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第2章 仲間
action 4 雑魚
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商店街の目抜き通りを左折した先の一画。
そこが光のいうホテル街だった。
ホテルと言っても、路地の両側に軒を連ねているのは、すべてラブホテルである。
JKパブとか何とかヘルスといった、怪しい店の看板も目立つ。
が、問題は、その建物の入り口という入り口からぞろぞろと出てくるゾンビたちだった。
陽が翳ってきたせいなのだろうか。
とにかくかなりの数である。
ざっと3、40人はいそうだった。
さすが色町のゾンビたちだけあって、若いお姉さんたちが多い。
きわどいコスチュームに身を包んだのもいれば、そもそも服すら着ていない者もいる。
ところどころに混じっている黒服のイケメンゾンビは、元ホストか客引きだろう。
「みんないい? 相手が元は人間だからって、手加減しちゃだめ。こっちが生き延びるためには、徹底的に殲滅する。それだけだよ」
光が言って、コートの袖をまくった。
折れそうなほど細い右手に握っているのは、赤いヨーヨーだ。
「もしかしてそれ、武器?」
呆気に取られて僕はたずねた。
昭和時代のテレビ番組じゃあるまいし、ヨーヨーでゾンビに立ち向かうなんてまずあり得ない。
光は答えなかった。
その代わり、低く腰を落とし、アンダースローの体勢を取ると、向かってくるゾンビたちに向かって、無造作にヨーヨーを放り投げた。
見えない糸に引かれるようにして、ヨーヨーが一閃した。
大きく旋回したヨーヨーが、ぐーんと弧を描いて光の手元に戻ってくる。
光がパシッと右手でそれを受け止めた時、信じられないことが起こった。
ゾンビたちの先頭集団は、3人のホステスと2人の黒服。
その5人の首が、同時にずるっと斜めにずれたかと思うと、ごろんと地面に転がり落ちたのだ。
「な、なんだって?」
唖然とする僕に、まるで我が事のように、自慢げに一平が解説を加えた。
「光姉のヨーヨーの紐は、超極細のナノカーボン繊維なんだ。強靭で目に見えないくらい細いから、何でも切断しちまうのさ。山田工務店自慢の一品だよ」
「ナノカーボン繊維?」
「おいらの特製レールガンもそうさ。みんなうちの親父の遺品なんだ」
言いながら、一平がそのレールガンとやらの銃身を斜め上に向けた。
右手のホテルの窓が開き、丸裸の女ゾンビが飛び降りようとしている。
「ファイア!」
狙いをつけて、一平がトリガーを引く。
ギュイイイイイン!
独楽が唸った。
スピンのかかった鋼鉄の独楽は、緩やかな放物線を描いて宙を飛ぶと、正確にゾンビ女の喉首を切り裂いた。
「どうだ、すごいだろ。たださ、こいつの弱点は、後で独楽を回収しなきゃなんないってこと」
落ちてきた死体から独楽を抜き取ると、Tシャツの裾でで血を拭いながら一平が言った。
僕はただ茫然とするばかりだった。
何なんだ、この姉弟は?
これだけのゾンビを前にケロッとしているこの図太さ。
そして、この想像を絶するおかしな武器。
「第2波がやってくるわ。さあ、今度はあずみちゃん、あなたの番よ。こんなのみんな雑魚だから、遠慮なんて要らないからね」
光に促され、あずみが前へ進み出た。
スピニングポールを袋から出して、右肩に担いでいる。
白いセーラー服を突き上げるGカップのバスト。
超ミニのひだスカートからすらりと伸びた白い脚。
まるでアニメから抜け出た戦闘少女さながらだ。
「彼女の持ってるあの棒は何だい? バトンにしては長いし、ひょっとして物干し竿?」
一平が訊いてきた。
「あずみの特技はポールダンスなんだ」
僕は答えた。
「まあ、見てなって」
そこが光のいうホテル街だった。
ホテルと言っても、路地の両側に軒を連ねているのは、すべてラブホテルである。
JKパブとか何とかヘルスといった、怪しい店の看板も目立つ。
が、問題は、その建物の入り口という入り口からぞろぞろと出てくるゾンビたちだった。
陽が翳ってきたせいなのだろうか。
とにかくかなりの数である。
ざっと3、40人はいそうだった。
さすが色町のゾンビたちだけあって、若いお姉さんたちが多い。
きわどいコスチュームに身を包んだのもいれば、そもそも服すら着ていない者もいる。
ところどころに混じっている黒服のイケメンゾンビは、元ホストか客引きだろう。
「みんないい? 相手が元は人間だからって、手加減しちゃだめ。こっちが生き延びるためには、徹底的に殲滅する。それだけだよ」
光が言って、コートの袖をまくった。
折れそうなほど細い右手に握っているのは、赤いヨーヨーだ。
「もしかしてそれ、武器?」
呆気に取られて僕はたずねた。
昭和時代のテレビ番組じゃあるまいし、ヨーヨーでゾンビに立ち向かうなんてまずあり得ない。
光は答えなかった。
その代わり、低く腰を落とし、アンダースローの体勢を取ると、向かってくるゾンビたちに向かって、無造作にヨーヨーを放り投げた。
見えない糸に引かれるようにして、ヨーヨーが一閃した。
大きく旋回したヨーヨーが、ぐーんと弧を描いて光の手元に戻ってくる。
光がパシッと右手でそれを受け止めた時、信じられないことが起こった。
ゾンビたちの先頭集団は、3人のホステスと2人の黒服。
その5人の首が、同時にずるっと斜めにずれたかと思うと、ごろんと地面に転がり落ちたのだ。
「な、なんだって?」
唖然とする僕に、まるで我が事のように、自慢げに一平が解説を加えた。
「光姉のヨーヨーの紐は、超極細のナノカーボン繊維なんだ。強靭で目に見えないくらい細いから、何でも切断しちまうのさ。山田工務店自慢の一品だよ」
「ナノカーボン繊維?」
「おいらの特製レールガンもそうさ。みんなうちの親父の遺品なんだ」
言いながら、一平がそのレールガンとやらの銃身を斜め上に向けた。
右手のホテルの窓が開き、丸裸の女ゾンビが飛び降りようとしている。
「ファイア!」
狙いをつけて、一平がトリガーを引く。
ギュイイイイイン!
独楽が唸った。
スピンのかかった鋼鉄の独楽は、緩やかな放物線を描いて宙を飛ぶと、正確にゾンビ女の喉首を切り裂いた。
「どうだ、すごいだろ。たださ、こいつの弱点は、後で独楽を回収しなきゃなんないってこと」
落ちてきた死体から独楽を抜き取ると、Tシャツの裾でで血を拭いながら一平が言った。
僕はただ茫然とするばかりだった。
何なんだ、この姉弟は?
これだけのゾンビを前にケロッとしているこの図太さ。
そして、この想像を絶するおかしな武器。
「第2波がやってくるわ。さあ、今度はあずみちゃん、あなたの番よ。こんなのみんな雑魚だから、遠慮なんて要らないからね」
光に促され、あずみが前へ進み出た。
スピニングポールを袋から出して、右肩に担いでいる。
白いセーラー服を突き上げるGカップのバスト。
超ミニのひだスカートからすらりと伸びた白い脚。
まるでアニメから抜け出た戦闘少女さながらだ。
「彼女の持ってるあの棒は何だい? バトンにしては長いし、ひょっとして物干し竿?」
一平が訊いてきた。
「あずみの特技はポールダンスなんだ」
僕は答えた。
「まあ、見てなって」
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