【アリジゴク】～笑顔より怒った顔が似合う君。結局、私たちは女友達にはなれないんだよ～【完結】

喧嘩の末に

　ある日、一度だけ喧嘩をした。
　初めての出来事だったが、何がきっかけだったのか分からないほど些細なことが始まりだったと思う。
　その時に私自身がふと、二人の関係の核心を突くような話を持ち出してしまった。

　つい、口をついて出てしまったのだ。
　はっ、とした時にはもう遅かった。
　一度こぼした水はコップには戻せない。

　しかしいくら勢いだとはいえ、そのような話を口走ったのは私の心が悲鳴を上げ、そろそろ限界だと察していたのか。
　それとも、この関係がもしかしたら何かいい方向に、自分の望む関係に変わるかもしれないと期待したのか。
　今ではもう覚えていない。
　まぁ、どちらかと言えば前者だったのだろうと思う。

「じゃあさ、聞くけど。あんたあの人捨てられる？私はあの人ほどお人好しじゃないし、あんたを幸せに出来るのはあの人だよ。私じゃきっと、あんたの事傷付けるだけだよ」

　私を論破する彼女の表情は、いつもよりも熱のこもった怖い顔で、やはりとても綺麗だった。
　もう何も言えなかった。

　その日を境に、私は一方的に彼女から逃げた。