臓物少女

戸影絵麻

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#45 四天王 その一⑧

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「それはわからないでもないけどねえ。今はSNSですぐ拡散されて住所氏名全部突き止められちゃうし」
 笹原刑事がうなずいたところに、
「急いでください。下に警察車両を回してきました」
 勢いよくドアが開いて制服姿の警官が顔を出した。
「とにかく行こうか。紗英ちゃんの要望は私が上層部に伝えるから」
 エレベーターで地下駐車場に降りると、県警のワゴン車が止まっていた。
「ええ、本人が絶対そうしてくれって。照明を消すのが協力の条件だと言い張ってます」
 笹原刑事はエレベーターの中から車に乗り込むまで、スマホで何本もそんなふうな内容の電話をかけていた。
「なんとかOK取り付けたよ」
 バックシートに座った紗英に笑顔でそう声をかけてきたのは、車が走り出してからである。
 ワゴン車を運転しているのはさっきの警官で、笹原刑事は助手席、明が二列目、紗英が最後尾という配置である。
 何気なく紗英の隣に座ろうとしたら怒りの籠った眼で睨まれたので、ひとり真ん中の席に座った明は悲しかった。
 都心までは車で10分もかからなかった。
 が、中心部に近づくにつれ、渋滞が発生しているのがわかった。
 あちこちにある地下街への降り口に、県警が非常線を張っているせいである。
 路上に鈴なりになっているパトカーの列からかなり離れたところで車を止めさせると、
「目立つから、私たちはここから歩きましょ」
 紗英に向かって笹原刑事が言った。
「お、俺も・・・」
 ふたりに続いて、あわてて車を降りる明。
 あなたは残って。
 そう言われるかと思ったが、明はその存在自体、笹原刑事の眼中にないのか、完全にスルーだった。
 少し行った所に人だかりがあり、その頭上に地下鉄の駅の駅名表示が見える。
「うわ、なにか臭うわね」
 足早で歩きながら、笹原刑事がハンカチで鼻を塞いだ。
「こ、これは・・・」
 手の甲で鼻孔を覆い、明はうめいた。
 間違いない。
 こいつ、糞便臭だ。
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