絶対絶命女子!

戸影絵麻

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#28

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 翔ちゃんがはずしたのは、ガソリンタンクの給油口の蓋だった。
「たっぷり入ってる。いい感じ」
 鼻を近づけて、そう言った。
「どうするの?」
 おずおずとたずねると、
「ターボライターと線香花火、持ってたよね?」
「うん」
 私はリュックの中をまさぐった。
「線香花火を何本かつないで、導火線にする」
 私から受け取った線香花火を、翔ちゃんが器用に結んでいく。
「そして、ここから中のガソリンに浸しておいて、先を外に垂らしておく」
「翔子、早くしろ! 残りのゾンビがすぐそこまで来てるって!」
 切羽詰まった由羅の声に振り向くと、6体のゾンビが何やらわめきながら、足を引きずって迫ってくる。
「準備完了! ツリー、ツー、ワン、ファイア!」
 柄の長いターボライターで即席導火線の端に点火するなり、私の手を引いて翔ちゃんが走った。
 ガアアアッ!
 ゾンビの中で一番足が速そうなのが、私たちの走るほうへと向きを変えた。
「父さんも、バイト君も、走って!」
 森へと全力疾走しながら、尚も叫び続ける翔ちゃん。
 振り向いて確かめてる余裕はないけれど、今頃後ろは古墳から這い出てきた新手のゾンビたちでいっぱいだろう。
 私の左腕に、ゾンビの手がかかった。
「いやっ!」 
 本能的に、そう悲鳴を上げた、その瞬間だった。
 おなかの底に響くような爆音がして、だしぬけにすさまじい熱風が大地を薙いだ。
 吸い寄せられるように音のほうを見ると、あの警察のワゴン車から真っ赤な炎の柱が立ち上がっていた。
 ゾンビたちは皆、凍りついたように立ち止まってその火柱を見上げている。
「止まらないで! 本格的な爆発は、まだこれからよ!」
 翔ちゃんがもう一度、そう叫んだ時。
 車体がぐわっと膨らみ、派手な音とともに、ボンネットが宙を舞った。


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