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第5章 約束の地へ
action 17 使命
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「触角に触らないよう、気をつけて」
光の注意を守りながら、”体育館”まで戻ると、僕らは最後の扉の前に立った。
広い空間の奥の壁にはめ込まれた、どこにでもあるような両開きの鉄扉である。
「これで終わるんだ」
あずみが自分言い聞かせるように言い、鉄のワッカに手を伸ばす。
ぎいっと扉が開くと、そこは真っ暗な空間だった。
見回すと、天井が一面の星空になっている。
外に出たのか?
いや、違う。
外界にしては、星の数が多すぎる…。
「プラネタリウムね」
後ろ手に扉を閉めて、あずみがつぶやいた。
「誰かいるぜ」
闇に目が慣れてくると、一平のいう通り、大きなデスクの向こう側にやせた人影が見えてきた。
「座りたまえ」
人影が言った。
どこかで聞いたことのある声だった。
クッションの効いた丸椅子が人数分あり、僕らはそこに腰を下ろした。
自然と、机を挟んで人影と向かい合う格好になる。
「ようこそ」
やはりどこかで聞いたことのある声で、人影が言った。
僕は目を凝らした。
星明かりを背景にして、眼鏡の縁が光っている。
この髪型、この顔の輪郭…。
ま、まさか、そんなことが?
が、あずみにはひと足先にわかっていたようだった。
「父さん…コースケ父さんでしょ?」
身を乗り出すなり、いきなり叫んだ。
人影が狼狽を隠すように、わざとらしく咳払いした。
「い、今は、コースケではない。私は神だ」
「は? 神?」
僕は呆れた。
「なんでコースケが神なんだよ? だいたいなんであんたがここにいる? ここはオーバーロードの謁見室なんだろ?」
「だからそれは、私が神だからだ。よろしい、説明しよう。10日ほど前のことだ。デリヘルの取材中、突如として、私に神が降臨したのだ。したがって、その日から私は神となり。この日のためにすべてを準備することにした。そうして、壮大な実験の結果、おまえたちがここへやってきた。まあ、親子ということもあって、途中、いくつかアドバイスを与えたりしたがな。そのくらいは、お天道様も許してくださるだろう」
「そうか。そういうことか」
光がひとりごちた。
「ケロヨンの正体は、あなただったのね。道理でネーミングが昭和だと思った」
「実験って、なんのことだよ? おっさん、おいらたちを利用して、何企んでるんだ?」
一平が喧嘩腰になって、つっかかる。
このとぼけたオヤジが、よほど腹に据えかねたらしい。
「利用したとは人聞きの悪い。私が目指したのは、”進化の促進”だ。一定の数の人間を閉鎖空間に閉じ込め、そこに触媒を投入する。その中で摩擦が起こり、最も優秀なDNAを発現した者だけが生き残る。今回は、それがあずみだったというわけだ。まさか、マルデックのDNAが発現するとは、さすがの私も、予想していなかったんだがね」
「触媒って、あの寄生虫はあんたが撒いたってことなのかよ? 謎の爆発ってのは、嘘だったのか?」
「いかにも」
コースケがうなずいた。
「今はツイッターという、デマ拡散にぴったりの道具があるんでね。世間をだますのは、赤子の手をひねるより簡単だったよ。リボーンは雑魚量産用、リサイクルは潜在的能力者を探すためにばら撒いたのだが、思ったよりリボーンの感染力が強くてね。街中がゾンビだらけになってしまった」
「ひどいな。狂ってる」
僕はそう吐き捨てた。
コースケが神云々というのはこの際置いておくとしても、ここまで事情を知っているということは、少なくともこの男、事件の中心にいることは確かなのだろう。
しかし、進化の促進のために人々をゾンビに変えてしまうなんて、自分勝手にもほどがあるというものだ。
「しっかし、よくわかんないわね。なんでそんなに急いで人間の進化を促進させなきゃならないの? しかもこんなにたくさん犠牲者を出してまで」
怒ったように光が言った。
クールな彼女には、珍しいことだった。
光はもう、サングラスをしていない。
シャープでスタイリッシュな大人の女の顔を、惜しげもなく晒しているのだ。
「問題はそこだ。実はもうすぐ、侵略が始まる」
重々しい口調で、コースケが言った。
「侵略? 宇宙人でも攻めてくるっていうのかよ?」
「これを見ろ」
一平の言葉をさえぎるように、コースケが手を伸ばした。
星空が消え、天井に見慣れぬ映像が浮かび上がる。
色とりどりの透明な球体が浮かぶ、海の中みたいな映像だ。
「これが5次元空間だ。そしてこの丸い球がひとつひとつの世界。アニメやラノベによく出てくる平行世界というのは、実はこんなふうになっている。5次元空間に浮かぶ無数のあぶく。それが互いに距離を取ってこんな感じで秩序正しく存在してるんだが…」
「へーえ、平行世界って、もっと線状かと思ってた。ま、5次元ってのがそもそもよくわかんないんだけどね」
光は純粋に興味を覚えたようだ。
「もちろん、5次元空間というものは君たちの知覚では認識できないさ。だからこの映像も、人間の知能に合わせて、無理やり単純化して作ってある。それで、話を戻すとだな。ほら、この黒い球。こいつが現在、我々の世界に近づきつつあるというわけだ。この世界はすでに滅びかけていて、残った住人たちが他の平行世界の乗っ取りを企んでいる、と言えばわかりやすいかな。だからといって、我々としても、はいそうですかと世界を差し出すわけにはいかないだろう。ということは、必然的に戦わねばならない。それには優秀な戦士が必要だ。たとえばそこにいるあずみみたいにね」
コースケは一気に言い切ると、眼鏡越しにじっとあずみを見た。
「え? じゃ、リバースは? お父さん、リバースはどこにあるの?」
息せき切ってあずみがたずねた。
こういうところは、やはり女性の強さだろう。
相手の話は適当に聞き流し、あくまでもまず己の要求を押し通す。
あずみとしては、侵略も戦士もまだピンと来ていないに違いない。
「だからあずみ、そんなものは、初めっからなかったのだ」
困り果てたようにコースケが答えた。
「私は今の強いおまえを創り出したかっただけのだ。だいたい、ゾンビ化を巻き戻すなんて、そんなうまい話があるはずなかろう。これが小説なら、ご都合主義にもほどがあると読者から総スカンを食らうところだぞ」
「そ、そんな…」
あずみが椅子を蹴倒して立ち上がった。
「リバースが、リバースが、初めっから存在しなかったなんて…。くうう、このうそつき! 人間のクズ! なんのためにあずみたちが、ここまで頑張ってきたと思ってるのよ! 返せ! あずみの身体を返せ! あずみの青春を、返してよ!」
「いや、だから、私は人間のクズではなく、神様のクズなんだ…」
神様か何だか知らないが、あずみの涙に弱いのは、僕の知っているコースケと同じだった。
「だけどさ、どうして那古野なんだよ? 戦士を探すなら、もっと人口の多い東京やニューヨークでやればいいじゃないか? 小説や映画の舞台もたいていそうだろ? なにもこんな、日本で一番人気のない都市を選ばなくても」
机に突っ伏して泣き出したあずみの背中を撫でながら、僕は訊いた。
「まずは地の利だ。私はこの町で生まれ育って、ここで仕事をしていた。逆に言うと、東京やニューヨークのことはよく知らない。それから、経費の問題もある。那古野より大きい都市となると、莫大な経費がかかるんだよ」
「は? 経費? 神様なのに?」
僕は唖然とした。
なんと小さい。
こいつ、ほんとに神なのか。
「当然、神にも序列がある。私はまだ新米だから、上司のお天道様にお伺いを立てたり、経費を申請したりしなければならんのだ。まあ、おまえらには、サラリーマンの辛さはわからんだろうがな」
何がサラリーマンだ。
僕は心の中で毒づいた。
ずっと自由業で、子どもをほったらかして、半分遊んで暮らしてたくせに。
だいたい、何だよ。そのお天道様ってのは?
ネーミングからして、いい加減すぎるだろ。
「で、どうするの? あずみちゃん、泣いちゃったよ」
そろそろ飽きてきたのか、投げやりな口調で光が言った。
「うう、困ったな」
コースケが頭を掻いた。
「な、あずみ、機嫌を直してくれないか。もちろん、戦いに際しては、私がおまえに十分な能力を付与してやる。ひとりで宇宙ひとつ、丸ごと破壊できるほどのチートな能力をな。ステータスもMAXにして、ゲームで言えば『強くてニューゲーム』状態でスタートできるよう、最強の武器も防具もすべてそろえておいてやる。だからおまえは、ただ可愛い声で『うん』といってくれれば、それでいいのだよ」
これはあずみがへそを曲げた時、昔、コースケがよく使った手だった。
つまりモノで釣ろうというわけだ。
「そんなことできるんなら、おっさんが自分で戦えばいいんじゃね? なにもあずみに頼らなくてもさ」
一平が、珍しくど真ん中ストレートの正論を展開した。
「馬鹿言え。神がじきじき出向いたら、それこそハルマゲドンだろう? それに私は暴力はどうも苦手でね。昔から血を見ると胸が悪くなる」
「クソ役に立たねえやつ!」
一平が憤慨した時である。
それまで机に臥せっていたあずみが、突然がばっと顔を上げた。
「それ、やってもいいけど、ひとつだけ条件があるよ」
眼が座っている。
何か固い決意を秘めたまなざしだ。
「な、なんだ? おまえの望みなら、なんでも聞いてやるぞ?」
コースケの顏がふにゃっとニヤけるのがわかった。
「お兄ちゃんとの結婚を認めて。その戦いとやらが終わったら、あずみ、お兄ちゃんと婚約する。で、高校出たら結婚するの。それを認めてほしい。あずみの父として、正式に」
「なんだと?」
眼鏡の奥で、コースケの眼が点になった。
「あ、あずみ、おまえ…そ、そんなことで、いいのか?」
光の注意を守りながら、”体育館”まで戻ると、僕らは最後の扉の前に立った。
広い空間の奥の壁にはめ込まれた、どこにでもあるような両開きの鉄扉である。
「これで終わるんだ」
あずみが自分言い聞かせるように言い、鉄のワッカに手を伸ばす。
ぎいっと扉が開くと、そこは真っ暗な空間だった。
見回すと、天井が一面の星空になっている。
外に出たのか?
いや、違う。
外界にしては、星の数が多すぎる…。
「プラネタリウムね」
後ろ手に扉を閉めて、あずみがつぶやいた。
「誰かいるぜ」
闇に目が慣れてくると、一平のいう通り、大きなデスクの向こう側にやせた人影が見えてきた。
「座りたまえ」
人影が言った。
どこかで聞いたことのある声だった。
クッションの効いた丸椅子が人数分あり、僕らはそこに腰を下ろした。
自然と、机を挟んで人影と向かい合う格好になる。
「ようこそ」
やはりどこかで聞いたことのある声で、人影が言った。
僕は目を凝らした。
星明かりを背景にして、眼鏡の縁が光っている。
この髪型、この顔の輪郭…。
ま、まさか、そんなことが?
が、あずみにはひと足先にわかっていたようだった。
「父さん…コースケ父さんでしょ?」
身を乗り出すなり、いきなり叫んだ。
人影が狼狽を隠すように、わざとらしく咳払いした。
「い、今は、コースケではない。私は神だ」
「は? 神?」
僕は呆れた。
「なんでコースケが神なんだよ? だいたいなんであんたがここにいる? ここはオーバーロードの謁見室なんだろ?」
「だからそれは、私が神だからだ。よろしい、説明しよう。10日ほど前のことだ。デリヘルの取材中、突如として、私に神が降臨したのだ。したがって、その日から私は神となり。この日のためにすべてを準備することにした。そうして、壮大な実験の結果、おまえたちがここへやってきた。まあ、親子ということもあって、途中、いくつかアドバイスを与えたりしたがな。そのくらいは、お天道様も許してくださるだろう」
「そうか。そういうことか」
光がひとりごちた。
「ケロヨンの正体は、あなただったのね。道理でネーミングが昭和だと思った」
「実験って、なんのことだよ? おっさん、おいらたちを利用して、何企んでるんだ?」
一平が喧嘩腰になって、つっかかる。
このとぼけたオヤジが、よほど腹に据えかねたらしい。
「利用したとは人聞きの悪い。私が目指したのは、”進化の促進”だ。一定の数の人間を閉鎖空間に閉じ込め、そこに触媒を投入する。その中で摩擦が起こり、最も優秀なDNAを発現した者だけが生き残る。今回は、それがあずみだったというわけだ。まさか、マルデックのDNAが発現するとは、さすがの私も、予想していなかったんだがね」
「触媒って、あの寄生虫はあんたが撒いたってことなのかよ? 謎の爆発ってのは、嘘だったのか?」
「いかにも」
コースケがうなずいた。
「今はツイッターという、デマ拡散にぴったりの道具があるんでね。世間をだますのは、赤子の手をひねるより簡単だったよ。リボーンは雑魚量産用、リサイクルは潜在的能力者を探すためにばら撒いたのだが、思ったよりリボーンの感染力が強くてね。街中がゾンビだらけになってしまった」
「ひどいな。狂ってる」
僕はそう吐き捨てた。
コースケが神云々というのはこの際置いておくとしても、ここまで事情を知っているということは、少なくともこの男、事件の中心にいることは確かなのだろう。
しかし、進化の促進のために人々をゾンビに変えてしまうなんて、自分勝手にもほどがあるというものだ。
「しっかし、よくわかんないわね。なんでそんなに急いで人間の進化を促進させなきゃならないの? しかもこんなにたくさん犠牲者を出してまで」
怒ったように光が言った。
クールな彼女には、珍しいことだった。
光はもう、サングラスをしていない。
シャープでスタイリッシュな大人の女の顔を、惜しげもなく晒しているのだ。
「問題はそこだ。実はもうすぐ、侵略が始まる」
重々しい口調で、コースケが言った。
「侵略? 宇宙人でも攻めてくるっていうのかよ?」
「これを見ろ」
一平の言葉をさえぎるように、コースケが手を伸ばした。
星空が消え、天井に見慣れぬ映像が浮かび上がる。
色とりどりの透明な球体が浮かぶ、海の中みたいな映像だ。
「これが5次元空間だ。そしてこの丸い球がひとつひとつの世界。アニメやラノベによく出てくる平行世界というのは、実はこんなふうになっている。5次元空間に浮かぶ無数のあぶく。それが互いに距離を取ってこんな感じで秩序正しく存在してるんだが…」
「へーえ、平行世界って、もっと線状かと思ってた。ま、5次元ってのがそもそもよくわかんないんだけどね」
光は純粋に興味を覚えたようだ。
「もちろん、5次元空間というものは君たちの知覚では認識できないさ。だからこの映像も、人間の知能に合わせて、無理やり単純化して作ってある。それで、話を戻すとだな。ほら、この黒い球。こいつが現在、我々の世界に近づきつつあるというわけだ。この世界はすでに滅びかけていて、残った住人たちが他の平行世界の乗っ取りを企んでいる、と言えばわかりやすいかな。だからといって、我々としても、はいそうですかと世界を差し出すわけにはいかないだろう。ということは、必然的に戦わねばならない。それには優秀な戦士が必要だ。たとえばそこにいるあずみみたいにね」
コースケは一気に言い切ると、眼鏡越しにじっとあずみを見た。
「え? じゃ、リバースは? お父さん、リバースはどこにあるの?」
息せき切ってあずみがたずねた。
こういうところは、やはり女性の強さだろう。
相手の話は適当に聞き流し、あくまでもまず己の要求を押し通す。
あずみとしては、侵略も戦士もまだピンと来ていないに違いない。
「だからあずみ、そんなものは、初めっからなかったのだ」
困り果てたようにコースケが答えた。
「私は今の強いおまえを創り出したかっただけのだ。だいたい、ゾンビ化を巻き戻すなんて、そんなうまい話があるはずなかろう。これが小説なら、ご都合主義にもほどがあると読者から総スカンを食らうところだぞ」
「そ、そんな…」
あずみが椅子を蹴倒して立ち上がった。
「リバースが、リバースが、初めっから存在しなかったなんて…。くうう、このうそつき! 人間のクズ! なんのためにあずみたちが、ここまで頑張ってきたと思ってるのよ! 返せ! あずみの身体を返せ! あずみの青春を、返してよ!」
「いや、だから、私は人間のクズではなく、神様のクズなんだ…」
神様か何だか知らないが、あずみの涙に弱いのは、僕の知っているコースケと同じだった。
「だけどさ、どうして那古野なんだよ? 戦士を探すなら、もっと人口の多い東京やニューヨークでやればいいじゃないか? 小説や映画の舞台もたいていそうだろ? なにもこんな、日本で一番人気のない都市を選ばなくても」
机に突っ伏して泣き出したあずみの背中を撫でながら、僕は訊いた。
「まずは地の利だ。私はこの町で生まれ育って、ここで仕事をしていた。逆に言うと、東京やニューヨークのことはよく知らない。それから、経費の問題もある。那古野より大きい都市となると、莫大な経費がかかるんだよ」
「は? 経費? 神様なのに?」
僕は唖然とした。
なんと小さい。
こいつ、ほんとに神なのか。
「当然、神にも序列がある。私はまだ新米だから、上司のお天道様にお伺いを立てたり、経費を申請したりしなければならんのだ。まあ、おまえらには、サラリーマンの辛さはわからんだろうがな」
何がサラリーマンだ。
僕は心の中で毒づいた。
ずっと自由業で、子どもをほったらかして、半分遊んで暮らしてたくせに。
だいたい、何だよ。そのお天道様ってのは?
ネーミングからして、いい加減すぎるだろ。
「で、どうするの? あずみちゃん、泣いちゃったよ」
そろそろ飽きてきたのか、投げやりな口調で光が言った。
「うう、困ったな」
コースケが頭を掻いた。
「な、あずみ、機嫌を直してくれないか。もちろん、戦いに際しては、私がおまえに十分な能力を付与してやる。ひとりで宇宙ひとつ、丸ごと破壊できるほどのチートな能力をな。ステータスもMAXにして、ゲームで言えば『強くてニューゲーム』状態でスタートできるよう、最強の武器も防具もすべてそろえておいてやる。だからおまえは、ただ可愛い声で『うん』といってくれれば、それでいいのだよ」
これはあずみがへそを曲げた時、昔、コースケがよく使った手だった。
つまりモノで釣ろうというわけだ。
「そんなことできるんなら、おっさんが自分で戦えばいいんじゃね? なにもあずみに頼らなくてもさ」
一平が、珍しくど真ん中ストレートの正論を展開した。
「馬鹿言え。神がじきじき出向いたら、それこそハルマゲドンだろう? それに私は暴力はどうも苦手でね。昔から血を見ると胸が悪くなる」
「クソ役に立たねえやつ!」
一平が憤慨した時である。
それまで机に臥せっていたあずみが、突然がばっと顔を上げた。
「それ、やってもいいけど、ひとつだけ条件があるよ」
眼が座っている。
何か固い決意を秘めたまなざしだ。
「な、なんだ? おまえの望みなら、なんでも聞いてやるぞ?」
コースケの顏がふにゃっとニヤけるのがわかった。
「お兄ちゃんとの結婚を認めて。その戦いとやらが終わったら、あずみ、お兄ちゃんと婚約する。で、高校出たら結婚するの。それを認めてほしい。あずみの父として、正式に」
「なんだと?」
眼鏡の奥で、コースケの眼が点になった。
「あ、あずみ、おまえ…そ、そんなことで、いいのか?」
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