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プロローグ

action 0  終わりの始まり

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 始まりは、オーロラだった。

 場所は、中部地方の太平洋側に位置する政令指定都市、那古野市。

 4月30日未明、都市の周辺部で一斉に夜空にはためく極彩色の光の幕が観測されたのだ。

 オーロラが消えると、そこに現れたのは不可視の”壁”だった。

 空気と電波のみを通す透明な壁。

 それが、ドーム状に那古野市を押し包んだのである。

 次に、爆発が起こった。

 市の東部にある国立大学の研究施設の一画が、謎の爆発で吹き飛んだのだ。

 そして、何かが漏れた。

 その”何か”は、瞬く間に人間に感染し、人々を血に飢えた野獣に変えた。

 人口200万の閉ざされた大都市が、真の地獄に変わるのに、長くはかからなかった。

 この物語は、そのリアル地獄に果敢に挑んだ、ひとりのヘタレの物語だ。

 そのヘタレとは、何を隠そうこの僕のこと。

 僕の正体は…。

 なんて、もったいつけるほどの者ではない。

 出雲明、20歳。

  彼女いない歴20年。

 知力も体力も常人に劣る、どこにでもいるようでなかなかいない、本物のヘタレ大学生である。

 僕はこの場を借りて、ここ2か月の間に起こったあの大異変の顛末と真相を記そうと思う。

 それはあまりにも常軌を逸していて、とても正気の沙汰とは思えない内容だ。

 だからこれをお読みの皆さんも、途中で「そんな馬鹿な」と思ったら、遠慮なく読むのをやめていただいて構わない。

 ただ、誰も読まなくなっても、僕はこの物語を最後まで書き続けるに違いない。

 僕の最愛の妹、あずみとの思い出を、心の中に永遠に刻み込むために。



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