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報告書40「大空洞、深淵を覗きヒュンしている時深淵もまたヒュンしている件について」
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リソーサー・ヒトガタで溢れ返る東京駅ダンジョン地下エリア。これはつまりチトセの言う通り、さっきの一体は撃破対象の未確認リソーサーではなく、どこにでもいる1体だったという事か。それにしても全くどこにいっても人、人、人、これだから気の休まる暇がない都会は嫌いだ。せめてもの救いは、あの団体がまだこちらの正確な位置を把握していないという事だろうか。さっきの個体といい、どうやらヒトガタは主に視覚によって敵を探すのだが、スキャナーの暗視機能までは再現されていないようだ。
「さぁてどうする?あっちは多数、こっちは少数」
「どうするたってもなぁ……とりあえずチトセの案は?」
「もちろん正面突破よ。それが一番の近道だし」
「相変わらずの爆弾女っぷりだな。こっちにはソーサラーがいないんだ、術でまとめて一網打尽とはいかないんだぜ」
「言うわね。それなら他の案を聞かせてもらおうかしら」
「うーん……どこかに回り道でもあればなぁ……」
<<回り道ならなくもないようじゃぞ>>
そう通信すると、イクノさんはスキャナーのマップに進路を示す矢印を表示し始めた。
<<映像を見たところ、ヒトガタは一ヶ所に固まっているようじゃな。なのでさらに下、地下5階の横須賀・総武線エリアの通路から回り込むというのはどうじゃ?>>
なるほど。マップを見るに、確かに丁度真下を通って行けるようだな。これなら上手く行けばあの団体客をやり過ごす事ができるかもしれない。
「なかなか良い案じゃないイクノ。2人はどう?」
「賛成だ。なるべく損害の少ない方法をまずは模索するべきだからな」
「……」
「ササヤさんはどうかしら?」
「……えっ?あっ、えっと、はい!私も賛成です」
チトセに声を掛けられ、慌てて返事をするササヤさん。あの真面目なササヤさんが話を聞いていなかったとは珍しいな。
「それじゃ、早速行きましょうか。下はここよりも混雑してない事を祈りましょ」
「了解」
「あっ、えっと、はい……」
そうして俺達はさらに下、横須賀・総武線エリアという、この駅の最下層に向かう事となった。それにしてもどんだけ長い階段で、どんだけ地下に降りればいいんだ。マップによると地下5階まで降りてきたようだが、無事に再びお日様を拝めるのか心配になる深さだ。
「懐かしいわね~。この辺で行き倒れているあんたを拾ったのよ。全くあの時は片腕は無いし意識も無いしで肝を冷やしたわよ」
「ふんっ。好きで行き倒れてたんじゃないぜ」
「はいはい、私は雇用主ア~ンド命の恩人なんだからこれからもしっかり稼ぐのよ」
「くぅ、この鬼め!」
全く人を奴隷扱いしやがって、血も涙も無い女だぜ。せめてササヤさんはこんな風にはならないで願いたいな。
「ササヤさんはこいつみたいな守銭奴になっちゃダメだぜ……ササヤさん?」
さっきまで隣にいたササヤさんが見当たらない……もしかしたら……!と思い辺りを見回すと、少し離れた所にある、ホームを分断するほどの大きな亀裂というか穴の前に立ちその奥底に視線を落としているのを見つけた。全く驚かせる。
「どうしたササヤさん?この穴に何か?」
「なんだか……この奥底から声が……誰かが呼んでるような気がして……」
「誰かがって……」
大穴を覗いてみるが、そこにあるのは一体どれほど深いのだろうか、ただただ暗い、無限に広がると錯覚さえさせる深淵があるだけだった。落ちたらまず助からないだろうなと思うと、タマヒュンする光景だ。もちろん時折風が吹く音はしても、声なんかは一切聞こえてこない。
「2人とも危ないわよ。これが大空洞、リソーサーが地下から湧き出して来た時の穴なんだから」
「これがあの噂の……!てことはここは危ないんじゃ!?」
「最近はリソーサーの動きも小康状態らしく、以前のように次から次へと穴から這い出してくるってわけじゃないわよ。まっ、危ないのは確かだけど」
大空洞……話によると、今でこそ大規模な駅にならどこにでもいるリソーサーだが、その姿が初めて確認されたのがこの東京駅ダンジョンで、突如として開いた大空洞から夥しい数で現れ、瞬く間に駅をダンジョンに変えてしまったらしい。一体この深淵の先には何があるのか……調査のために潜って、生きて帰って来たものはいないらしい。
「さて、観光はほどほどにさっさと先に進むわよ」
「へいへい。行こうぜササヤさん」
「あっ……はい……」
どうしても大空洞が気になるのか、まるで後ろ髪を引かれるとでもいう感じで、進みながらもちらちら振り返るササヤさん。深い穴を覗いて何かが呼んでいると感じるのは、あまりいい傾向とは言えないな。彼女も疲れているんだろうか?
大空洞を後にした俺達一行は、再び長い長い階段を昇り、地下1階に戻って来た。恐る恐る辺りを見回すと、どうやら上手くヒトガタの団体を迂回できたらしい。
「やったわね。このまま京葉線エリアへ進むわよ」
「了解。チトセの言う通りに正面突破なんてしなくて正解だな」
「うるさいわね。時には考えるよりも先に動くのが正解な時もあるのよ」
そう軽口を叩きながら進むと、長い長い通路のような場所に出た。どうやらここが目的地の京葉線エリアらしい。後は目的の未確認リソーサーを探して倒して終わりだ。相変わらず薄暗い場所だが、なんとかなるだろ。
「あれ……?丁度エリアの中央部分から、何というか、よく知っている信号が感じられます……」
そう言うササヤさんが指し示す方向をスキャナーで確認すると、そこには背丈2m50はあろうかと言う長身に、ボディは禍々しい機動鎧甲風、そして太刀状の武器を持つリソーサーの姿ががあった。それにしても全くもって気に入らない見た目だ。何がって、あいつの左腕もまた、俺と同じように義手を付けているかのようだったのだから。
「さぁてどうする?あっちは多数、こっちは少数」
「どうするたってもなぁ……とりあえずチトセの案は?」
「もちろん正面突破よ。それが一番の近道だし」
「相変わらずの爆弾女っぷりだな。こっちにはソーサラーがいないんだ、術でまとめて一網打尽とはいかないんだぜ」
「言うわね。それなら他の案を聞かせてもらおうかしら」
「うーん……どこかに回り道でもあればなぁ……」
<<回り道ならなくもないようじゃぞ>>
そう通信すると、イクノさんはスキャナーのマップに進路を示す矢印を表示し始めた。
<<映像を見たところ、ヒトガタは一ヶ所に固まっているようじゃな。なのでさらに下、地下5階の横須賀・総武線エリアの通路から回り込むというのはどうじゃ?>>
なるほど。マップを見るに、確かに丁度真下を通って行けるようだな。これなら上手く行けばあの団体客をやり過ごす事ができるかもしれない。
「なかなか良い案じゃないイクノ。2人はどう?」
「賛成だ。なるべく損害の少ない方法をまずは模索するべきだからな」
「……」
「ササヤさんはどうかしら?」
「……えっ?あっ、えっと、はい!私も賛成です」
チトセに声を掛けられ、慌てて返事をするササヤさん。あの真面目なササヤさんが話を聞いていなかったとは珍しいな。
「それじゃ、早速行きましょうか。下はここよりも混雑してない事を祈りましょ」
「了解」
「あっ、えっと、はい……」
そうして俺達はさらに下、横須賀・総武線エリアという、この駅の最下層に向かう事となった。それにしてもどんだけ長い階段で、どんだけ地下に降りればいいんだ。マップによると地下5階まで降りてきたようだが、無事に再びお日様を拝めるのか心配になる深さだ。
「懐かしいわね~。この辺で行き倒れているあんたを拾ったのよ。全くあの時は片腕は無いし意識も無いしで肝を冷やしたわよ」
「ふんっ。好きで行き倒れてたんじゃないぜ」
「はいはい、私は雇用主ア~ンド命の恩人なんだからこれからもしっかり稼ぐのよ」
「くぅ、この鬼め!」
全く人を奴隷扱いしやがって、血も涙も無い女だぜ。せめてササヤさんはこんな風にはならないで願いたいな。
「ササヤさんはこいつみたいな守銭奴になっちゃダメだぜ……ササヤさん?」
さっきまで隣にいたササヤさんが見当たらない……もしかしたら……!と思い辺りを見回すと、少し離れた所にある、ホームを分断するほどの大きな亀裂というか穴の前に立ちその奥底に視線を落としているのを見つけた。全く驚かせる。
「どうしたササヤさん?この穴に何か?」
「なんだか……この奥底から声が……誰かが呼んでるような気がして……」
「誰かがって……」
大穴を覗いてみるが、そこにあるのは一体どれほど深いのだろうか、ただただ暗い、無限に広がると錯覚さえさせる深淵があるだけだった。落ちたらまず助からないだろうなと思うと、タマヒュンする光景だ。もちろん時折風が吹く音はしても、声なんかは一切聞こえてこない。
「2人とも危ないわよ。これが大空洞、リソーサーが地下から湧き出して来た時の穴なんだから」
「これがあの噂の……!てことはここは危ないんじゃ!?」
「最近はリソーサーの動きも小康状態らしく、以前のように次から次へと穴から這い出してくるってわけじゃないわよ。まっ、危ないのは確かだけど」
大空洞……話によると、今でこそ大規模な駅にならどこにでもいるリソーサーだが、その姿が初めて確認されたのがこの東京駅ダンジョンで、突如として開いた大空洞から夥しい数で現れ、瞬く間に駅をダンジョンに変えてしまったらしい。一体この深淵の先には何があるのか……調査のために潜って、生きて帰って来たものはいないらしい。
「さて、観光はほどほどにさっさと先に進むわよ」
「へいへい。行こうぜササヤさん」
「あっ……はい……」
どうしても大空洞が気になるのか、まるで後ろ髪を引かれるとでもいう感じで、進みながらもちらちら振り返るササヤさん。深い穴を覗いて何かが呼んでいると感じるのは、あまりいい傾向とは言えないな。彼女も疲れているんだろうか?
大空洞を後にした俺達一行は、再び長い長い階段を昇り、地下1階に戻って来た。恐る恐る辺りを見回すと、どうやら上手くヒトガタの団体を迂回できたらしい。
「やったわね。このまま京葉線エリアへ進むわよ」
「了解。チトセの言う通りに正面突破なんてしなくて正解だな」
「うるさいわね。時には考えるよりも先に動くのが正解な時もあるのよ」
そう軽口を叩きながら進むと、長い長い通路のような場所に出た。どうやらここが目的地の京葉線エリアらしい。後は目的の未確認リソーサーを探して倒して終わりだ。相変わらず薄暗い場所だが、なんとかなるだろ。
「あれ……?丁度エリアの中央部分から、何というか、よく知っている信号が感じられます……」
そう言うササヤさんが指し示す方向をスキャナーで確認すると、そこには背丈2m50はあろうかと言う長身に、ボディは禍々しい機動鎧甲風、そして太刀状の武器を持つリソーサーの姿ががあった。それにしても全くもって気に入らない見た目だ。何がって、あいつの左腕もまた、俺と同じように義手を付けているかのようだったのだから。
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