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第三章 上を目指して

第百十話 オーション市周辺の盗賊討伐

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  僕達は出迎えに来た騎士に……いや、警戒していた騎士に軽く説明をして、先に眠っている獣人の男の子を渡す。
  眠っていたからか怪しまれたが、後ろにいる盗賊も引き渡すと、少しは警戒が解かれたようだ。真っ先に門の横にある調査室に一緒に移動した。

  その際にムカデ型ゴーレム馬車を何食わぬ顔で消す(亜空間収納に収納)と騎士だけでなく、僕達を見ていた大勢の人が驚いていた。


……


  調査室では先程から同じ騎士が対応していた。他の人が頭を下げているから、偉い人かもしれない。


「さて……私はこの出来事をどうとらえたら良いのだろう。結果的には君達が誘拐された子を救ったように思えるが……」


「大丈夫よその認識で。私達は冒険者ギルドの依頼で盗賊討伐の依頼を受けた。で――盗賊の拠点を抑えると、あの子がいた……それだけよ――」


  サクラ……何か格好が良いよ!


「――それだ! おい! 冒険者ギルドに確認に行け!」

  急に大声を出した騎士の声に驚いたが、誰かが冒険者ギルドに向かったようだ。


……
……

  ただお茶を飲みながら待つ。
  念話での会話もなくただ静かに待つ。

……
……


「フム……」と僕達と会話していた騎士が呟いた。……誰かが冒険者ギルドからの情報を伝えたようだ。
  
  僕達はこの部屋に入る前に身分を明かしていた。その情報とも一致しただろう。


「黒猫の――すまん! ……最近の誘拐騒ぎで私も混乱していた。……だがあれはないだろう? 噂? なんとなく伝え聞いてはいたが、ゴーレム馬車……なんだあのムカデ型は! 魔物で言うビックセンチピートか? あ――」


  何かこの騎士にダメージを与えたようだ。


「こちらこそすいません。僕達が何も言わず……冒険者ギルドにでも移動手段を伝えておくべきでした。」


  こんなに話をして僕達の誤解が解けたと共に、この騎士の信用も得られたようだ。


  ――僕達に相対したこの騎士はケメド・パンテと自己紹介した。何でも騎士爵で警備騎士筆頭らしい。五十歳くらいだと言うが、もっと若いと言っても通じる程肉体が凄い……


……
……

  通行門で時間はとられたが無事にオーション市に入ることができた。
  そこでまた冒険者ギルドに移動して何か依頼を確認することにした。


……


  冒険者ギルドに入ると何か変な視線を感じたが無視し、盗賊討伐の依頼を受けたときの受付さんに声をかけた。

  その受付さんも何か目を見開いていたが、次に解決して欲しいと言う盗賊討伐の依頼票を差し出してきた。


  流石に今日はもう時間がないから討伐の拠点には向かわないが、明日――きっちりと始末することにする。


……
……


  ここから数日……数週間と小規模な盗賊の拠点があるという情報が寄せられた場所に向かった。

  矢張幾つかは噂だけなんだろう……いくら気配を探っても盗賊はいなかった。
  途中からはクロウとヤマトにも協力してもらい、盗賊討伐を進めていた。


……
……


  大体盗賊は三百人くらい捕らえた……それで救えた子供はたった五人程度……はじめの獣人の男の子を入れての数だから、なんとなく切ない……
  もし僕達がもう少し早く気づけたら、もっと助ける事ができたのではないかと……自分の力の無さにイラついた。


……


  それでも感謝された。救われた子の親が何処からか情報を仕入れてくるのだろう……って、門前で隠していないからわかるだろうね…………お礼を言いに来る人がいる。


  だけどお礼を言われるほど、未だに見つからない子の親にどう思われているのかが……ちょっと気になる……
  私達の子はどうして救ってくれないのか! ――そんなことを言われるかと思うと辛い……


  それもこれも誘拐犯の……更に一番後ろにいる黒幕が悪いんだ!
  僕は……僕達はその生き物を恨んだ……僕達でも無理なこと……時間の巻き戻し。……それを願うほど、次代の子に害する存在は許されない。……この価値観はいつから持ったかわからないが、僕達の戦う理由はこれだと思っている。


……


  そしてまだしばらく盗賊討伐を続けた。

  どれだけ盗賊がいるのか……いや盗賊以外の人もいただろうが、等しく捕らえた。更に市中依頼で怪しい人物も捜索――捕獲する依頼も受けていた。

  騎士との合同の仕事になるが、この頃になると僕達の実力は知れ渡り、誰も文句を言うものはいなかった。
  


……
……


「おし! お前ら行くぞ!」とケメド・パンテが号令をかけた……

……ケメドさん? あなたの仕事とは違うのではないでしょうか?

「「「おおーー!」」」


――何故ケメドさんの言葉で盛り上がっているのでしょうか?


  だがそれは頭の隅に置き、これから商会に討ち入りだ! ……討ち入りとは言い過ぎかもしれないけど、貿易の際に、両国の間で誘拐した子を隠し運んでいる商会と浮かび上がってきた商会だ。


  西大陸の商会も浮かび上がってきたが、アルグリアン王国として対処できるのは、アルグリアン王国に店舗を置くこの商会だけだ。


……
……


「おし、着いたぞお前ら! ――ここからは一旦俺が対応するから、合図があったら来い!」


  静かに「「「はい……」」」と兵士が返事をした。


  目の前にある商会はグルアクユ商会……ボーヤンさんが所属している商会……。願わくば、ボーヤンさんは何も知らなければ……


  そう思いながら僕達はグルアクユ商会を取り囲む依頼を受けて――今グルアクユ商会を囲む一員になっている。
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