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第二章 冒険者活動
第六十一話 妖精さんの主は……
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僕達の周囲には腰を抜かした集団がいる。
サクラが発した威圧が原因だが、僕達は悪くない。
そのように考えながら周囲を見渡していると、ようやく組織だった騎士が駆けつけて来た。
僕達だけが立っていて、周囲の人は座っている。騎士はこの現状を何とか受け止めて、騎士見習いに話し掛け、事情を聞いているようだ。
……
……
……
それなりの時間をかけて騎士見習いから話を聞き出し、騎士達でも話し合いが行われた。
そして周囲の人がようやく立ち上がり始めた頃に、騎士の組織内でリーダーらしき人物が近づいてきた。
「こんにちはラウール様、サクラ様。私もあなた様方とプッチモ王子の訓練では一緒に演習場で鍛えていただきました。私はデグターです。今は勤務中ですので名字は名乗りませんが貴族です。」
「ああそう、私はサクラ。演習場に……いたような気もするわね。それでこの始末は誰がどうつけるの?」
ガイブンもデグターに話しかける。
「おい、早く私にあの生き物を寄越すように話すのだ。俺をお前は知っているだろ?」
デグターはその言葉に冷ややかな表情で聞いていた。
「この状況がどうやって出来たのかは聞いた。私は立場に関係なく法で判断する。今は爵位の高さも関係ない……」
そうデグターが話し出した。
はじめに当然だが貴族でも人のものを無条件で取り上げる権力はない。
そのためのソフィアは僕達のもの。
無理矢理取り上げる事は犯罪にあたる。
もちろん不敬罪が適応される場合でも、正式な手続きをとり罪に対する清算が行われる。
一番はじめにここに駆けつけた騎士に確認した限りでは、僕達は威圧が漏れた以外は非がないと説明された。
「ふんっ! そこの子供達が初めに、金ほしさにその妖精を売ると言ったんだ。一度は口約束でも売ると言った言葉を急に変えたんだ。そんな子供より私が所有した方が妖精の安全が図れるだろ。だから最後は寄越せともめたが、ただで譲れとは言っていないな。」
そうガイブンがニヤリとした。
「ああん!? 私達がいつ売ると言ったのよ! 言っていないわよ! 」
ガイブンはそれを聞いてまたニヤリとした。
「ほら見ろ。こんなに感情的になる子供だぞ。なーーお前ら、この子達は私に妖精を売ると言ったよな? それも安すぎる金額でな?」
ガイブンが自分の護衛にそう声をかけると「へい! その通りです!」と答えていた。
それを聞いた騎士達も考え込んでしまった。
売ると一度は言った口約束……
言っていないとも、言ったとも第三者が証明できないこの状況……
その微妙な雰囲気の中でデグターがいち早く話し始めた。
「誰かこの辺りにいる者で会話を聞いていた奴はいないのか?」
そう周囲に声をかけた。
……
……
すると一人の男が恐る恐るといった様子でデグターに歩み寄った。
「俺は聞いていたぜ! その子がお金に困ってるから妖精を格安でも良いから買って欲しいと言っていたぞ!」
そう言ってもいないことを話し出した。
この仕込みのため……にあの馬車から降りたやつか!
周囲の声もそれを聞いてザワザワし始めた。
「そんなことは言っていなかったよな?」
「ああ、あの子達は騎士爵に勲章持ちなんだろ?」
「おい、あいつはジュール商会の小間使だろ?」
「あそこに出ていくとジュール商会に目をつけられるな……」
うーん、ジュール商会はなかなか悪どいところもあるんだろう……
「ちょっとデグターさん! 私達は言ってもいないことを言ったと言われて、どうしたら良いのよ! 証明できないわよ! この子は私の家族だし、いくらお金を積んでも売るなんて言わないわよ。それにお金なんてどうにでもなるわよ!」
「はん!嘘をつくな! 爵位はあるかもしれないし、勲章があっても、金は欲しいんだろ?」
憎たらしい表情をしてガイブンが話す。
騎士も折角登場したのに、頑張ってよ!
「だから私がさっき言っていた金額で買い取るぞ。不満なら第三者を立てて法に照らし合わせて争うぞ? それでも良いぞ。だが、法務局の奴らにその妖精は預けるんだな。」
はーー? どっちにしても其所に手を回すんだろうな。この国の法を理解していない僕達……。まだこの世界に来て短く、知り合いが少ない僕達……。後回しにするほど面倒だろうな。
「この子と離れることは出来ないわ! それにこれ以上言い争っても公平にもならないわ。口約束で契約が成り立つわけがないでしょ?」
それでも余裕なガイブン。
「だから第三者に判断してもらおう。」
そう言ったガイブンに又近づく男がいた。その男はガイブンが降りてきた馬車から出てきた。そして何かの紙を手渡した。
……
「ほらっ。これがさっきの約束を文章にしたものだ。後は名前を書くだけになっているだろ? これが取引をしていた証拠だ。」
はーー? サインもない文章でもでっち上げか? それで通るのかこの世界は……
まさかね、何か言ってよデグターさん!
「んん……ですがまだ取引は完了していないのですよね? それだとサクラ様が売ると決めてはいないですよね?」
「はあーー! ここまで取引を進めておいて何を! おいそこの騎士! 私とこいつらの契約が中途半端に打ち切られたのだぞ! 違約金が発生するぞ! その違約金代わりにその妖精を受けとるんだ!」
……論点のすり替え、少しずつそれていく内容……詐欺師か!
事実だけを抜き出して行くと僕達のものである事は明白なのに……
武力以外で解決出来る方法はないのか?
サクラが発した威圧が原因だが、僕達は悪くない。
そのように考えながら周囲を見渡していると、ようやく組織だった騎士が駆けつけて来た。
僕達だけが立っていて、周囲の人は座っている。騎士はこの現状を何とか受け止めて、騎士見習いに話し掛け、事情を聞いているようだ。
……
……
……
それなりの時間をかけて騎士見習いから話を聞き出し、騎士達でも話し合いが行われた。
そして周囲の人がようやく立ち上がり始めた頃に、騎士の組織内でリーダーらしき人物が近づいてきた。
「こんにちはラウール様、サクラ様。私もあなた様方とプッチモ王子の訓練では一緒に演習場で鍛えていただきました。私はデグターです。今は勤務中ですので名字は名乗りませんが貴族です。」
「ああそう、私はサクラ。演習場に……いたような気もするわね。それでこの始末は誰がどうつけるの?」
ガイブンもデグターに話しかける。
「おい、早く私にあの生き物を寄越すように話すのだ。俺をお前は知っているだろ?」
デグターはその言葉に冷ややかな表情で聞いていた。
「この状況がどうやって出来たのかは聞いた。私は立場に関係なく法で判断する。今は爵位の高さも関係ない……」
そうデグターが話し出した。
はじめに当然だが貴族でも人のものを無条件で取り上げる権力はない。
そのためのソフィアは僕達のもの。
無理矢理取り上げる事は犯罪にあたる。
もちろん不敬罪が適応される場合でも、正式な手続きをとり罪に対する清算が行われる。
一番はじめにここに駆けつけた騎士に確認した限りでは、僕達は威圧が漏れた以外は非がないと説明された。
「ふんっ! そこの子供達が初めに、金ほしさにその妖精を売ると言ったんだ。一度は口約束でも売ると言った言葉を急に変えたんだ。そんな子供より私が所有した方が妖精の安全が図れるだろ。だから最後は寄越せともめたが、ただで譲れとは言っていないな。」
そうガイブンがニヤリとした。
「ああん!? 私達がいつ売ると言ったのよ! 言っていないわよ! 」
ガイブンはそれを聞いてまたニヤリとした。
「ほら見ろ。こんなに感情的になる子供だぞ。なーーお前ら、この子達は私に妖精を売ると言ったよな? それも安すぎる金額でな?」
ガイブンが自分の護衛にそう声をかけると「へい! その通りです!」と答えていた。
それを聞いた騎士達も考え込んでしまった。
売ると一度は言った口約束……
言っていないとも、言ったとも第三者が証明できないこの状況……
その微妙な雰囲気の中でデグターがいち早く話し始めた。
「誰かこの辺りにいる者で会話を聞いていた奴はいないのか?」
そう周囲に声をかけた。
……
……
すると一人の男が恐る恐るといった様子でデグターに歩み寄った。
「俺は聞いていたぜ! その子がお金に困ってるから妖精を格安でも良いから買って欲しいと言っていたぞ!」
そう言ってもいないことを話し出した。
この仕込みのため……にあの馬車から降りたやつか!
周囲の声もそれを聞いてザワザワし始めた。
「そんなことは言っていなかったよな?」
「ああ、あの子達は騎士爵に勲章持ちなんだろ?」
「おい、あいつはジュール商会の小間使だろ?」
「あそこに出ていくとジュール商会に目をつけられるな……」
うーん、ジュール商会はなかなか悪どいところもあるんだろう……
「ちょっとデグターさん! 私達は言ってもいないことを言ったと言われて、どうしたら良いのよ! 証明できないわよ! この子は私の家族だし、いくらお金を積んでも売るなんて言わないわよ。それにお金なんてどうにでもなるわよ!」
「はん!嘘をつくな! 爵位はあるかもしれないし、勲章があっても、金は欲しいんだろ?」
憎たらしい表情をしてガイブンが話す。
騎士も折角登場したのに、頑張ってよ!
「だから私がさっき言っていた金額で買い取るぞ。不満なら第三者を立てて法に照らし合わせて争うぞ? それでも良いぞ。だが、法務局の奴らにその妖精は預けるんだな。」
はーー? どっちにしても其所に手を回すんだろうな。この国の法を理解していない僕達……。まだこの世界に来て短く、知り合いが少ない僕達……。後回しにするほど面倒だろうな。
「この子と離れることは出来ないわ! それにこれ以上言い争っても公平にもならないわ。口約束で契約が成り立つわけがないでしょ?」
それでも余裕なガイブン。
「だから第三者に判断してもらおう。」
そう言ったガイブンに又近づく男がいた。その男はガイブンが降りてきた馬車から出てきた。そして何かの紙を手渡した。
……
「ほらっ。これがさっきの約束を文章にしたものだ。後は名前を書くだけになっているだろ? これが取引をしていた証拠だ。」
はーー? サインもない文章でもでっち上げか? それで通るのかこの世界は……
まさかね、何か言ってよデグターさん!
「んん……ですがまだ取引は完了していないのですよね? それだとサクラ様が売ると決めてはいないですよね?」
「はあーー! ここまで取引を進めておいて何を! おいそこの騎士! 私とこいつらの契約が中途半端に打ち切られたのだぞ! 違約金が発生するぞ! その違約金代わりにその妖精を受けとるんだ!」
……論点のすり替え、少しずつそれていく内容……詐欺師か!
事実だけを抜き出して行くと僕達のものである事は明白なのに……
武力以外で解決出来る方法はないのか?
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