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第3章 イオン奪還
action 16 抱擁
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疲れ切っているはずなのに、眼が冴えて眠れない。
そんな経験は、誰にでもあると思う。
ちょうどその夜の僕が、そうだった。
一平の言った、”最後の晩餐”なるひと言が、耳にこびりついて離れなかったせいもある。
一平としても、それほど深い意味を込めて口にしたわけではなかったに違いない。
でも、一度気になるともうだめだった。
もしも本当に、これが最後の食事だとしたら…。
その後の夕食は、前日に山田工務店でごちそうになったものをしのぐほど贅沢なものだったのだけれども、一度気になり出すと、気の小さい僕には、その晩餐を心の底から楽しむことなんて、もうとうてい無理だったのだ。
眠れない理由は他にもあった。
まずベッドがふかふかすぎること。
マットレスも布団も高級すぎて、横になっていてもどうにも落ち着かないのである。
そしてもうひとつ。
極めつけは一平のいびきだった。
あの小さな体からどうしてこんなに大きな音が…。
そう不思議に思わずにはいられないほど、うるさいのである。
しかもその轟音の合間に、何か別の楽器で合の手を入れるみたいに、凄まじい歯ぎしりが時々挟まるのだからたまらない。
一応ベッドとベッドの間は衝立で区切ってあるのだが、そんなもの、一平のいびきと歯ぎしり攻撃の前には何の役にも立たなかった。
仕方なく薄暗い天井を見上げ、きょうまでに起こった出来事をつらつら思い返していると、ふと意外なほど近くで衣ずれの音がした。
ん?
何気なく視線を転じた僕は、そこでウッと喉を詰まらせた。
非常灯の薄明かりを背景にして、見事なまでの曲線で縁取りされた美しい女体が佇んでいる。
逆光で顔までは見えないが、間違いない。
あずみだった。
僕が呻いたのは他でもない。
あずみがパジャマも下着も、何も身に着けていないようだったからだ。
逆光でも、シルエットでそれくらいのことはわかる。
ベッドの端に腰かけるつもりなのか、あずみが横を向くと、上向きにつんと張った釣り鐘型の乳房とその先端で硬くなっている乳首がはっきりと見えた。
ま、まずい。
僕はシーツの下で胎児のように体を丸めた。
ひと目見ただけで、身体が反応し始めている。
くたくたに疲れているはずなのに、一部分だけが急に元気になり、身体の中心でその存在を主張し始めているのだ。
「眠れないのか?」
あずみがひと言も発しないので、しかたなく僕は声をかけた。
シルエットがうなずくのがわかった。
夕食の後、みんなで代わる代わるシャワーを浴びたため、ボディソープのローズの香りがかすかに漂ってくる。
「俺もだよ」
一平のいびきの合間を縫って、僕は続けた。
「ちょっと高級なベッド、選び過ぎたよな」
あずみの影が動いた。
流れるように迫ってくると、次の瞬間には、その顏が目と鼻の先に来ていた。
「一緒に、寝ていい?」
小さな声であずみが言った。
一平の歯ぎしりをバックにしても、なぜだかその声は耳に届いてきた。
それほど僕が聞き耳を立てていた証拠かもしれなかった。
「これが最後の夜かもしれないと思うと、じっとしていられなくなっちゃって…」
あずみがシーツを剥いで、仰向けになった僕の上に四つん這いになった。
目の前で、たわわな果実が揺れている。
大きくて柔らかそうな、夢にまで見たふくらみが…。
その時僕を突き動かしたのは、おそらく本能のようなものだったのだろう。
我慢できなくなり、僕はその先端の尖った蕾に唇を触れさせた。
あずみは何も言わなかった。
思い切って、口に含んでみた。
それは熱を持っていて、硬く尖ってしまっていた。
舌の先で転がすと、
「あん…」
あずみの喉から悩ましげな声が漏れた。
「触って…」
喉をのけ反らせて、あずみが喘いだ。
「い、いいのか…?」
まだ、何も終わっていないのに…?
おそるおそる、両手の掌をおわんの形にして、そっとその果実を受け止める。
それは手のひらに余るほど大きく、そして際限なく柔らかだった。
2,3度揉みしだくように指を動かすと、
「あふ…」
あずみが震えるような長い吐息を吐いた。
その手が動き、まさぐるように僕の股間をなぞってくる。
下着越しに、あずみの指が固くなったものに触れる。
今度は僕が喘ぐ番だった。
「お兄ちゃんったら」
あずみがくすっと笑った。
「もうこんなになってる」
「だ、だって…」
あずみの指がゆっくり動き始めた。
ぞくぞくした快感が背筋を遡ってきて、僕の言葉を封じた。
「あずみのこと、好きだから?」
指を動かしながら、甘えるようにあずみが囁いた。
僕はもう、うなずくことしかできなかった。
いかん。
このままでは爆発してしまう。
それはいくらなんでもかっこ悪い。
男として失格だろう。
「する?」
意を決したように、あずみが訊いた。
「やり方が、わからない」
正直に、僕は答えた。
20年間彼女ナシの僕に、それはあまりにも高いハードルだったのだ。
「あずみも」
言いながら、あずみが僕の下腹の上にまたがってくる。
僕の太腿にあずみの大事な部分が触れると、そこがすでに熱く湿っているのが分かった。
お互い準備完了なら、なんとかなるだろうか。
あずみのくびれた腰に両手を回し、いざ、と身構えた時である。
「お母ちゃん、おしっこ!」
頭のすぐ後ろ。
衝立の向こうで一平が叫んだ。
「はやくう! おいらもう洩れちゃうよ!」
大音量の寝言だった。
あずみがぷっと吹き出した。
僕も笑った。
股間で分身がへなへなと力を失っていくのが分かった。
「また、おあずけだね」
僕の上から降り、くすくす笑いながら、あずみが言った。
「だな」
仰向けになったまま、僕はうなずいた。
「こういうのって、やっぱり、すべて終わった後のご褒美だよな」
「だよね。それに、一平ちゃんにも、悪いもんね」
僕はあずみの手を握った。
そして、思った。
何も焦ること、ないじゃないか。
とにかく、最後まで生き延びれば、それでいいんだから…。
そんな経験は、誰にでもあると思う。
ちょうどその夜の僕が、そうだった。
一平の言った、”最後の晩餐”なるひと言が、耳にこびりついて離れなかったせいもある。
一平としても、それほど深い意味を込めて口にしたわけではなかったに違いない。
でも、一度気になるともうだめだった。
もしも本当に、これが最後の食事だとしたら…。
その後の夕食は、前日に山田工務店でごちそうになったものをしのぐほど贅沢なものだったのだけれども、一度気になり出すと、気の小さい僕には、その晩餐を心の底から楽しむことなんて、もうとうてい無理だったのだ。
眠れない理由は他にもあった。
まずベッドがふかふかすぎること。
マットレスも布団も高級すぎて、横になっていてもどうにも落ち着かないのである。
そしてもうひとつ。
極めつけは一平のいびきだった。
あの小さな体からどうしてこんなに大きな音が…。
そう不思議に思わずにはいられないほど、うるさいのである。
しかもその轟音の合間に、何か別の楽器で合の手を入れるみたいに、凄まじい歯ぎしりが時々挟まるのだからたまらない。
一応ベッドとベッドの間は衝立で区切ってあるのだが、そんなもの、一平のいびきと歯ぎしり攻撃の前には何の役にも立たなかった。
仕方なく薄暗い天井を見上げ、きょうまでに起こった出来事をつらつら思い返していると、ふと意外なほど近くで衣ずれの音がした。
ん?
何気なく視線を転じた僕は、そこでウッと喉を詰まらせた。
非常灯の薄明かりを背景にして、見事なまでの曲線で縁取りされた美しい女体が佇んでいる。
逆光で顔までは見えないが、間違いない。
あずみだった。
僕が呻いたのは他でもない。
あずみがパジャマも下着も、何も身に着けていないようだったからだ。
逆光でも、シルエットでそれくらいのことはわかる。
ベッドの端に腰かけるつもりなのか、あずみが横を向くと、上向きにつんと張った釣り鐘型の乳房とその先端で硬くなっている乳首がはっきりと見えた。
ま、まずい。
僕はシーツの下で胎児のように体を丸めた。
ひと目見ただけで、身体が反応し始めている。
くたくたに疲れているはずなのに、一部分だけが急に元気になり、身体の中心でその存在を主張し始めているのだ。
「眠れないのか?」
あずみがひと言も発しないので、しかたなく僕は声をかけた。
シルエットがうなずくのがわかった。
夕食の後、みんなで代わる代わるシャワーを浴びたため、ボディソープのローズの香りがかすかに漂ってくる。
「俺もだよ」
一平のいびきの合間を縫って、僕は続けた。
「ちょっと高級なベッド、選び過ぎたよな」
あずみの影が動いた。
流れるように迫ってくると、次の瞬間には、その顏が目と鼻の先に来ていた。
「一緒に、寝ていい?」
小さな声であずみが言った。
一平の歯ぎしりをバックにしても、なぜだかその声は耳に届いてきた。
それほど僕が聞き耳を立てていた証拠かもしれなかった。
「これが最後の夜かもしれないと思うと、じっとしていられなくなっちゃって…」
あずみがシーツを剥いで、仰向けになった僕の上に四つん這いになった。
目の前で、たわわな果実が揺れている。
大きくて柔らかそうな、夢にまで見たふくらみが…。
その時僕を突き動かしたのは、おそらく本能のようなものだったのだろう。
我慢できなくなり、僕はその先端の尖った蕾に唇を触れさせた。
あずみは何も言わなかった。
思い切って、口に含んでみた。
それは熱を持っていて、硬く尖ってしまっていた。
舌の先で転がすと、
「あん…」
あずみの喉から悩ましげな声が漏れた。
「触って…」
喉をのけ反らせて、あずみが喘いだ。
「い、いいのか…?」
まだ、何も終わっていないのに…?
おそるおそる、両手の掌をおわんの形にして、そっとその果実を受け止める。
それは手のひらに余るほど大きく、そして際限なく柔らかだった。
2,3度揉みしだくように指を動かすと、
「あふ…」
あずみが震えるような長い吐息を吐いた。
その手が動き、まさぐるように僕の股間をなぞってくる。
下着越しに、あずみの指が固くなったものに触れる。
今度は僕が喘ぐ番だった。
「お兄ちゃんったら」
あずみがくすっと笑った。
「もうこんなになってる」
「だ、だって…」
あずみの指がゆっくり動き始めた。
ぞくぞくした快感が背筋を遡ってきて、僕の言葉を封じた。
「あずみのこと、好きだから?」
指を動かしながら、甘えるようにあずみが囁いた。
僕はもう、うなずくことしかできなかった。
いかん。
このままでは爆発してしまう。
それはいくらなんでもかっこ悪い。
男として失格だろう。
「する?」
意を決したように、あずみが訊いた。
「やり方が、わからない」
正直に、僕は答えた。
20年間彼女ナシの僕に、それはあまりにも高いハードルだったのだ。
「あずみも」
言いながら、あずみが僕の下腹の上にまたがってくる。
僕の太腿にあずみの大事な部分が触れると、そこがすでに熱く湿っているのが分かった。
お互い準備完了なら、なんとかなるだろうか。
あずみのくびれた腰に両手を回し、いざ、と身構えた時である。
「お母ちゃん、おしっこ!」
頭のすぐ後ろ。
衝立の向こうで一平が叫んだ。
「はやくう! おいらもう洩れちゃうよ!」
大音量の寝言だった。
あずみがぷっと吹き出した。
僕も笑った。
股間で分身がへなへなと力を失っていくのが分かった。
「また、おあずけだね」
僕の上から降り、くすくす笑いながら、あずみが言った。
「だな」
仰向けになったまま、僕はうなずいた。
「こういうのって、やっぱり、すべて終わった後のご褒美だよな」
「だよね。それに、一平ちゃんにも、悪いもんね」
僕はあずみの手を握った。
そして、思った。
何も焦ること、ないじゃないか。
とにかく、最後まで生き延びれば、それでいいんだから…。
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