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第2章 仲間

action 8 作戦

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「へーえ、そんなことがあったんだ」

 マグカップを口に運びながら、光がつぶやいた。

 部屋の中には、馥郁ふくいくたるコーヒーの香りがただよっている。

 夕食の後、僕らは2階の従業員用食堂から、1階の居間に移っていた。

「そうなんです。正体はわかんないんですけど、今はそのケロヨンって人の言葉にすがるしかなくって」

 光の対面、僕の右横に座ったあずみが長い睫毛を伏せて答えた。

 あずみの前にあるのはトマトジュースのペットボトル。

 ハーフゾンビも、これならおいしく飲めるらしい。

「だめだ。ケロヨンのブログ、工事中になってる」

 充電を終えたスマホの画面から顔を上げて、僕は言った。

 ケロヨンのHP、『裏那古野オーバードライブ』は、ずっと「ただいま工事中です。しばらくお待ちください」のテロップが繰り返し流れていて、中を閲覧できないようになっているのだ。

「ひょっとしたら、ケロヨンは、どこかから俺たちの行動を監視しているのかもしれないな。俺たちが、イオンに入るのを見届けたら、連絡を再開するってことなのかも」

 コーヒーに口をつけた。

 久々に飲むホットコーヒーは、涙が出るほどうまかった。

「そうだね。『対価を受取るのにふさわしい力を見せてほしい』にたいなこと、書いてきてたもんね」

 あずみがストローでトマトジュースを飲みながら、相槌を打つ。

「ケロヨンは、ドーム前イオンが、黄道会の手に落ちてるのを知ってたってことか。それで俺たちの力を試そうと…」

 僕は考え込んだ。
 
 だとしたら、恐ろしいやつである。

 おまえは神か。

 とでも言いたくなるほどだ。

「それで、勝算はあるんですか? 相手は拳銃やらナイフやらを持ったヤクザの集団でしょう? いくらあなたたちが強くても、こっちはわずか4人だ。しかも俺はまるで役に立たないときてるし」

 自嘲気味に僕が言うと、

「しょうがねえ兄ちゃんだなあ。おいらが後でなんか武器を見つくろってやるよ。この会議が終わったら、一緒に地下工場へ来いや」
 
 一平がカルピスの入ったグラス片手に、生意気な口調で言った。

「ああ、頼む。助かるよ」

 僕は素直に頭を下げた。

 こと戦闘に関しては、小学生の一平のほうが一枚も二枚も上なのだから、何を言われても仕方なかった。

 ここは彼の提案に乗るに越したことはない。

 この先、あずみにばかり頼っていられない時がやってくる。

 僕が彼女を守らねばならない時だって、来るかもしれないのだ。

「確かに向こうは人数も多いし、武器も持っている。でも、あながち勝算がないわけじゃないの」

 ゆっくりとした口調で、光が言った。

「どうするんですか?」

 とこれはあずみ。

 あずみがテーブルの上に身を乗り出すと、セーラー服の胸元が割れて、たわわで真っ白な胸の谷間がぽろんと覗く。

 思わず口笛を吹く一平。

「ゾンビを使うのよ」

 光の答えは簡単だった。

「イオンに行ったなら、1階駐車場にゾンビたちが閉じ込められてたの、見たでしょ? あれを解き放って、イオンの中に乱入させる。当然、ヤクザ対ゾンビ軍団の壮絶な戦いが始まるでしょうね。あたしたちは、それを高みの見物。どっちが勝つにしろ、最後に乗り込んでいって、残党だけ片づければそれでおしまい」

「それ、いいかも」

 僕はうなずいた。

 ちらっと見ただけでも、平面駐車場のシャッターの向こうには、ゾンビが何十人といた気がする。

 あいつらなら、銃弾にもひるまないし、まさに歩兵としては最高だ。

「そうだね、行ける気がしてきました。ゾンビを味方につけるなんて、光さん、天才的!」」

 あずみもうなずいた。

「でもね。そうは簡単にいかないのよ」

 光が肩をすくめた。

「黄道会には幹部が3人いる。組長、副組長、用心棒の3人がね。俺たちは、ゾンビたちとは別行動を取って、まずこの3人を排除する必要がある。そうすれば、あとの下っ端は烏合の衆だから、あっという間に総崩れして、ゾンビの餌食というわけだ」

 一平が注釈を加えた。

「だけどさ、この3人ってのが、かなりの強敵らしいんだよ」

「強敵?」

「そう。だから、相手が人間だからと言って、なめてかかるわけにはいかないのさ」




 
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