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第1章 あずみ
action 16 惨殺
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部活か。
僕は思った。
ここ桜華学園は、バスケの全国大会出場校だったはずだ。
そこまでの強豪校ともなれば、GW中に練習があっても不思議はない。
このゾンビたちは、GW初日、バスケの練習の最中に災厄に襲われたに違いなかった。
あずみが右に走った。
ゾンビたちを引きつけ、火線を僕から逸らすつもりなのだろう。
そして体育館の真ん中あたりで立ち止まると、くるりと身体を反転させ、今度は向かってくるゾンビたちめがけて走り出した。
あずみの採った戦法は、ある意味奇抜なものだった。
ゾンビの集団と接触する寸前、例のポールを棒高跳びの棒のように操って、だしぬけに真上に飛び上がったのだ。
ポールの助けを借りたとはいえ、驚くべきジャンプ力だった。
10メートルはあるだろう体育館の屋根すれすれまで跳躍すると、スカートをパラシュートみたいに開き、下半身をむき出しにしたまま、石つぶてよろしく膝をそろえて落下する。
真下にいたゾンビのひとりが、あずみのニードロップに脳天を砕かれ、一瞬にして絶命した。
着地ざま、ポールを再度床に突き立て、あずみが下半身を跳ね上げる。
ポールの周りで2本の脚が華麗に旋回し、更に数人のゾンビをなぎ倒した。
起き上がろうとする女子高生ゾンビの額に、間髪を入れず、エルボードロップ。
ぱっと大きく後方に跳び下がり、ポールを構えて槍で突くように突き出した。
柔らかい喉をポールが貫通し、後頭部から脳漿を吹き出しながら別のゾンビが崩れ落ちる。
そのまま勢いよく振り回したポールが更に2人の頭蓋を粉砕し、残ったゾンビはあと5人。
が、ゾンビには恐怖心というものが欠落しているらしい。
目の前でこれだけ仲間が瞬殺されても、まったく怯むことなくあずみに立ち向かっていく。
牙を剥いて向かってくるゾンビのひとりの口の中に、あずみがポールを突き刺した。
そこでポールからは手を離し、素手でファイティングポーズを取り直す。
左右からタイミングを合わせて飛びかかってきた2匹に、左と右の拳を固めたカウンターパンチが炸裂した。
正面からの一匹には、パンティ全開の盛大な前蹴りを決める。
残る一匹を仕留めたのは、そのまま振り下ろした踵落としだった。
開幕5分と経っていないに違いない。
まるでアクション映画のラストシーンを見るようだった。
ふと我に返ると、体育館の中は不気味なほど静まり返ってしまっていた。
聞こえてくるのは、規則正しいあずみの呼吸音だけである。
ゾンビの口からポールを抜き、こびりついた血を振り払うと、累々と横たわる屍を後にして、あずみがゆっくりと歩き始めた。
僕の目の前で足を止めると、顔面蒼白になっている僕を見つめて、ぽつりと言った。
「ごめんね…。お兄ちゃん、びっくりしちゃったよね」
そして目を伏せると、長い睫毛を震わせて、つぶやいた。
「お兄ちゃん…。ひょっとしてもう、あずみのこと、嫌いになっちゃった?」
僕は思った。
ここ桜華学園は、バスケの全国大会出場校だったはずだ。
そこまでの強豪校ともなれば、GW中に練習があっても不思議はない。
このゾンビたちは、GW初日、バスケの練習の最中に災厄に襲われたに違いなかった。
あずみが右に走った。
ゾンビたちを引きつけ、火線を僕から逸らすつもりなのだろう。
そして体育館の真ん中あたりで立ち止まると、くるりと身体を反転させ、今度は向かってくるゾンビたちめがけて走り出した。
あずみの採った戦法は、ある意味奇抜なものだった。
ゾンビの集団と接触する寸前、例のポールを棒高跳びの棒のように操って、だしぬけに真上に飛び上がったのだ。
ポールの助けを借りたとはいえ、驚くべきジャンプ力だった。
10メートルはあるだろう体育館の屋根すれすれまで跳躍すると、スカートをパラシュートみたいに開き、下半身をむき出しにしたまま、石つぶてよろしく膝をそろえて落下する。
真下にいたゾンビのひとりが、あずみのニードロップに脳天を砕かれ、一瞬にして絶命した。
着地ざま、ポールを再度床に突き立て、あずみが下半身を跳ね上げる。
ポールの周りで2本の脚が華麗に旋回し、更に数人のゾンビをなぎ倒した。
起き上がろうとする女子高生ゾンビの額に、間髪を入れず、エルボードロップ。
ぱっと大きく後方に跳び下がり、ポールを構えて槍で突くように突き出した。
柔らかい喉をポールが貫通し、後頭部から脳漿を吹き出しながら別のゾンビが崩れ落ちる。
そのまま勢いよく振り回したポールが更に2人の頭蓋を粉砕し、残ったゾンビはあと5人。
が、ゾンビには恐怖心というものが欠落しているらしい。
目の前でこれだけ仲間が瞬殺されても、まったく怯むことなくあずみに立ち向かっていく。
牙を剥いて向かってくるゾンビのひとりの口の中に、あずみがポールを突き刺した。
そこでポールからは手を離し、素手でファイティングポーズを取り直す。
左右からタイミングを合わせて飛びかかってきた2匹に、左と右の拳を固めたカウンターパンチが炸裂した。
正面からの一匹には、パンティ全開の盛大な前蹴りを決める。
残る一匹を仕留めたのは、そのまま振り下ろした踵落としだった。
開幕5分と経っていないに違いない。
まるでアクション映画のラストシーンを見るようだった。
ふと我に返ると、体育館の中は不気味なほど静まり返ってしまっていた。
聞こえてくるのは、規則正しいあずみの呼吸音だけである。
ゾンビの口からポールを抜き、こびりついた血を振り払うと、累々と横たわる屍を後にして、あずみがゆっくりと歩き始めた。
僕の目の前で足を止めると、顔面蒼白になっている僕を見つめて、ぽつりと言った。
「ごめんね…。お兄ちゃん、びっくりしちゃったよね」
そして目を伏せると、長い睫毛を震わせて、つぶやいた。
「お兄ちゃん…。ひょっとしてもう、あずみのこと、嫌いになっちゃった?」
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