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#14 逃避行⑥
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ショッピングモールへの1時間は、地獄のように長かった。
少女は窓際に頬杖をついて外を眺めたままひと言も言葉を発せず、明も何か言えばそれが即セクハラ発言になってしまいそうで、ただ沈黙を守るしかなかった。
うねうねと蛇行する道を降りていき、市街に出た。
明の知っているショッピングモールといえば、イオンしかない。
なにしろイオンは福井県を除いた全国にある。
なかはどこも似たようなつくりだから安心だ。
立体駐車場は異様に混んでいて、空きを見つけるのがひと苦労だった。
イオンはもともと子供連れが多いのだが、きょうはそれに輪をかけて若い家族連れの姿が目立つ。
その誰もが若いママの運転するかさばるミニバンで押しかけてきているのだ。
そうか。きょうからゴールデンウイークか。
店内に入るなり、納得した。
あちこちにセールのポスターが貼られている。
「ここで待ってて。逃げないでよ」
少女は明を激混みの2階のフードコートに残すと、そう言い残して人混みの中へ姿を消した。
もとより逃げる気はなかった。
気難しい相手だが、天津紗英はひどく謎めいた美少女で、居心地の悪さよりも一緒に居たい気持ちのほうがわずかに強い。
たかが雑魚ニートのフリーターに何ができると言われるかもしれないが、彼女のその謎を解きたいと思う。
生体工学で世界征服を企む人肉工房なる秘密組織。
オルガノイドとやらを使って臓器を培養し、それを裏で売買して富裕層や政財界を牛耳っているという。
その人肉工房が”遊び”で生み出した培養人間たち。
明は指ノイドしか見ていないが、目玉ノイドなど、ほかにもいろんなのがいるらしい。
紗英はその培養人間の最新型だというのだが、それはいったいどういうことなのか。
彼女の外見は、指ノイドのそれのように気色の悪いものではない。
いや、気色悪いどころか、その若さに似合わぬ悩殺ボディの持ち主で、顔も吸いつきたくなるほど可愛らしい。
萌え+エロスの驚くべきコンビネーション。
イラストにしてイオンの壁に貼ったら巷のフェミたちがこぞって発狂すること間違いなしのその衝撃度。
ルッキズムの頂点に君臨するであろうその美少女と、フェイク陰暴論がそのまま具現化したような秘密組織。
そこにどういうつながりがあるというのだろう。
父の佐平が生きていれば、その辺りの事情をもう少し訊けたはずだが、佐平は再会した時にはすでに不死の病に冒されており、しかも指ノイドの奇襲であっというまに死んでしまった。
しかしあの時、思い返してみれば、指ノイドたちを殲滅したのも紗英なのだ。
だが「絶対見ないで」と言われて家の中に隔離されていた明には、実際に何が起こったのか、皆目わからない。
そんなことをつらつら考えていると、
「お待たせ」
頭の上から鈴が鳴るような声が聞こえてきた。
「ん?」
顔を上げた明は、
「うぐ」
目を剥き、口を半開きにしてフリーズした。
やべ。
これはあまりに・・・。
ヤバ過ぎる。
少女は窓際に頬杖をついて外を眺めたままひと言も言葉を発せず、明も何か言えばそれが即セクハラ発言になってしまいそうで、ただ沈黙を守るしかなかった。
うねうねと蛇行する道を降りていき、市街に出た。
明の知っているショッピングモールといえば、イオンしかない。
なにしろイオンは福井県を除いた全国にある。
なかはどこも似たようなつくりだから安心だ。
立体駐車場は異様に混んでいて、空きを見つけるのがひと苦労だった。
イオンはもともと子供連れが多いのだが、きょうはそれに輪をかけて若い家族連れの姿が目立つ。
その誰もが若いママの運転するかさばるミニバンで押しかけてきているのだ。
そうか。きょうからゴールデンウイークか。
店内に入るなり、納得した。
あちこちにセールのポスターが貼られている。
「ここで待ってて。逃げないでよ」
少女は明を激混みの2階のフードコートに残すと、そう言い残して人混みの中へ姿を消した。
もとより逃げる気はなかった。
気難しい相手だが、天津紗英はひどく謎めいた美少女で、居心地の悪さよりも一緒に居たい気持ちのほうがわずかに強い。
たかが雑魚ニートのフリーターに何ができると言われるかもしれないが、彼女のその謎を解きたいと思う。
生体工学で世界征服を企む人肉工房なる秘密組織。
オルガノイドとやらを使って臓器を培養し、それを裏で売買して富裕層や政財界を牛耳っているという。
その人肉工房が”遊び”で生み出した培養人間たち。
明は指ノイドしか見ていないが、目玉ノイドなど、ほかにもいろんなのがいるらしい。
紗英はその培養人間の最新型だというのだが、それはいったいどういうことなのか。
彼女の外見は、指ノイドのそれのように気色の悪いものではない。
いや、気色悪いどころか、その若さに似合わぬ悩殺ボディの持ち主で、顔も吸いつきたくなるほど可愛らしい。
萌え+エロスの驚くべきコンビネーション。
イラストにしてイオンの壁に貼ったら巷のフェミたちがこぞって発狂すること間違いなしのその衝撃度。
ルッキズムの頂点に君臨するであろうその美少女と、フェイク陰暴論がそのまま具現化したような秘密組織。
そこにどういうつながりがあるというのだろう。
父の佐平が生きていれば、その辺りの事情をもう少し訊けたはずだが、佐平は再会した時にはすでに不死の病に冒されており、しかも指ノイドの奇襲であっというまに死んでしまった。
しかしあの時、思い返してみれば、指ノイドたちを殲滅したのも紗英なのだ。
だが「絶対見ないで」と言われて家の中に隔離されていた明には、実際に何が起こったのか、皆目わからない。
そんなことをつらつら考えていると、
「お待たせ」
頭の上から鈴が鳴るような声が聞こえてきた。
「ん?」
顔を上げた明は、
「うぐ」
目を剥き、口を半開きにしてフリーズした。
やべ。
これはあまりに・・・。
ヤバ過ぎる。
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