上 下
166 / 246

#165 怪獣島へ①

しおりを挟む
 重苦しく垂れこめた雲の下、海面はうねるように逆巻き、船が島に近づいていることを示している。
 私は甲板に立っているのもやっとの状態で、さっき食べた赤エビ料理を今にも胃から戻しそうだった。
 ちなみに赤エビは、身がぷりぷりしていて、頬が落ちそうになるくらい美味しかった。
 あの港がこのエビ一筋に漁を続けている理由も、むべなるかな、である。
 ただし、よほど熟練の料理人が調理しないと、身に硫黄の匂いが残ってとても食べられないとのこと。
 ザビエルは親切にもそのレシピも教えてくれたけど、二度と食べる機会はないと思い、早々に忘れてしまった。
 それにしても寒い。
 私はむき出しの太腿をこすり合わせて身震いした。
 つくづくエロ魔導士というのは、寒冷な気候には不向きだと思う。
 ジョブの性格上、衣装はどうしても露出度の高さが優先されるので、寒風に肌がひりついてかなわない。
 はみ出ている分、すでに胸の谷間には凍傷が生じ、餅のように白かった乳房の上部が赤切れになってしまっている。
 早くビッチファッカーに乗らないと、おしっこをちびりそうだ。
 体内に結露が生じたかのように、あっというまに膀胱に尿がたまっていくのがわかった。
 それでも我慢して目を凝らしてみると、猛り立つ荒波の向こうに巨大な竜巻のようなものが見えてきた。
 海と空を貫く壮大な大気の柱。
 その周囲を真っ黒な雲が、まるで巨竜のようにらせんを描きながら上へ上へと昇っていく。
 見ているだけでめまいを起こしそうな、そんな圧迫感に満ちた光景である。
 あれが、行く手を阻む超ド級の低気圧に違いない。
 つまり、あの中に問題の島が隠れているというわけだ。
「どうするつもり? 今までの魔法では、あれに風穴を開けるのは無理だよね?」
 脇に立っているソフィアが、心配そうに言った。
「新しい魔法、覚えたって言ってたけど、それでなんとかなりそうなの?」
「たぶん」
 凍える二の腕を必死でさすりながら、私はうなずいた。
「やってみなきゃわかんないけど、今度のはけっこう強力だから。ビッチの増幅能力を借りれば、きっとなんとかなると思うよ」
 正直、自信なんてない。
 だいたい、ビッチを操縦するのもこれで二度目なのだ。
 しかも、一回目はろくに何もしないうちに戦いが終わってしまったから、はっきり言って動かしたことにもならないのだ。
 でも、やるしかなかった。
 島に上陸出来たらできたで、そこからはまた戦いの連続になるのだろうけれど、少なくとも、こんな寒いところで裸同然の格好で震えているよりずっといい。
「そうなんだ。じゃ、がんばってね。無茶しないで。気をつけて」
 冷え切った頬にソフィアの唇が触れたのを合図に、私は荒れ狂う海に向かってこぶしを突き上げた。
「ファック・ミー!」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...