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第1章 南方でダンジョン巡り
第6話「聖地巡礼1首都」
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ただゲームをプレイするだけなら、世界観などの設定を知る必要なんて無いかもしれない。でもそれらに触れることで、心に今までとは違った何かが生まれるとしたら、知る意味が無いとは言えないわね。
あれから無事所持枠拡張クエストをクリアした私は、ガリラヤ湖でソロ狩りに勤しみ、マーマンを倒してはドロップアイテムを一つ残らずルートするという喜びを噛み締めていた。噛み締め過ぎて重量がいっぱいになったので、プレイヤーの手によってすっかり復興されたティベリア村に戻ろうとしたところ、彼からtellが来た。
「椅子借りで聖地巡礼っていうイベントクエストをやろうと思ってるんだけど、マグりんも一緒に行かないかなん?」
そんなクエストがあるのか。アニメのロケ地でも周るのかな。
「そのクエスト何か報酬とかあるの?」
思い出よりも何か形で残らないと、やる気が出ないのは人の性だ。
「さぁ何か貰えるらしいんだけど、最近始まったクエストだから詳細は不明ぽ」
ふーむ……しかし最近始まったクエストなら、報酬がアイテムだった場合高く売れるかも……
「暇だし行ってもいいよ」
「りょうかーい!椅子借りのカテドラル前にいるよん!」
まさかこの安易な考えの結果、長く辛い旅をする羽目になるとは、この時は思いもよらなかった……
首都イスカリオテは周囲を高い壁に囲まれた城塞都市であるが、その壁の内側には様々な施設がある。このイスカリオテ大聖堂、通称カテドラルもその一つだ。教会は魂の還る場所、すなわちホームポイントを決める場所としてや、旅団の結成受付場所として各拠点にあるのだが、ここほど大きい教会は他には無いだろう。また大きいだけでなく、首都にあるという利便性から、プレイヤー同士がゲーム内結婚をした際の、ユーザーイベントにも使われたりすることもあるらしい。私には関係の無い話だけど。
カテドラル前で彼と合流したので、クエストを始めるため中に入りNPCと話をすることにした。
「あなたは神を信じますか?」
いきなり胡散臭いセリフを吐く大司祭NPC。
「プラヤエルス教がこの地に根付き随分と時が経ち、その間この国は信仰により大いに繁栄してきました。しかし、その後の長く続いた戦乱により、教会や聖地は今大きく荒れ果ててしまい、信仰が揺らいでいます。なので私はあなた方のように、新しくこの地に参られた方々にこそ、今こそ聖地を巡り信仰を持って欲しいと考えています。」
確か、プレイヤーは西部地域と東部地域との戦乱で荒れ果てたこの南方に来た、流民というゲーム設定があるんで、このNPCはその事を言っているのだろう。
「皆様は我らが救世主、人の子、エグザ・プラヤエルスの足跡を辿ることで、各聖地にいる司祭が皆様に信仰のあり方と次の目的地を示すでしょう。」
つまり聖地巡礼とはその名のとおり、各場所を巡ってNPCと話すイベントということらしい。
「一つ目の聖地は、エグザが父なる神デヴェロから掲示を受けた『最初の地』シナイ山、その麓にある聖カトリアナ修道院です。父と子と聖霊によりて、ロギン」
シナイ山だって!?首都イスカリオテから遥か南、マップの南端近いあのシナイ山だって!?途方も無い距離を考えるだけで目眩がする。「今日はやっぱり近場で狩りして遊ばない?」
徒歩の移動だとリアルで45分以上、下手したら1時間はかかる距離だぞ、彼は分かってるのか。
「それもいいけど……話は変わるんだけど、こないだのマーマンキングのドロップ品で作ったこれあげるよん」
と言う彼から装飾品がトレードされてきた。
「これは!アクアマリンの耳飾り!」
以前から欲しかった宝石系装飾品!材料の宝石によって、各種ステータスアップの効果が付く中々の素敵アイテム!おまけにデザインも素晴らしい!
「まぁ、シナイ山は行ったことないし?たまには遠出もいいんじゃない?」
本当に、丁度毎日フーラの森とガリラヤ湖ばかりで少し飽きていたところで、私は物に釣られたりはしない。
「じゃあ早速出発ー。足は用意しておいたから、そんなにはかかんないと思うよん」
大司祭NPCから貰った巡礼者の証で、各NPCがクエスト用の会話をするようになるという、貝を象った胸部装飾品を装備し、クエストを開始することになった。そして、彼に付いて正門の外まで来て驚いた。
「馬車じゃん!買ったの!?」
馬一頭建馬車がそこにはあったのだ。
「野良PTで出た素材やら術書を売ったのと今までの貯金はたいてね」
うーむ、自家用車持ちとはなかなかやるな。
「でも一番安い馬車ね」
よく見ると、制作難易度が一番低くて安い、木製の屋根無し馬車だ。
「兵は巧遅より拙速を尊ぶって言うでしょ、いいから乗って乗って」
街道を通っての移動中、ふと思ったことを彼に聞いてみた。
「なんで急にこんな巡礼クエなんてやろうと思ったの」
何か実入りでもあるんだろうか。
「まぁ世界観とかの設定って知ってるとなんか楽しいじゃん。実際役立つこともあるかもしれないし」
確かにそれはあるかもしれない。
「じゃあ私を誘ったのはなんで」
前の野良PTで知り合った、他のフレンドでも良かっただろうに。
「マグりんじゃなきゃならない理由があったからだよん」
もしや……いやまさかそんな
「たき火を置けるとか」
次たき火するときは、こいつを薪にしてやる。
「ところでゴッドフリーなんて名前付けてるけど、神を信じてるの?」
前々から神自由って名前は意味不明と思っていた。
「うーん……映画インディー・ジョーンズ/最後の聖戦を見るとなんだか信じたくなってくるよねん」
インディー・ジョーンズはたまにテレビでやってるから観たことはあるけど、内容までは覚えてないなぁ。
「まぁ……変な宗教にドはまりしないように気を付けてね」
もちろん私は神なんて信じていない。祈るだけで財布が重くなる事は無いからね。軽くなることはあっても。
そんな話をしている内に、馬車はシナイ山前の最寄り街道に到着した。街道を外れるとMobが出没するようになるので、馬車は馬屋に帰らさせてここからは歩きだ。折角の馬車が壊されては帰りの足が無くなってしまうし。
街道から聖カトリアナ修道院までの道のりはそんなに離れてはなかったので、難なく到着した。聖カトリアナ修道院は、シナイ山の麓に位置し、また、修道院と名前は付くが銀行や浴場といった施設が揃っており、拠点としては村と同様のものだ。早速奥にある礼拝堂に入り、司祭NPCに話を聞くことにした。
「ようこそ御出でなさいました巡礼者よ。ここ『最初の地』シナイ山は救世主、人の子、エグザ・プラヤエルスがその山頂で父なる神、デヴェロから掲示を受けた聖なる地です。エグザはここで父なる神から人々に、友愛、鍛錬、感動を広め、その身に宿した聖霊により、悪霊を払うことでこの世界の歪みを直すことを示されました。山頂にはエグザが暖をとり今も燃え続ける『絶えぬ柴』が、その奇跡の一片を伝えております。」
神が示したのは、なんだか一般的な教えだが基本に立ち返れと言うことだろうか。
「次はエグザが悪魔に立ち向かい、そして打ち勝った地である試練の山、その麓のエリコの村にある教会にお行きなさい。父と子と聖霊によりて、ロギン」
試練の山か……西部地域と中央部地域との間にまたがる山岳エリアで、またまたなかなかの距離があるところだ。私はもしかしたら、とんでもないクエストに手を出してしまったのかもしれない。
「折角ここまで来たんだ、山頂まで行って絶えぬ柴を見ていこう」
とんでも無いのはクエストよりも彼の発想だったようだ……
あれから無事所持枠拡張クエストをクリアした私は、ガリラヤ湖でソロ狩りに勤しみ、マーマンを倒してはドロップアイテムを一つ残らずルートするという喜びを噛み締めていた。噛み締め過ぎて重量がいっぱいになったので、プレイヤーの手によってすっかり復興されたティベリア村に戻ろうとしたところ、彼からtellが来た。
「椅子借りで聖地巡礼っていうイベントクエストをやろうと思ってるんだけど、マグりんも一緒に行かないかなん?」
そんなクエストがあるのか。アニメのロケ地でも周るのかな。
「そのクエスト何か報酬とかあるの?」
思い出よりも何か形で残らないと、やる気が出ないのは人の性だ。
「さぁ何か貰えるらしいんだけど、最近始まったクエストだから詳細は不明ぽ」
ふーむ……しかし最近始まったクエストなら、報酬がアイテムだった場合高く売れるかも……
「暇だし行ってもいいよ」
「りょうかーい!椅子借りのカテドラル前にいるよん!」
まさかこの安易な考えの結果、長く辛い旅をする羽目になるとは、この時は思いもよらなかった……
首都イスカリオテは周囲を高い壁に囲まれた城塞都市であるが、その壁の内側には様々な施設がある。このイスカリオテ大聖堂、通称カテドラルもその一つだ。教会は魂の還る場所、すなわちホームポイントを決める場所としてや、旅団の結成受付場所として各拠点にあるのだが、ここほど大きい教会は他には無いだろう。また大きいだけでなく、首都にあるという利便性から、プレイヤー同士がゲーム内結婚をした際の、ユーザーイベントにも使われたりすることもあるらしい。私には関係の無い話だけど。
カテドラル前で彼と合流したので、クエストを始めるため中に入りNPCと話をすることにした。
「あなたは神を信じますか?」
いきなり胡散臭いセリフを吐く大司祭NPC。
「プラヤエルス教がこの地に根付き随分と時が経ち、その間この国は信仰により大いに繁栄してきました。しかし、その後の長く続いた戦乱により、教会や聖地は今大きく荒れ果ててしまい、信仰が揺らいでいます。なので私はあなた方のように、新しくこの地に参られた方々にこそ、今こそ聖地を巡り信仰を持って欲しいと考えています。」
確か、プレイヤーは西部地域と東部地域との戦乱で荒れ果てたこの南方に来た、流民というゲーム設定があるんで、このNPCはその事を言っているのだろう。
「皆様は我らが救世主、人の子、エグザ・プラヤエルスの足跡を辿ることで、各聖地にいる司祭が皆様に信仰のあり方と次の目的地を示すでしょう。」
つまり聖地巡礼とはその名のとおり、各場所を巡ってNPCと話すイベントということらしい。
「一つ目の聖地は、エグザが父なる神デヴェロから掲示を受けた『最初の地』シナイ山、その麓にある聖カトリアナ修道院です。父と子と聖霊によりて、ロギン」
シナイ山だって!?首都イスカリオテから遥か南、マップの南端近いあのシナイ山だって!?途方も無い距離を考えるだけで目眩がする。「今日はやっぱり近場で狩りして遊ばない?」
徒歩の移動だとリアルで45分以上、下手したら1時間はかかる距離だぞ、彼は分かってるのか。
「それもいいけど……話は変わるんだけど、こないだのマーマンキングのドロップ品で作ったこれあげるよん」
と言う彼から装飾品がトレードされてきた。
「これは!アクアマリンの耳飾り!」
以前から欲しかった宝石系装飾品!材料の宝石によって、各種ステータスアップの効果が付く中々の素敵アイテム!おまけにデザインも素晴らしい!
「まぁ、シナイ山は行ったことないし?たまには遠出もいいんじゃない?」
本当に、丁度毎日フーラの森とガリラヤ湖ばかりで少し飽きていたところで、私は物に釣られたりはしない。
「じゃあ早速出発ー。足は用意しておいたから、そんなにはかかんないと思うよん」
大司祭NPCから貰った巡礼者の証で、各NPCがクエスト用の会話をするようになるという、貝を象った胸部装飾品を装備し、クエストを開始することになった。そして、彼に付いて正門の外まで来て驚いた。
「馬車じゃん!買ったの!?」
馬一頭建馬車がそこにはあったのだ。
「野良PTで出た素材やら術書を売ったのと今までの貯金はたいてね」
うーむ、自家用車持ちとはなかなかやるな。
「でも一番安い馬車ね」
よく見ると、制作難易度が一番低くて安い、木製の屋根無し馬車だ。
「兵は巧遅より拙速を尊ぶって言うでしょ、いいから乗って乗って」
街道を通っての移動中、ふと思ったことを彼に聞いてみた。
「なんで急にこんな巡礼クエなんてやろうと思ったの」
何か実入りでもあるんだろうか。
「まぁ世界観とかの設定って知ってるとなんか楽しいじゃん。実際役立つこともあるかもしれないし」
確かにそれはあるかもしれない。
「じゃあ私を誘ったのはなんで」
前の野良PTで知り合った、他のフレンドでも良かっただろうに。
「マグりんじゃなきゃならない理由があったからだよん」
もしや……いやまさかそんな
「たき火を置けるとか」
次たき火するときは、こいつを薪にしてやる。
「ところでゴッドフリーなんて名前付けてるけど、神を信じてるの?」
前々から神自由って名前は意味不明と思っていた。
「うーん……映画インディー・ジョーンズ/最後の聖戦を見るとなんだか信じたくなってくるよねん」
インディー・ジョーンズはたまにテレビでやってるから観たことはあるけど、内容までは覚えてないなぁ。
「まぁ……変な宗教にドはまりしないように気を付けてね」
もちろん私は神なんて信じていない。祈るだけで財布が重くなる事は無いからね。軽くなることはあっても。
そんな話をしている内に、馬車はシナイ山前の最寄り街道に到着した。街道を外れるとMobが出没するようになるので、馬車は馬屋に帰らさせてここからは歩きだ。折角の馬車が壊されては帰りの足が無くなってしまうし。
街道から聖カトリアナ修道院までの道のりはそんなに離れてはなかったので、難なく到着した。聖カトリアナ修道院は、シナイ山の麓に位置し、また、修道院と名前は付くが銀行や浴場といった施設が揃っており、拠点としては村と同様のものだ。早速奥にある礼拝堂に入り、司祭NPCに話を聞くことにした。
「ようこそ御出でなさいました巡礼者よ。ここ『最初の地』シナイ山は救世主、人の子、エグザ・プラヤエルスがその山頂で父なる神、デヴェロから掲示を受けた聖なる地です。エグザはここで父なる神から人々に、友愛、鍛錬、感動を広め、その身に宿した聖霊により、悪霊を払うことでこの世界の歪みを直すことを示されました。山頂にはエグザが暖をとり今も燃え続ける『絶えぬ柴』が、その奇跡の一片を伝えております。」
神が示したのは、なんだか一般的な教えだが基本に立ち返れと言うことだろうか。
「次はエグザが悪魔に立ち向かい、そして打ち勝った地である試練の山、その麓のエリコの村にある教会にお行きなさい。父と子と聖霊によりて、ロギン」
試練の山か……西部地域と中央部地域との間にまたがる山岳エリアで、またまたなかなかの距離があるところだ。私はもしかしたら、とんでもないクエストに手を出してしまったのかもしれない。
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