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2.盗賊との出逢い

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 ある夜、村に盗賊たちが押し入った。
 ハオルドは急いで山をおり、薪割りの斧を両手にブンブンと振り回し、盗賊たちを追い払った。
 幸い怪我人だけで済んだものの村中の畑などが荒らしに荒らされた。

 村人たちは明日からどう生活をすればいいのかと途方に暮れ、ハオルドに感謝を伝える気力すら残っていなかった。
 ハオルドは逃げ去る盗賊の中の一人を捕らえていた。

「何故こんなことをする。この村が豊かなのは自然だけだ。金目のものなどないぞ」

 低い声で、捕らえた盗賊に村を襲った理由を問う。

「…くっ、離せ!お前には関係ない!離せ!」

 ハオルドはその声に一瞬ひるみ、手を離しかけた。

「お前、女か?離すから逃げるなよ。次は斧を投げるぞ」

 捕らえた盗賊を遠くから恨めしそうに睨みつけている村人たちの目は、今にも殺しにかかって来そうである。
 ハオルドはひとまず自分の家に連れ帰ることにした。

「何が目的だ?」

 改めて盗賊に聞いた。

「…。私が住んでいる村は疫病が流行っていてな、食糧が足りない。それだけだ」

 ハオルドは黙ったまま返事をしない。
 その威圧感に負けたかのように盗賊が続けた。

「……。さっき、この村は自然が豊かだと言ったな。その豊かな自然の中にどんな傷も病も治す薬草があると聞く。私の家族はもういないが…残った村のみんなを救ってやりたい。医者も祈祷師も役に立たない。馬鹿な話だと笑うだろうが、アテはもうその薬草しかないんだ」

 ハオルドは少し間を置き、盗賊に名を尋ねた。
 盗賊はリリーナと名乗った。

「薬草の話は後だ。用が済んだらすぐに戻る。一歩でも家から出てみろ、お前の村を焼きにいってやるからな」

 ハオルドはいそいそと準備をし、家を出た。
 意気消沈している村人たちの家々に、備蓄していた食糧と木材をこっそりと配りまわっていった。
 家に戻るとリリーナは大人しく座っていた。

「村は焼かれたくなかったか。いくらでも逃げる時間はあっただろう」

「…あんた、私の身も拘束しないまま食糧配りに行ってたろ。そんなやつが村を焼けるとは思えない」

「そうか。…とりあえずこれを着ろ。その格好だと盗賊丸出しで村の連中の目を引く。用意が出来たらお前の村に行くぞ」

「なんのつもりだ」

「悪いことは言わん。黙って村まで案内しろ」

 荷車に大量の食糧を素早く積んでいくハオルドを見て、リリーナはハオルドが何をしようとしているのかすぐに分かった。

「あんた…私の村にまで食糧を…?村を襲った盗賊の村だぞ。お人好しが過ぎないか?それに村には疫病が蔓延して…」

「村についたらお前が配るんだ。俺は少し手前で待機しておく。お前は連れ帰る」

「何を企んでいる?…まぁいい。これだけあれば助かるよ」

 リリーナは聞こえるか聞こえないかほどの小さな声で礼を言った。
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