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18.恩返し

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 村では最近ハオルドの姿を見なくなったと噂されていたが、ハオルドはある時全てを明かし村人たちにこう言った。

「最初で最後の頼みがある。俺が死んだ後、リリーナと息子を守ってくれ。頼む」

 頭を下げ続ける老人姿のハオルド。
 不気味がられ、忌み嫌われる覚悟であったが意外にもすんなり受け入れられた。
 盗賊から村を守り、食糧や木材を分け与え、再び村を救った恩人からの頼みを、みな快く引き受けた。

 自分と同じ年齢ほどの飲み仲間も数人でき、昼間から酒を飲み談笑することもある。
 未だに老いた体には慣れないが、ハオルドは今の方が自分らしく生きているような気がして毎日が楽しかった。

 少し離れたところの広場では、何人かの村人と、リリーナと息子が走り回って遊んでいた。
 ハオルドたちは頻繁に村におりてくるようになり、村人たちと協力し合って生活していた。
 そして自分の息子より小さい子供たちが年々村に増えていった。

 息子と走り回る事も、肩車をしてやることも出来なかったが日々大きくなっていく息子の成長を目の見えるリリーナと見届ける日常に満足していた。
 ハオルドは息子を時に厳しくも、強く優しい人に育つよう常に見守り、様々な知識を教え育てていった。
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