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24. 対決の時
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すぐに美奈から着信が入ったが、大沢先生に切るように指示された。
あくまでもここに呼ぶ気のようだ。
しばらくしてインターホンが鳴った。
大沢先生は無言のままオートロックを解除して、玄関前に着いた美奈を中へ引き入れた。
「どういうこと?」
息を切らしながら、美奈は大沢先生を睨みつけている。
避ける間もなく大沢先生にキスをされた。
まるで美奈に見せつけるようにして私を押さえつけ無理矢理キスを続ける。
「……は?……おい大沢、大沢!!なにしてんだよ、おい!」
美奈が怒鳴りつけながら大沢先生に掴みかかる。
「長澤先生はもう全て知ってるぞ。お前の嘘もな。まずは武井輝夫が父親じゃないこと、耳が聞こえないこと、なんで長澤先生に言わなかった?」
わざと美奈を挑発しているのが分かる。
「それは……可哀想な子だと思われたくなくて」
「可哀想だと思われたくない奴が、どうしてありもしない父親からのレイプ被害を告白した?ネグレクトより、実の父親からレイプされてるってことにした方が可哀想に思われるとでも思ったか?」
「先生……私、父親からレイプされてるって言った?」
「……え?学校辞められないって……だって制服姿が興奮するからって」
「それは松井」
「じゃ……じゃあ、腕を切られるって言ってたのは?」
「それも松井にね?先生、ビデオ見たんだから知ってるでしょ?」
「それも初めはお前が切らせたんだろ。可哀想な子を装うために」
私の思考がどんどん回転が早くなる感覚がした。
質問したいことの核心はどこにあるのか、集中して考える。
「……風俗は?」
「え?なんで今更その話?ちゃんと辞めたじゃん」
「どこのなんて店だ?」
「……言う必要ある?」
「どこまでシラを切り通せるだろうな」
「なんなの……?何が言いたいんだよ!」
「松井先生はなんで突然父親にビデオテープを送ったんだろうな?お前が送るように仕向けたんじゃないのか?」
「先生、帰ろ?こいつ頭おかしいよ。どうして私が責められなきゃいけないの?先生、たすけてよ……」
美奈が涙目で私に助けを求めている。
その助けを無視するように大沢先生の追求は続く。
「長澤先生、僕が渡した眠剤はどうしました?」
「え?あぁ……結局使わないまま自宅に」
「武井の遺体の近くに、何故か同じ種類の包装シートが落ちていた。そして僕と同じ左利きの彼が首を吊った紐の括り方が、右利きの括り方だった。……武井、全部吐けよ。この人が大事なら!」
大沢先生は包丁を取り出し、私の首に突きつけた。
突然の行動に美奈は狼狽えた様子だったが、私は何故か冷静だった。
大沢先生の考えが何となく読めたからかもしれない。
この人に私への殺意など一切ない。
「この人が死んだらお前はもっと可哀想になれるなぁ。次は誰が同情してくれる?それともお前といると人が死ぬって、誰も近寄ってくれなくなって一生孤独なままかもなぁ!」
大沢先生の表情は狂っているようで、目の奥は冷静さを欠いているわけではなさそうだった。
美奈は子供のようにわんわんと泣き喚き始めた。
「せ、先生が、今いなくなっちゃったら、わ、私は誰に甘えればいいの?」
「美奈……私のこと大事?」
「うん、大事」
「じゃあ本当のこと教えて?そしたら絶対、私が美奈のこと救ってあげるから」
「き、嫌いに、な、ならない?」
「うん、愛してるよ」
あくまでもここに呼ぶ気のようだ。
しばらくしてインターホンが鳴った。
大沢先生は無言のままオートロックを解除して、玄関前に着いた美奈を中へ引き入れた。
「どういうこと?」
息を切らしながら、美奈は大沢先生を睨みつけている。
避ける間もなく大沢先生にキスをされた。
まるで美奈に見せつけるようにして私を押さえつけ無理矢理キスを続ける。
「……は?……おい大沢、大沢!!なにしてんだよ、おい!」
美奈が怒鳴りつけながら大沢先生に掴みかかる。
「長澤先生はもう全て知ってるぞ。お前の嘘もな。まずは武井輝夫が父親じゃないこと、耳が聞こえないこと、なんで長澤先生に言わなかった?」
わざと美奈を挑発しているのが分かる。
「それは……可哀想な子だと思われたくなくて」
「可哀想だと思われたくない奴が、どうしてありもしない父親からのレイプ被害を告白した?ネグレクトより、実の父親からレイプされてるってことにした方が可哀想に思われるとでも思ったか?」
「先生……私、父親からレイプされてるって言った?」
「……え?学校辞められないって……だって制服姿が興奮するからって」
「それは松井」
「じゃ……じゃあ、腕を切られるって言ってたのは?」
「それも松井にね?先生、ビデオ見たんだから知ってるでしょ?」
「それも初めはお前が切らせたんだろ。可哀想な子を装うために」
私の思考がどんどん回転が早くなる感覚がした。
質問したいことの核心はどこにあるのか、集中して考える。
「……風俗は?」
「え?なんで今更その話?ちゃんと辞めたじゃん」
「どこのなんて店だ?」
「……言う必要ある?」
「どこまでシラを切り通せるだろうな」
「なんなの……?何が言いたいんだよ!」
「松井先生はなんで突然父親にビデオテープを送ったんだろうな?お前が送るように仕向けたんじゃないのか?」
「先生、帰ろ?こいつ頭おかしいよ。どうして私が責められなきゃいけないの?先生、たすけてよ……」
美奈が涙目で私に助けを求めている。
その助けを無視するように大沢先生の追求は続く。
「長澤先生、僕が渡した眠剤はどうしました?」
「え?あぁ……結局使わないまま自宅に」
「武井の遺体の近くに、何故か同じ種類の包装シートが落ちていた。そして僕と同じ左利きの彼が首を吊った紐の括り方が、右利きの括り方だった。……武井、全部吐けよ。この人が大事なら!」
大沢先生は包丁を取り出し、私の首に突きつけた。
突然の行動に美奈は狼狽えた様子だったが、私は何故か冷静だった。
大沢先生の考えが何となく読めたからかもしれない。
この人に私への殺意など一切ない。
「この人が死んだらお前はもっと可哀想になれるなぁ。次は誰が同情してくれる?それともお前といると人が死ぬって、誰も近寄ってくれなくなって一生孤独なままかもなぁ!」
大沢先生の表情は狂っているようで、目の奥は冷静さを欠いているわけではなさそうだった。
美奈は子供のようにわんわんと泣き喚き始めた。
「せ、先生が、今いなくなっちゃったら、わ、私は誰に甘えればいいの?」
「美奈……私のこと大事?」
「うん、大事」
「じゃあ本当のこと教えて?そしたら絶対、私が美奈のこと救ってあげるから」
「き、嫌いに、な、ならない?」
「うん、愛してるよ」
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