気まぐれシネマレビュー

#1 見なけりゃもったいない！ ～12人の死にたい子どもたち～

　あちこちの映画レビューで評価が低く、あまり期待せずに見に行ったのですが、とてもよかったです。

　ある自殺サイトをきっかけに、死ぬために廃病院に集まった12人の少年少女。ところがそこにはすでに13人目の”死体”があり…。この死体はいったい誰のものなのか。殺したのは誰なのか。もしかして、この12人の中に、殺人鬼が紛れ込んでいるのではないか…。
　
　こんな出だしなのですが、要は、極限状況に置かれた子どもたちが誰だかわからない殺人鬼にバッタバッタと殺されていく、というお話を期待して見に行った人から不満が続出、ということなのでしょう。

　なんせこれはある意味よくできた本格ミステリで、誰も死なないわけですから。

　それにしても感心するのは、堤監督の処理のうまさ。地味だけどこれだけ複雑な物語を、無駄なくわかりやすく映像化してしまうのは、さすが「ケイゾク」や「トリック」で鍛えただけのことはありますね。ここは押さえておかないと論理が破綻する、というシーンがすべてきちんと押さえられており、「イニシエーション・ラブ」の時もそうでしたが、見終えて「あーすっきりした！」と大満足でした。そこが、派手な割にロジックを無視して途中から眠くてたまらなくなった「マスカレード・ホテル」との一番の違いです。推理小説好きな方にはおすすめです。

　ちなみに役者さんたちの演技もみな個性的で素晴らしく、個人的には3番の怪力ゴスロリ少女がベストでした。「どれも自殺するほどの動機とは思えない」という批判もありましたが、何が原因で自殺したくなるかなんて当人にしかわからないことなので、ここで描かれた動機というのもありなんじゃないかなと思います。
　
優れた映画なのに、的外れのレビューが多くて残念です。