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7.目の青いうちは

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 帰路についたハオルドはリリーナに傷の手当てをしてもらった。

「痛まないか?大丈夫か?」

 リリーナは本当に心配していた。
 普通の人間なら確実に死んでいるであろう傷の深さだ。
 何本もの矢が刺さっていた痕が痛々しい。
 しかしハオルドは、傷の痛みよりも気になることがあった。
 山賊たちの言っていたリリーナのことだ。

「リリーナ、山賊の言っていた話だが…」

「あぁ。本当だ。私の村の女たちはみんなそうなんだ。さっきみたいな輩が噂を聞きつけ、村の女をさらって食われたという話もちらほら聞く。だから、そもそも疫病がなければそんな事も起きないだろうと村人を集めて薬草を探していたんだ」

「目が青いうちはずっと狙われるのか?」

「そうだろうな」

 しばらく沈黙が続き、手当てが終わるとリリーナは改まってハオルドに話し掛けた。

「ハオルド、体を張って守ってくれてありがとう。家族がいなくなってからはずっと守る側の人間だった。ハオルドがそんなに頑丈でなければ、礼としてこの命、食ってもいいと言いたいほどだ」

「必要ない、気持ちだけ受け取っておこう。俺の体は頑丈すぎて疫病も通さんだろうからな。それより、その命は粗末にしないでくれ。…もう俺も大切な人を失いたくない」

 真剣な口調で話すハオルドは、ふざけているようには見えずリリーナは返事に戸惑った。

「心配するな。深い意味はない、人の命はみな大切だ。そういう話だ」

「わ、わかってるよ!ハオルドこそ不死な訳ではないのだからあまり無理しないでくれよ。あと、そんな怪我で野宿はやめてくれ。どうしてもというなら私が外で眠る」

「馬鹿を言うな。ただでさえ狙われる命なんだぞ」

「だから、私もここで眠る」

「……好きにしろ。眠れなくても知らんからな」

 そういって家の灯りを消し、ハオルドたちは眠りについた。
 その晩のハオルドのいびきは、村人たちも不思議そうに世間話をするほど、いつもより何倍も小さかった。

 と言ってもやはりいびきにしては異常に大きいことには変わりなくリリーナは眠れなかった。
 眠れなかったのいびきのせいだけではない。

 ハオルドの言った言葉や、命をかけて守ってくれたことに胸が高鳴り、真横で眠っているハオルドの寝顔を愛おしそうに見つめていた。
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