だった。

……
……


  クロウが話した事だが……


  ――ガラガラガラガラ――
  ん? なんだあれ? 我見たことないな……立派な馬車?

  クロウが音のする方を見ると、立派な馬車……おそらく国王が使った馬車が走っていた。

  その馬車を引いていたのがゾンビ? 人間族で生命がない者だった。

  更に馬車に乗り鞭でゾンビを叩いていたのが、ゴブリンだった。
  感じる気配は魔人並み……

  我見つけたよ! と心の中でクロウは叫んだらしい。
  それでクロウはゴブリンを倒そうと近づき、わざと見つかったそうだ。

  で、クロウを見つけたゴブリンの魔人は出来る魔人だったようだ。

  クロウの強さを感じたのか、一気に逃げの体勢になると、クロウがいる反対に走り出した。

  しかし魔人くらいを逃がすクロウではなかった。
  クロウはゴブリンの魔人に向かって氷の魔法を唱えると、簡単に凍らせてしまったそうだ。


……
……


  それが今僕たちの目の前に出されたゴブリンだ。

  姿かたちはただのゴブリン……しかし今までの経験上、魔石に違いがある。

  魔人化すると何故か強くなるほど上位種の姿ではなく、一番弱かった頃の種の姿になる。
  はじめは魔物から魔人になったから? 人から魔人になったから? と思っていた事だが、予想は外れていたようだ。
  たまたまはじめの頃にあった魔人の傾向が、魔物から魔人になった方が弱く感じていただけだった。
  ようは原点に戻った姿の魔人は強い。
  他にはタランのように独自の形になった魔人が強い。まるで魔物が進化して独自の形になった方が強いように……


  
……


  成果の比較では負けてしまったが、これでようやくバイアント王国の問題は解決に向かった気がする。


  そう考えながらミスリルゴーレム馬を回収し、王都バイアントに入るために通行門に向かった。


  通行門の列に並ぼうとした僕たちを見つけた騎士が声をかけてきて、僕たちは待つこともなく王都に入ることができた。

  ……その代わりではないが、騎士は僕たちを冒険者ギルドまで先導した。何となく断ることもできず……僕たちは冒険者ギルドに入った。


  ん~、何から説明しよう。僕たちは念話で相談を始めた。
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