上 下
23 / 246

#22 襲撃! オーク軍

しおりを挟む
「そんな…。オークは鳥目だから、夜は行動しないはず。そうだろ? 兄さん」

 酒ですでに顔を赤くしたカイルが言った。

「それが、変なんだ。オークども、みんな顔にゴーグルみたいなものを装着して、松明も焚かずに森の中をずんずん移動してるんだ。おそらくあれは…」

「赤外線暗視装置?」

 私は思わずラルクの言葉を引き取っていた。

「そんなものを持ってるなんて、オークってどんだけ文明人なんですか?」

「なんだ、おまえは?」

 いきなり横から口を出されて、ラルクが神経質そうに眉根を寄せた。

 彼は今戻ってきたばかりだから、私の自己紹介を聞いていないのだ。

「エロ魔導士の矢守翔子といいます。異界から召喚された冒険者です」

 ロケットおっぱいを突きつけて言うと、呆れたようなまなざしで、じっと睨み返してきた。

「エロ魔導士? 異界の冒険者? きさま、気は確かか?」

 能天気な弟と違い、この男、かなりの気難し屋と見た。

「うそじゃありません。なんならひとつやってみせましょうか」

 私は目を閉じ、両手を頭上に差し上げ、叫んだ。

「いでよ! エア・パイずり!」

「あふ」

 と、ほとんど同時にラルクの悲鳴が聞こえてきた。

「な、なんだこれは? この透明な風船みたいなものは?」

 見ると、ラルクの端正な顔が、目に見えない何かに両側から挟まれたみたいに変形してしまっている。

「は、放せ! なんだか知らんが、息ができん!」

 私は魔法を解いた。

「杖があれば、多少は火属性魔法なんかも使えるんですけど、今はエロ魔法一本なんです」

「まあ、いい。信じてやろう。しかし、よりによって、エロ魔導士とはな、そんなもの、本当に役に立つのか」

 顔は好みだけれど、返す返す、失礼な男である。

「兄者、そんなことを言っている場合ではありません」

 前に進み出たのは、若き日のジャン・ヌダルクそっくりのソフィアである。

「眼鏡橋を占拠されたら、オークは一気に村を襲うでしょう。ならば今すぐ迎撃にかからねば」

「ソフィアの言う通りじゃ」

 将軍が剣を手に立ちあがった。

「さあ、みんな、いくさの準備だ。おのおの得物を取り、すぐに裏門に集合せよ」

「おう!」

 カイルを先頭に、荒くれ男たちが一斉に雄たけびを上げた。

「さ、翔子、私たちも急ごう」

 ソフィアが私の腕に手をかけた。

「今こそエロ魔導士の力、みんなに見せつけてやるのよ」

「う、うん」

 うなずいたものの、いまいち自信がなかった。

 エア・パイずりだの、エア・フェラチオなどといった色物魔法が、本当にオークの軍団に効くのだろうか。

「それにしても、気になるわね」

 広間を出て、石柱の間を歩きながら、ソフィアがつぶやいた。

「どうしてあの原始的なオークが、その、赤外線なんとかってのを持ってるのかしら? あ、まさか」

「まさか、何なの?」

 ふいに立ち止まったソフィアに、私はたずねた。

「ううん、なんでもない」

 思い直したように首を振るソフィア。

「たぶん私の思い過ごし。それより、早く行きましょう」









しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...