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1.いびきのせいで
しおりを挟む小さな村に今夜も轟音が響き渡る。
ハオルドのいびきだ。
身長は2メートルを超え、筋肉隆々で村一番の力持ちの大男は、村人たちとの交流は一切なく、少し離れた山奥で自給自足の生活をしている。
有り余る力で誰よりもよく働くおかげもあり、食糧や木材などの備蓄はたんまりとある。
本来であれば村人たちとこれらを分け合い、持ちつ持たれつの関係が築けるはずなのだが、何年にも及ぶハオルドのいびきのせいで村中の人々は睡眠不足に悩まされており、彼はほぼ村八分の状態となっている。
ハオルドが初めてこの町にやってきた来た頃は、村人たちは彼の体格の良さに驚き、よく働く彼を喜んで歓迎した。
少々口が荒く無愛想なハオルドだが、根はいい奴だとみな知っていた。
ある仕事終わりの、そろそろ日が暮れるかという頃に村の長が村人を引き連れハオルドの家を訪れた。
後ろに隠れる村人は肩をすくめ下を向き、長は申し訳なさそうにこう言った。
「ハオルド、すまんが村を出てはもらえんか」
ハオルドは突然の長からの申し出にやや戸惑いつつも、怖々に訳を問い詰めた。
「お前さんのいびきがの…。毎晩地鳴りのように村中に響いておる。そのせいでみな眠れず、仕事もままにならんのだよ」
しかしハオルドは断固として拒否をした。
「みんな。すまないが、俺はこの村を出る気はない」
バタンッ!と力強く、扉を閉めた。
この日からハオルドと村人たちは一切口をきかなくなった。
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