19 / 29
19. 傷の舐め合い
しおりを挟む
帰りの車内で渡瀬が
「以前はるさんが目覚めたきっかけを話された時に『復讐のゴールなんてなくて、復讐ごっこをしてお互いの傷を舐めあってただけなんじゃないか』って言ってたのは覚えてますか?」
「あー、言ったね」
「確かにそれも一理あると思いますし、実際にそういう意味合いも何割かあると思います。でも、真島さんの奥様を抱いたのはホストなのに、自分だと言ってはるさんを怒らせて目覚めさせた」
「でもまじで言ってそうだったよ?ほんとにそう思ってるって感じ。嘘ついてる感じなかったもん」
「はい、それも否定はしません。しかし……あの東堂さんがはるさんを目覚めさせるほど怒らせるようなことをするのは何か意味があるとしか。あの人にとって怒りの先にあったものははるさんの救済……寂しくて怒る感情を海底にでも沈めたくて、最終的にはこうしてはるさんをはるさんとして目覚めさせたかったので無いでしょうか?」
「じゃあ自分はどうするの?東堂さんの奥さんの事とか、東堂さん自身の辛いとか」
「それはそれで辛いから……消えたいんじゃないでしょうか」
「なにそれ。東堂さんが言ってたの?」
「……いえ、違いますけど、私ならそう思うかなと」
「私が苦しくて東堂さんが存在したのに、私が東堂さんを苦しくさせてちゃ訳わかんないよね」
「副人格は元々主人格の代わりに……みたいなところがあるのでそこは仕方ないのでは…」
主人格も副人格もなにも、私は私だし、東堂さんは東堂さんなんだよ。
「……昨日のことなんですけど」
「ん?セックスしたこと?」
「え、えぇ、まぁ。あれは、誰に見えてたんですか?」
「東堂さん、かな?でも私東堂さんとしたことないし、きっと渡瀬なんだろうなぁと思いながら、でも東堂さんだしなぁ、東堂さんでしかないしなぁみたいな。行ったり来たりって感じかな」
「どうして私の姿なんですか?」
「渡瀬も変わったね。前はそんなに質問とかしてこなかったじゃん。淡々と仕事だけして、私のプライベートにも一切口出さなかったし」
「すみません」
「責めてるんじゃないって。こうして会話が出来て嬉しいよ」
東堂さんと話してるみたいだからですか?って聞かれるかと思った。
もし聞かれてたら『そうだよ』って思わず言ってしまいそうだったから、無視してくれて助かった。
でもどうして渡瀬だったのかって考えたら、朝比奈教授が言ったようにやっぱりちょっとは好きだったのかなーってぼんやり思った。
「あと、次からは助手席じゃなくいつも通り後ろにお座りください。危ないので」
「あ、ほんとだね。助手席座ってるね」
「はい、お願いします」
渡瀬が言ってることが当たってたとしてさ。
私を起こすためにってやつとか、ほんとは東堂さんが消えたがってるんじゃないかとか。
東堂さんを解放してあげたら、私の寂しいはもっと寂しくなって、結局また東堂さんみたいな人を作っちゃうんじゃないかな?
そうならないとしたら私は一人で寂しいのを抱えるんだよね。
みんなそうやって生きてんのか。
すごいなぁ。
私にはお金も地位も権力もあるけど、一人でこの寂しさを背負えるほど力持ちじゃないからさ。
あ、真島さんに昔もっと痩せた方が良いとか言われたな。
ジムでも行けって。
余計なお世話だしやっぱあの人、男としてってか人として出来が悪いよな。
出来が悪いから、完璧じゃないから好きなのかな。
会いたいな。
あれから何キロくらい痩せたんだろ、私。
「以前はるさんが目覚めたきっかけを話された時に『復讐のゴールなんてなくて、復讐ごっこをしてお互いの傷を舐めあってただけなんじゃないか』って言ってたのは覚えてますか?」
「あー、言ったね」
「確かにそれも一理あると思いますし、実際にそういう意味合いも何割かあると思います。でも、真島さんの奥様を抱いたのはホストなのに、自分だと言ってはるさんを怒らせて目覚めさせた」
「でもまじで言ってそうだったよ?ほんとにそう思ってるって感じ。嘘ついてる感じなかったもん」
「はい、それも否定はしません。しかし……あの東堂さんがはるさんを目覚めさせるほど怒らせるようなことをするのは何か意味があるとしか。あの人にとって怒りの先にあったものははるさんの救済……寂しくて怒る感情を海底にでも沈めたくて、最終的にはこうしてはるさんをはるさんとして目覚めさせたかったので無いでしょうか?」
「じゃあ自分はどうするの?東堂さんの奥さんの事とか、東堂さん自身の辛いとか」
「それはそれで辛いから……消えたいんじゃないでしょうか」
「なにそれ。東堂さんが言ってたの?」
「……いえ、違いますけど、私ならそう思うかなと」
「私が苦しくて東堂さんが存在したのに、私が東堂さんを苦しくさせてちゃ訳わかんないよね」
「副人格は元々主人格の代わりに……みたいなところがあるのでそこは仕方ないのでは…」
主人格も副人格もなにも、私は私だし、東堂さんは東堂さんなんだよ。
「……昨日のことなんですけど」
「ん?セックスしたこと?」
「え、えぇ、まぁ。あれは、誰に見えてたんですか?」
「東堂さん、かな?でも私東堂さんとしたことないし、きっと渡瀬なんだろうなぁと思いながら、でも東堂さんだしなぁ、東堂さんでしかないしなぁみたいな。行ったり来たりって感じかな」
「どうして私の姿なんですか?」
「渡瀬も変わったね。前はそんなに質問とかしてこなかったじゃん。淡々と仕事だけして、私のプライベートにも一切口出さなかったし」
「すみません」
「責めてるんじゃないって。こうして会話が出来て嬉しいよ」
東堂さんと話してるみたいだからですか?って聞かれるかと思った。
もし聞かれてたら『そうだよ』って思わず言ってしまいそうだったから、無視してくれて助かった。
でもどうして渡瀬だったのかって考えたら、朝比奈教授が言ったようにやっぱりちょっとは好きだったのかなーってぼんやり思った。
「あと、次からは助手席じゃなくいつも通り後ろにお座りください。危ないので」
「あ、ほんとだね。助手席座ってるね」
「はい、お願いします」
渡瀬が言ってることが当たってたとしてさ。
私を起こすためにってやつとか、ほんとは東堂さんが消えたがってるんじゃないかとか。
東堂さんを解放してあげたら、私の寂しいはもっと寂しくなって、結局また東堂さんみたいな人を作っちゃうんじゃないかな?
そうならないとしたら私は一人で寂しいのを抱えるんだよね。
みんなそうやって生きてんのか。
すごいなぁ。
私にはお金も地位も権力もあるけど、一人でこの寂しさを背負えるほど力持ちじゃないからさ。
あ、真島さんに昔もっと痩せた方が良いとか言われたな。
ジムでも行けって。
余計なお世話だしやっぱあの人、男としてってか人として出来が悪いよな。
出来が悪いから、完璧じゃないから好きなのかな。
会いたいな。
あれから何キロくらい痩せたんだろ、私。
30
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる