臓物少女

#75 四天王その二&その三⑥

「恋人？」
　明はあんぐりと口を開け、惚けたような顔になった。
「俺が、紗英の･･･？」
　笑いが込み上げてきた。
　毒々しいまでの、自虐的な哄笑だった。
　あまりにも痛すぎる勘違い。
　－俺が、紗英の、恋人だって？
　今の明に、これほど刺さる言葉もない。
　紗英は化け物で、しかも俺を嫌っている。
　そんなことも知らないで、こいつらは、俺を襲ってきたというわけか。
　突如笑い出した明に向かって、膣ノイドが不思議そうに尋ねた。
「どうしたんだい？　気でも狂ったのかい？」
「あんたたちは勘違いしてる。俺たちの仲はそんないいもんじゃない」
　笑いの発作の合間を縫って、切れ切れに明は答えた。
「なぜだい？」
　膣ノイドが笑い続ける明の顏を覗き込む。
「隠してもダメだよ。ちゃんと調べはついている。現におまえたちは秘密のマンションで同棲してるじゃないか。それともおまえは恋人ではなく、あいつにとってただのセフレにすぎないとでもいうのかい？」
「セ、セフレ･･･？」
　またしても絶句する明。
　あの時一度、触手に吸われて精を放ってしまったのは確かだが、セフレだなんて、そんなにいいものであるはずがない。
　ましてや、同棲などと･･･。
　しかし、客観的に見ればそう見えるのか。
　うじうじ考えていると、突然、膣ノイドの背後から若い女の声がした。
「お姉ちゃん、うだうだしゃべってないで、もっと派手に暴れないと、警察もテレビ局も来てくれないよ！　そいつを使って、バイオノイド零式をおびき出すんでしょ？　なら、まずニュースにならないと」