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11. 光の蹂躙

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 手を開いて閉じての動作を繰り返す銀髪。
 じゃああの時のは……
 悪霊なんかじゃなく、人間を殺してたのか。

 銀髪が腕を振り払うと、マントのような黒い影が彼を包む。
 そしてそれが剥がれた時には、目の前に七条袈裟に身を包んだ銀髪の男が姿を現していた。

「私の名は公卿 雨暗くぎょう うあん。呪言師達よ。私を止めたければ……天界まで追ってくるがいい。私は天界ごと、お前の力を飲み込むぞ」

 公卿雨暗と名乗る男が印を結ぶと、目の前に御札が貼られた真っ赤な扉が出現した。
 そいつは扉の中へと消えていった。

「ついに尻尾を捕えたな……言慈、頼む。この通りだ。お前は面倒だと思うかもしれねえ……けど、俺だけじゃ絶対に勝てない。お願いだ! 俺達の仲間の無念を晴らさせてくれ!」

 そう必死に懇願するように、頭を下げる新田。
 俺の中で既に答えは決まっていた。

「……自分が何者なのか、どういう運命を辿ってきたのかを知りたい。あの中に答えがあるんだな?」

「お前の隠した力と、奪われた記憶。取り返しにいくぞ!俺達の因縁の相手がやっと尻尾出しやがったんだ。力合わせてぶっ倒そうぜ!」

「ああ……もうこれで終わりのようだしな。アイツが全ての元凶ってんなら、一発ぶん殴らないと気が済まねえ。けど新田、あいつに勝てるのか?」

「結局お前の力は戻ってないしな。記憶も一部か……。あっちでお前の力を取り戻せさえすれば……」

 まあ、この際勝てるかどうかの算段なんてどうでもいいな。
 この運命に決着をつけなければ。
 俺達は出現した扉へと入っていく。
 何が待ち受けてるか分からない。
 しかし、この妙な高揚感はなんだろうな……
 やっと与えられた使命を果たせるような気がした。

「こ、ここは……」

「どうやら天界のようだな」

 扉を抜けた先は、かつて新田に何度も送られていた天界だった。

「お、おい!あれを見ろ、言慈!」

 新田が指差す方向──
 袈裟の男……公卿雨暗とヒョウが対峙していた。
 既にアミダは地面に倒れ意識がないようだ。
 くそっ!
 アミダ……あんな傷だらけになって……

「……最近、妙に感覚が鈍ると思ったら、こっちにまで入り込んでたんだね。公卿雨暗とか言ったね?あんたが厭魅術を使う張本人って訳ね。まったく……あの子達には悪い事したね」

「私の呪いの残滓ざんしの影響で新田の呪言を危険視してしまったようだな、ヒョウ。天界最高位者の名も廃るな。……さて、私も思う存分暴れさせてもらおうか」

 雨暗は片手で印を結び"爆ぜ消えよ"と唱える。
 黒い炎が手のように形作ると、その魔の手をヒョウへと伸ばす。

「甘いわよ……っ!」

 ヒョウは炎に人差し指を向けると、それは光に包まれて消えていく。

「無駄よ。こんなもので私を倒せるとでも?」

「……腐っても天界の最高位者であるか。ならばこれはどうだ?」
  
 雨暗は視線を移す事なく、不意にこちらに手を向けた。
 その黒い炎が、今度はこちらに襲いかかる。

「うぉ?!」

「あんた達……!」

 当たる寸前、黒い炎が光の矢とぶつかって消滅した。
 遠くからヒョウが両手を掲げて、援護してくれたのだ。
 その表情は苦い笑みを見せており、どこか申し訳なさそうだった。

「ああ、そうだ。その隙が見たかったのだ」

 雨暗は姿を消し、一瞬にしてヒョウの背後に立つ。
 そしてその無垢な背中を掌底突きで殴打し、その掌からは無数の針が突き出ていた。

「ぐあっ……!」

 その攻撃でヒョウは力無く倒れてしまった。
 雨暗は倒れ込んだヒョウの体に手を突っ込み、光の球体を取り出した。
 雨暗はそれを躊躇なく飲み込んだ。

「あぁ、力が湧き上がる。クク、素晴らしい。面倒であった者が地に伏せた。これでこの天界も私のものだ」

「あいつ、ヒョウの力を奪いやがったのか……!」

「次は貴様らだ。貴様らを葬る事で、ようやく私の宿願は成される」

 新田が探し求めていた男。
 そして、俺の記憶を奪った男だ。

「"烈風切裂れっぷうせつれつ"」

 雨暗が片手を軽く振る。
 すると、辺りに凄まじい烈風が吹き荒び、俺達の肉体を切り裂いていく。

「ぐあっ!!!」

「な、なんて呪言だ……!」

 目の当たりにする巨悪。
 こんな化け物とどう戦えば!
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