制服の胸のここには

戸影絵麻

文字の大きさ
上 下
7 / 31

#5 屈辱的な罠

しおりを挟む
 罠…。
 やっぱり、罠だった。
 噛み締めた唇から血がにじむ。
 あるはずなかったんだ。
 そんなこと…。
 僕の内心を言い当てるかのように、甲高い声が言う。
「我らが学級委員、氷室基子様がおめーみていな底辺に告るとか、本気で信じてたわけじゃあるめーな?」
 高尾の横にはバディのようにその名の通り赤い髪の赤城が、ふたりの後ろには十人近い男どもが控えている。
 高尾と赤城は地方のヤンキーの典型で、それぞれ家が地主なだけに羽振りがいい。
 僕の住む御影市は中部地方の辺境に位置していて、高等学校といえばこの曙高校しかない。
 だから基子のような才女と高尾たちのようなヤンキーとの人種のサラダボウル状態が生じるのだ。
「え、えと、ぼ、僕に、な、なんの、用?」
 顔にひきつったお追従笑いを貼り付けて僕は訊く。
 金銭の要求ならまだましなほうだが、あいにくふたりのほうがお金持ちなのでそういう可能性はあまりない。
「ただのストレス解消だよ。セブンティーンともなると、いろいろ溜まっちまうの、てめーもわかるだろ?」
 赤城が言うなり、ボス核の高尾が「やれ」というように目顔で手下たちを促した。
「や、やめて」
 たちまち取り押さえられる僕。
 制服とネクタイをはぎ取られ、カッターシャツを脱がされた。
 わらわらと伸びてきた手がズボンのベルトを外し、乱暴にファスナーを引き下げる。
「何すんだ! や、やめろ…」
 がむしゃらに抵抗しても、無駄だった。
 次から次に伸びてくる手は見る間に僕から下着をはぎ取り、裸に剥いた。
 そのまま引きずり起され、羽交い絞めにされて高尾たちの前に晒される。
「吊るせ」
 にたりと笑って高尾が言う。
「ちょ、ちょっと…」
 前を隠そうにも、両腕を後ろ手にねじられ、なすすべもない。
 股間が異様にうそ寒く、僕は全員の視線がそこに注がれるのを感じて耳朶まで赤くした。
「こいつ、パイパンじゃねえか」
 仲間たちの声を代弁するように、高尾が面白そうに言う。
「まさか自分で剃ってるとか。変態と違うか?」
 赤城の突っ込みにどっと手下たちが噴き出した。
 僕は顔を背けるしかない。
 図星だったからだ。
 自分を慰める時、鏡を使う。
 肝心の部分がよく見えるよう、定期的に剃毛しているのはこの僕なのだ。
 気がつくと、僕はバスケットボールのゴールポストの下まで運ばれていた。
 吊るせ、という高尾の台詞の意味と、ここへ入った時覚えた違和感の正体に気づいたのは、その時だ。
 ロープである。
 まるで死刑囚を待つようにー。
 ゴールポストからは、拘束具のついたロープが、何本も垂れ下がっていたのだった…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!

佐々木雄太
青春
四月—— 新たに高校生になった有村敦也。 二つ隣町の高校に通う事になったのだが、 そこでは、予想外の出来事が起こった。 本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。 長女・唯【ゆい】 次女・里菜【りな】 三女・咲弥【さや】 この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、 高校デビューするはずだった、初日。 敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。 カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

不撓導舟の独善

縞田
青春
志操学園高等学校――生徒会。その生徒会は様々な役割を担っている。学校行事の運営、部活の手伝い、生徒の悩み相談まで、多岐にわたる。 現生徒会長の不撓導舟はあることに悩まされていた。 その悩みとは、生徒会役員が一向に増えないこと。 放課後の生徒会室で、頼まれた仕事をしている不撓のもとに、一人の女子生徒が現れる。 学校からの頼み事、生徒たちの悩み相談を解決していくラブコメです。 『なろう』にも掲載。

彼女に思いを伝えるまで

猫茶漬け
青春
主人公の登藤 清(とうどう きよし)が阿部 直人(あべ なおと)に振り回されながら、一目惚れした山城 清美(やましろ きよみ)に告白するまでの高校青春恋愛ストーリー 人物紹介 イラスト/三つ木雛 様 内容更新 2024.11.14

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

漫才部っ!!

育九
青春
漫才部、それは私立木芽高校に存在しない部活である。 正しく言えば、存在はしているけど学校側から認められていない部活だ。 部員数は二名。 部長 超絶美少女系ぼっち、南郷楓 副部長 超絶美少年系ぼっち、北城多々良 これは、ちょっと元ヤンの入っている漫才部メンバーとその回りが織り成す日常を描いただけの物語。

窓を開くと

とさか
青春
17才の車椅子少女ー 『生と死の狭間で、彼女は何を思うのか。』 人間1度は訪れる道。 海辺の家から、 今の想いを手紙に書きます。 ※小説家になろう、カクヨムと同時投稿しています。 ☆イラスト(大空めとろ様) ○ブログ→ https://ozorametoronoblog.com/ ○YouTube→ https://www.youtube.com/channel/UC6-9Cjmsy3wv04Iha0VkSWg

処理中です...