46 / 108
#45 四天王 その一⑧
しおりを挟む
「それはわからないでもないけどねえ。今はSNSですぐ拡散されて住所氏名全部突き止められちゃうし」
笹原刑事がうなずいたところに、
「急いでください。下に警察車両を回してきました」
勢いよくドアが開いて制服姿の警官が顔を出した。
「とにかく行こうか。紗英ちゃんの要望は私が上層部に伝えるから」
エレベーターで地下駐車場に降りると、県警のワゴン車が止まっていた。
「ええ、本人が絶対そうしてくれって。照明を消すのが協力の条件だと言い張ってます」
笹原刑事はエレベーターの中から車に乗り込むまで、スマホで何本もそんなふうな内容の電話をかけていた。
「なんとかOK取り付けたよ」
バックシートに座った紗英に笑顔でそう声をかけてきたのは、車が走り出してからである。
ワゴン車を運転しているのはさっきの警官で、笹原刑事は助手席、明が二列目、紗英が最後尾という配置である。
何気なく紗英の隣に座ろうとしたら怒りの籠った眼で睨まれたので、ひとり真ん中の席に座った明は悲しかった。
都心までは車で10分もかからなかった。
が、中心部に近づくにつれ、渋滞が発生しているのがわかった。
あちこちにある地下街への降り口に、県警が非常線を張っているせいである。
路上に鈴なりになっているパトカーの列からかなり離れたところで車を止めさせると、
「目立つから、私たちはここから歩きましょ」
紗英に向かって笹原刑事が言った。
「お、俺も・・・」
ふたりに続いて、あわてて車を降りる明。
あなたは残って。
そう言われるかと思ったが、明はその存在自体、笹原刑事の眼中にないのか、完全にスルーだった。
少し行った所に人だかりがあり、その頭上に地下鉄の駅の駅名表示が見える。
「うわ、なにか臭うわね」
足早で歩きながら、笹原刑事がハンカチで鼻を塞いだ。
「こ、これは・・・」
手の甲で鼻孔を覆い、明はうめいた。
間違いない。
こいつ、糞便臭だ。
笹原刑事がうなずいたところに、
「急いでください。下に警察車両を回してきました」
勢いよくドアが開いて制服姿の警官が顔を出した。
「とにかく行こうか。紗英ちゃんの要望は私が上層部に伝えるから」
エレベーターで地下駐車場に降りると、県警のワゴン車が止まっていた。
「ええ、本人が絶対そうしてくれって。照明を消すのが協力の条件だと言い張ってます」
笹原刑事はエレベーターの中から車に乗り込むまで、スマホで何本もそんなふうな内容の電話をかけていた。
「なんとかOK取り付けたよ」
バックシートに座った紗英に笑顔でそう声をかけてきたのは、車が走り出してからである。
ワゴン車を運転しているのはさっきの警官で、笹原刑事は助手席、明が二列目、紗英が最後尾という配置である。
何気なく紗英の隣に座ろうとしたら怒りの籠った眼で睨まれたので、ひとり真ん中の席に座った明は悲しかった。
都心までは車で10分もかからなかった。
が、中心部に近づくにつれ、渋滞が発生しているのがわかった。
あちこちにある地下街への降り口に、県警が非常線を張っているせいである。
路上に鈴なりになっているパトカーの列からかなり離れたところで車を止めさせると、
「目立つから、私たちはここから歩きましょ」
紗英に向かって笹原刑事が言った。
「お、俺も・・・」
ふたりに続いて、あわてて車を降りる明。
あなたは残って。
そう言われるかと思ったが、明はその存在自体、笹原刑事の眼中にないのか、完全にスルーだった。
少し行った所に人だかりがあり、その頭上に地下鉄の駅の駅名表示が見える。
「うわ、なにか臭うわね」
足早で歩きながら、笹原刑事がハンカチで鼻を塞いだ。
「こ、これは・・・」
手の甲で鼻孔を覆い、明はうめいた。
間違いない。
こいつ、糞便臭だ。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
体育座りでスカートを汚してしまったあの日々
yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる