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#22 襲撃! オーク軍
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「そんな…。オークは鳥目だから、夜は行動しないはず。そうだろ? 兄さん」
酒ですでに顔を赤くしたカイルが言った。
「それが、変なんだ。オークども、みんな顔にゴーグルみたいなものを装着して、松明も焚かずに森の中をずんずん移動してるんだ。おそらくあれは…」
「赤外線暗視装置?」
私は思わずラルクの言葉を引き取っていた。
「そんなものを持ってるなんて、オークってどんだけ文明人なんですか?」
「なんだ、おまえは?」
いきなり横から口を出されて、ラルクが神経質そうに眉根を寄せた。
彼は今戻ってきたばかりだから、私の自己紹介を聞いていないのだ。
「エロ魔導士の矢守翔子といいます。異界から召喚された冒険者です」
ロケットおっぱいを突きつけて言うと、呆れたようなまなざしで、じっと睨み返してきた。
「エロ魔導士? 異界の冒険者? きさま、気は確かか?」
能天気な弟と違い、この男、かなりの気難し屋と見た。
「うそじゃありません。なんならひとつやってみせましょうか」
私は目を閉じ、両手を頭上に差し上げ、叫んだ。
「いでよ! エア・パイずり!」
「あふ」
と、ほとんど同時にラルクの悲鳴が聞こえてきた。
「な、なんだこれは? この透明な風船みたいなものは?」
見ると、ラルクの端正な顔が、目に見えない何かに両側から挟まれたみたいに変形してしまっている。
「は、放せ! なんだか知らんが、息ができん!」
私は魔法を解いた。
「杖があれば、多少は火属性魔法なんかも使えるんですけど、今はエロ魔法一本なんです」
「まあ、いい。信じてやろう。しかし、よりによって、エロ魔導士とはな、そんなもの、本当に役に立つのか」
顔は好みだけれど、返す返す、失礼な男である。
「兄者、そんなことを言っている場合ではありません」
前に進み出たのは、若き日のジャン・ヌダルクそっくりのソフィアである。
「眼鏡橋を占拠されたら、オークは一気に村を襲うでしょう。ならば今すぐ迎撃にかからねば」
「ソフィアの言う通りじゃ」
将軍が剣を手に立ちあがった。
「さあ、みんな、いくさの準備だ。おのおの得物を取り、すぐに裏門に集合せよ」
「おう!」
カイルを先頭に、荒くれ男たちが一斉に雄たけびを上げた。
「さ、翔子、私たちも急ごう」
ソフィアが私の腕に手をかけた。
「今こそエロ魔導士の力、みんなに見せつけてやるのよ」
「う、うん」
うなずいたものの、いまいち自信がなかった。
エア・パイずりだの、エア・フェラチオなどといった色物魔法が、本当にオークの軍団に効くのだろうか。
「それにしても、気になるわね」
広間を出て、石柱の間を歩きながら、ソフィアがつぶやいた。
「どうしてあの原始的なオークが、その、赤外線なんとかってのを持ってるのかしら? あ、まさか」
「まさか、何なの?」
ふいに立ち止まったソフィアに、私はたずねた。
「ううん、なんでもない」
思い直したように首を振るソフィア。
「たぶん私の思い過ごし。それより、早く行きましょう」
酒ですでに顔を赤くしたカイルが言った。
「それが、変なんだ。オークども、みんな顔にゴーグルみたいなものを装着して、松明も焚かずに森の中をずんずん移動してるんだ。おそらくあれは…」
「赤外線暗視装置?」
私は思わずラルクの言葉を引き取っていた。
「そんなものを持ってるなんて、オークってどんだけ文明人なんですか?」
「なんだ、おまえは?」
いきなり横から口を出されて、ラルクが神経質そうに眉根を寄せた。
彼は今戻ってきたばかりだから、私の自己紹介を聞いていないのだ。
「エロ魔導士の矢守翔子といいます。異界から召喚された冒険者です」
ロケットおっぱいを突きつけて言うと、呆れたようなまなざしで、じっと睨み返してきた。
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能天気な弟と違い、この男、かなりの気難し屋と見た。
「うそじゃありません。なんならひとつやってみせましょうか」
私は目を閉じ、両手を頭上に差し上げ、叫んだ。
「いでよ! エア・パイずり!」
「あふ」
と、ほとんど同時にラルクの悲鳴が聞こえてきた。
「な、なんだこれは? この透明な風船みたいなものは?」
見ると、ラルクの端正な顔が、目に見えない何かに両側から挟まれたみたいに変形してしまっている。
「は、放せ! なんだか知らんが、息ができん!」
私は魔法を解いた。
「杖があれば、多少は火属性魔法なんかも使えるんですけど、今はエロ魔法一本なんです」
「まあ、いい。信じてやろう。しかし、よりによって、エロ魔導士とはな、そんなもの、本当に役に立つのか」
顔は好みだけれど、返す返す、失礼な男である。
「兄者、そんなことを言っている場合ではありません」
前に進み出たのは、若き日のジャン・ヌダルクそっくりのソフィアである。
「眼鏡橋を占拠されたら、オークは一気に村を襲うでしょう。ならば今すぐ迎撃にかからねば」
「ソフィアの言う通りじゃ」
将軍が剣を手に立ちあがった。
「さあ、みんな、いくさの準備だ。おのおの得物を取り、すぐに裏門に集合せよ」
「おう!」
カイルを先頭に、荒くれ男たちが一斉に雄たけびを上げた。
「さ、翔子、私たちも急ごう」
ソフィアが私の腕に手をかけた。
「今こそエロ魔導士の力、みんなに見せつけてやるのよ」
「う、うん」
うなずいたものの、いまいち自信がなかった。
エア・パイずりだの、エア・フェラチオなどといった色物魔法が、本当にオークの軍団に効くのだろうか。
「それにしても、気になるわね」
広間を出て、石柱の間を歩きながら、ソフィアがつぶやいた。
「どうしてあの原始的なオークが、その、赤外線なんとかってのを持ってるのかしら? あ、まさか」
「まさか、何なの?」
ふいに立ち止まったソフィアに、私はたずねた。
「ううん、なんでもない」
思い直したように首を振るソフィア。
「たぶん私の思い過ごし。それより、早く行きましょう」
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